コロナ禍でゲーム業界の売り上げはどう変わったか

Gayaline

 今回は、久しぶりにゲーム業界の売り上げの統計を見ていきたいと思います。コロナの感染拡大以降の情報もそこそこ見れるようになってきたので、2018年~2021年頃の統計を集めてみました。
 果たしてコロナ禍で日本のゲーム業界はどう変わったか、その一端が知れるのではないかと思います。


 当サイトではかねてから、ゲーム業界の売り上げ統計のデータを収集している。ゲーム業界の基礎統計データのページには集められるだけの情報を収録し、コンシューマ、アーケード、スマホゲームの状況はもちろんのこと、ゲーム関連書籍や雑誌についても調べている。
 こうしたデータを用いて、ゲーム業界の現状はどうなっているかを作ったのが2019年。そこから3年が経過した現在の状況の把握を試みたい。
 今回参照したのは『CESAゲーム白書』の2022年号までの情報である。こうした白書でどのような情報がわかるかについては、ゲーム統計資料ガイドを参照してほしい。

ジャンル別の市場規模

 では早速、最も気になるであろう売り上げについて見てみよう。CESAゲーム白書のジャンル別国内市場規模のデータは次のようになる。

単位:億円 家庭用ハード 家庭用ソフト モバイル PC
2015 1353 1949 9453 798
2016 1267 1880 11690 696
2017 1924 1942 13192 577
2018 1710 1796 13126 546
2019 1673 1657 13431 463
2020 1854 1905 12113 434
2021 2028 1691 13060 403

 表のモバイルはスマートフォンゲーム、PCはPCのオンラインゲームの売り上げを指している。これをわかりやすくするために、グラフにしてみよう。

 積み上げにしてみたが、やはりモバイルが他の10倍に迫る勢いであり、他の変化が読み取りづらい。次に家庭用ゲームのみを取り出してみよう。

 これらから読み取れることは何だろうか。何よりも、スマホゲームの強さは依然として圧倒的である。スマホゲームは2010年頃から伸び始め、2013年には家庭用を抜き、その後もまだまだ伸びていた。ただしここ数年で、ついに頭打ちになった感がある。2020年には売り上げが減少しているし、2021年も19年に及ばない。2018年辺りから、真の「飽和状態」になったといえる。それでも国内家庭用ゲームの3~4倍の市場規模を保っている。

 ではその家庭用ゲーム機についてはどうだろうか。近年のゲーム業界の出来事としては、コロナの「巣ごもり需要」にマッチする形でのNintendo Switchの大ヒットというのが記憶にあるだろう。実際、Switchは発売から4年で国内2500万台、全世界1億台以上の売り上げとなり、2020年の「あつまれ どうぶつの森」は国内1000万本、全世界4000万本弱が売れ、日本で一番売れたゲームソフトとなった。その他にも2020年末発売の「桃太郎電鉄~昭和 平成 令和も定番!~」も国内350万本と大ヒットを飛ばしている。

 このようなものすごい家庭用ゲーム人気の印象に対して、統計データ的には、あまり変化が感じられない。2020年のソフトの1905億円というのは2017年以下だし、それは2006年の半分程度にすぎない。おまけに2021年ではその勢いは止まってしまっており、計測開始以来ほぼ最低額となっている。

 印象と実際の数値がここまで違うのはなぜなのか?考えられる答えとしては、家庭用ゲーム市場の2大勢力のうち、人気なのはあくまで任天堂のゲームだけで、ソニーの方が足を引っ張っているということだろう。ということで、あまり気が進まないが、ハード別の売り上げも調べる必要が生じてきた。

ハード別のソフト売り上げ

 同じくCESAゲーム白書から、ハード別の国内ソフト売り上げを調べたものが以下の表である。

単位:万本 Switch WiiU 3DS PS5 PS4 PS3 Vita
2016 0 231 1533 0 871 159 483
2017 772 68 1263 0 1006 0 196
2018 1362 4.8 273 0 1088 0 98.8
2019 1604 0 79.1 0 898 0 25.6
2020 2306 0 19.5 12.5 753 0 5.8
2021 2299 0 8.3 77 351 0 0.3

 こちらも積み上げグラフにしてみよう。

 結果は予想通りというところである。Switchは確かに大幅に伸びているが、ソニー側のPS4がこの時期にじわじわと減少、そしてPS5がまったくソフトが売れていないために、全体の売り上げとしては2017年を越せない、ということになっている。

 これをさらにわかりやすくしたのが次のグラフである。それぞれのハードの売り上げをプラットフォーマーごとに足し合わせ、両者の比率も出してみた。

 2016年以来ソニー側の売り上げがどんどん落ちており、2021年に至っては売れたソフトの84%が任天堂のものである

 ただし任天堂側も、Switchの売り上げがそこまで圧倒的ではないことがわかる。何より以前は据え置き・携帯ハードの2正面体制だったのであり、携帯型が消えた分をどうにかSwitchのみでなんとかしているような状況である。

 では、どんどん減っているソニー側のユーザーはどこへ行ったのだろうか。答えの一つはスマホゲームだが、もう一つはPCだろう。近年Steamが重要なプラットフォームになっていることは間違いない。

 その点を調べたいが、従来のゲーム統計はオンラインゲームの売り上げのみを測定しており、Steamの売り上げについてはわからない。こちらに2022年の市場規模の調査結果があり、それによると日本は440億円とのことである。

 先ほどのシェアから考えると、2016年のソニー側のソフト売り上げは865億円ほどとなり、2021年は270億円だ。確かに減った分がまるごとSteamに行っているといえる数字だが、この点をはっきりさせるには、過去のSteamの売り上げも見てみないとわからない。今後そうした統計が入手できるようになるとありがたいのだが。

まとめ

 コロナ禍を経験した2018~2021年の国内ゲーム業界の売り上げはどう変わったかについて、今回わかったことをまとめてみよう。

  • 家庭用ゲーム機全体としては少し持ち直した程度で、依然として過去最低レベルの市場規模であることに代わりはない。
  • 任天堂側は、3DSがなくなった分をSwitchでどうにか取り返したといったところ。
  • ソニー側は、携帯機もなくなり、据え置きハードのソフト売り上げも半減以上の減少となっている。
  • スマートフォンゲームは依然として家庭用ゲーム機を圧倒する規模だが、そろそろ天井が見えてきた。
  • 据え置きハードのユーザーがある程度Steamに流れていると思われる。

 というところである。相変わらず過去に比べて厳しい現状だが、Nintendo Switchダウンロードソフトおすすめ作品一覧で紹介しているように、それでも面白いソフトは山のようにある。そのような環境が今後失われないことを願っている。

 

コメント

「名前」をクリックし「ゲストとして投稿する」にチェックすると登録せずにコメントができます。