インディーゲーム戦国時代に頼れるゲーム会社はどこか
PCにもNintendo Switchなどコンシューマにも多数の小規模制作のゲームが発売され、話題作も多く登場している昨今。そうしたインディーゲームを遊ぶことを楽しみにしている人も多いかと思います。
ここでは、Switchでたくさんのインディーゲームを見てきた経験を生かして、インディーゲーム戦国時代な今、面白いゲームを探すにはどうしたらよいのかについて、いくつかのゲーム会社に着目しながら案内を行いたいと思います。
デベロッパーとパブリッシャーについて
ある程度ゲーム業界を詳しく見ている人なら、「ゲーム会社」と言った時のデベロッパーとパブリッシャーの違いは理解しているだろう。そして、どこが何を作った、ということを考える際は、デベロッパーの方を見るべきだというのもわかっているだろう。
たとえば旧エニックスというのは基本的にはパブリッシャーであって、同じエニックスのソフトでも、デベロッパーがどこかによってまったく内容が違う。ドラクエはチュンソフトなどだし、アクトレイザーはクインテットだし、ミスティックアークはプロデュースだ。同じくタイトーの作品の中でもエストポリス、カオスシード、エナジーブレイカーはネバーランドカンパニーが作っているという共通点がある。
こういう風に、ゲームを出している会社と作っている会社が異なることがある。ただパブリッシャーが内容に一切関与しないというわけではなく、FEなどは任天堂のプロデューサーがインテリジェントシステムズ側と入念なやり取りを行っていたことがわかっている。
現在でも当然そうした区別は存在していて、Steamなどは両者が区別されて書いてあるのでわかりやすい。ただし、Steamに多数あるようなインディーゲームの界隈では、従来のデベロッパー目線だと少々追いきれないところが生じてくるのではないかと思うのである。そのことについて次に説明しよう。
インディーゲームの特殊な事情
前回も少し触れたが、インディーゲームというのはほとんどが小規模なチームまたは個人によって作られているもので、中にはアンダーテールのように制作者がプログラム、グラフィック、サウンドとあらゆる部分を担当しているものもある。
こちらにまとめたように、そうしたインディーゲームから多数の傑作が生みだされているわけだが、そのような傑作を遊んだ後は、同じようなクオリティの作品をプレイしたいと期待したくなるものだろう。
ところが、ここで事情は以前のゲーム業界と変わってくる。かつては、待っていればドラクエ1の後には2が、2の後には3が次々と発売されたし、一時期のスクウェアなどはとんでもないペースで名作を量産していたが、インディーゲームの場合は、制作が小規模なゆえに開発にとても時間がかかり、なかなか次が出ないのである。そのことは、アンダーテールの次であるデルタルーンや、ホロウナイトに続くはずのシルクソングの開発状況を考えればわかるだろう。
なのでユーザー目線としては、1メーカーの続編を待っていたらとても時間がかかってしまい、その間に遊べるものが欲しくなる。そこで、安定したクオリティが期待でき、かつある程度のペースで新作を遊ぶためには、何に注目したらいいか。この点について考えるのが今回の目的である。
パブリッシャーの重要性
その疑問に対する答えとして、インディーゲームにおいてはパブリッシャーに再度注目するのがよいのではないかと言いたい。
現在、PCやコンシューマには多くのパブリッシャーが関与しており、そうした企業のおかげでわれわれの手元にゲームが届いているわけだが、その活動は以前のようなゲーム開発にまで関わるものというよりは、映画の配給のような感じで、発売したいゲームを発見して、翻訳や各ハードへの対応を行ってユーザーに届けるということがメインになっているのではないかと思われる。
そうした中、もし「目利き」のパブリッシャーがいて、常に面白いゲームを提供してくれるのであれば、発売ペースとクオリティの両立という先ほどの要件が満たせるだろう。
となれば問題は、そうした目利きのパブリッシャーは存在するのかということになる。以下では、これまでのゲームレビューの蓄積から、信頼できそうなメーカーをピックアップしてみたい。
インディーゲーム戦国時代に頼れるパブリッシャーはこれだ!
DANGEN Entertainment
現在一番注目しているのが、海外出身のスタッフが集まった日本のパブリッシャー、DANGEN Entertainmentである。こちらにインタビューもあるが、少数精鋭のチームでインディーゲームを発掘してパブリッシングしている。
その実績は確かで、CrossCode、バットバリアン、Bug Fablesという近年まれに見る作品を次々とリリースしている。あの加賀昭三氏が作ったヴェスタリアサーガの製品版の販売なども行っており、そのチョイスに間違いはないと期待していいだろう。
またローカライズもとても丁寧で、バグが目立つこともない。今メーカー買いしてよいゲーム会社の筆頭といえる。
Pikii
新潟が拠点のパブリッシャー。発売数はそこまで多くないものの、洞窟物語、The Binding of Isaac、Jump King、ダングリードといった超一級のゲームばかりを出しているすごいところである。
近年とうとうThe Binding of Isaacの最新版がこのメーカーからコンシューマ移植されることになり、非常に楽しみにしている。
PLAYISM
日本のインディーゲームを多めに出しているパブリッシャー。片道勇者、Ib、ラ・ムラーナ、ゆめにっきなど有名作品の発売や、VA-11 Hall-A、ドキドキ文芸部、DEEEER Simulatorなどいろいろと話題となった作品のコンシューマ移植も手がけている。
Goblinz Studio
フランスのゲーム会社で、ゲーム制作も行っているが、近年ではパブリッシャー業も多くなっている。渋い戦略シミュレーションに注力しているのが特徴で、Legend of KeepersやBanners of Ruin、Defend the Rookなど、一手一手考えながら行動していくゲームが好きな人におすすめのメーカー。
フライハイワークス
わりと規模の大きい方な日本のパブリッシャーで、3DS時代から魔人少女、フェアルーン、アルケミックダンジョンズなどいい感じのソフトを多数提供していた。Switch時代にも引き続きゲームを出しており、フェノトピアなどは特に掘り出し物である。
レイニーフロッグ
同じく日本のパブリッシャーで、かなりのペースで新作をリリースしている。遊んだ中ではアリエッタ・オブ・スピリッツ、マナスパーク、ゼノンヴァルキリーといった感じで、全体的にそこそこな作品が多いだろうか。
ケムコ
かつてFC・SFC時代にはシャドウゲイト、ボンバザル、ドラッケン、ファーストサムライとヤバいゲームの輸入で知られていたこのメーカーは、現在でもコンシューマに作品を出し続けている。
携帯アプリ時代からいくつかのデベロッパーと組んで古典的なコマンド式RPGの量産を始め、3DS、スマートフォン、SwitchおよびPCにおいて信じられない数の作品を提供している。もはや世界のRPGの最大手である。
今回は、インディーゲームを探す際の目印として、パブリッシャーに注目することを提案したうえで、現在期待できるパブリッシャーを挙げてみた。大企業の陰に隠れて目立たない存在であるこうしたメーカーだが、多くの作品を日本語でプレイできるのはこうしたパブリッシャーのおかげであり、とりわけ日本のゲーム業界の発展を担っている重要な存在だと言いたい。
今後もこうしたメーカーには面白いゲームを紹介してくれることを期待しているし、そうした活動は大いに応援している。