【マリオRPG特集】本作のBGMについて語りたい
これまで4回にわたり、スーパーマリオRPGのリメイク記念で当時の情報を掲載するということをやってきました。前回で一応終わりと言いましたが、もうちょっと言い足りないことがあるので延長させてもらいましょう。
今度は、本作の雰囲気を彩るのに大いに貢献しているBGMについて見てみたいと思います。
作曲者について
本作のBGMを作曲した下村陽子氏は、一言で言うとゲーム音楽界のレジェンドである。カプコン時代のスト2などの作曲を経てスクウェアに移り、ライブアライブやフロントミッション(松枝氏との共作)を作曲した直後の作品が本作となっている。
その後も聖剣伝説LOM、パラサイト・イヴなどを手がけた後に独立、キングダムハーツシリーズやマリオ&ルイージRPGシリーズを中心に多数のゲームに関わっており、作曲数としては他の著名な作曲家をはるかにしのいでいる。
その作風に関しても変幻自在で、マリルイRPGのようにコミカルなもの、パラサイト・イヴのように無機質なものもあるし、聖剣LOMでプロレス風に挑戦したり、LALやKHでの世界ごとに全く雰囲気の違うバリエーションを見せたりと、固定されたイメージに縛られることがない。SFC時代はブラスセクションの扱いを得意としていたが(LALのKnock You Down!とかフロントミッション全般で使われているやつ)、それも後には見られなくなっている。
以下ではそんなレジェンドである下村氏が作曲した本作の楽曲について、ストーリー各場面を振り返りつついくつかピックアップして語っていきたい。
楽しい冒険 愉快な冒険
この曲は案外見落とされがちだが、電源を入れてお花畑の場面が終わった後に流れる、ゲーム内容の紹介デモの曲である。
ゲームショップ店頭で流すことを想定しているのか、フィールドや戦闘場面を挟みながらストーリーを追っていく、かなり豪華なものとなっている。ユミンパの代わりにカメザードと戦っているなど本編とちょっと違うシーンもあり、マロが「MALLOW」でジーノが「GENO」だとか、キャラのアルファベット表記もわかったりするので必見。
曲は結構長く、2ループしてバーレル火山まで見せたところでクッパ城が映り、そこからタイトル画面に移行するのも凝った演出である。
対クッパ戦
1度しか聴けないこの曲は、スーパーマリオブラザーズ3のラスボス、クッパ戦の曲をアレンジしたものとなっている。これを発見した時は結構マニアックなところから取っていると驚きだった。冒頭のデン!デンデン!がかっこいい。
ちなみにこのメロディは「クッパ城(其ノ二) 」でも使われている。クッパのテーマということなのかもしれないし、それをマリオ3のあの場面から取ってきているというのはよく調べてるなあと思う。
Super Pipe House
おなじみマリオの地上BGMのアレンジ。原曲そのままと思いきや、結構スイングが入っておりリズムが揺れている。冒頭の「お花畑にて」もこの曲のメロディが聴ける。
勝利!!
数ある戦闘勝利曲(最近は少なくなった)の中でもとびきり印象に残る曲。なぜ印象に残るかというと、単に獲得経験値とコインを出して終わりではなく、ミニゲームやレベルアップ画面もあるからだろう。レベルアップで成長方針が選べるというのは、聖剣伝説にあったシステムを応用したのかもしれないが、その後も系列作で受け継がれる定番要素となった。キャラが土管から順番に出てくるビジュアルが楽しい。
ブーマー戦後のシャンデリホーだけになったところに流れるのも記憶に残る。
Hello, Happy Kingdom
この曲はキノコ王国のメインテーマとして、繰り返し使われているので注目してみよう。後半で曲調が変わるところもいい感じ。雰囲気は何となくFF5の「王家の宮殿」に似ている。
まだまだ道中は危険がいっぱい
わりとアクティブな方の道中曲。やっぱりチャイコフスキーのくるみ割り人形「トレパーク」に似てるよなあ。
武器たちがやってきた!
本作の敵役であるカジオー軍団のメインテーマである。メインメロディは武器のモチーフとして、「対武器ボス戦」「対カジオー戦」「対変身好きのカジオー戦」などに使用されている。
直前のDQ6ですぎやま氏がやっていた「悪のモチーフ」の手法をこともなげに導入しているのが驚き。
ねぇねぇジーノごっこしようよ
1回しか聴けない贅沢な曲。メイン部分はスーパーマリオワールドの地上BGMアレンジとなっており、マリオシリーズをまんべんなく参照していることがよくわかる。いいアレンジなので一度じっくり聴いてみよう。ちなみに同じメロディは敵の技の「スイートソング」でも使われている。
冒頭の部分がエンディングの最後の最後で流れるのもいい。この部分はジーノのモチーフなのではないだろうか。
森のキノコにご用心
動画サイトで人気となりアレンジが多数作られた曲。実際に哀愁のただようメロディと、後半の下属調への転調が印象に残る名曲である。
土管からコンニチハ
こちらも定番のスーパーマリオブラザーズ地下BGMのアレンジ。冒頭のメロディをオクターブ違いで追いかけるスタイルは最近の映画版マリオで同じことをやっていたが、この曲が元かもしれない。
ここはブッキータワーでございます
ブッキーのキャラクターからするといやに神妙な雰囲気のタワー下層部の曲。結局ブッキーとは何だったのだろうか。改めて見ると言動が独特すぎて浮いている。
坂道
シンプルな構造だが、実は転調が非常に凝っている曲。変ト長調から始まり、ループするごとに変イ→ハ→ニと2つ上の調(音階としては全音ずつ上がる)に移調していって、どんどん盛り上がっていく感じを受ける。テンポも上がっている気がするが、音の上昇とパーカッションの変化でそう思えるだけである。調性のマジックといったところ。
お買い物ならリップルタウンへどうぞ
ローズタウンの曲とこの曲はどちらも楽しげで、本作の明るい雰囲気を作り出すのに一役買っている。ボスを倒すと「武器たちがやってきた!」が解消されてこの曲になるのが解放感があっていいよね。
僕らの楽園~モンスタウン~
そもそも町ごとに別の曲があるのがとても贅沢だが、この曲も結構長くて地味に名曲である。ハ長調からホ→ハ→ロ長調に移調してハに戻るというなかなかテクニカルなことをしている。
モンスタウンにイベントが詰め込まれているのもあって記憶にたっぷりと残るだろう。
対クリスタラー戦
FF4のバトル2のアレンジというかほぼそのまま。こういう使い方は後にも先にもなかなかないもので、最初に聴いた時のインパクトはすさまじいし、戦闘、勝利、会話と3曲もFF関係があるのは凝りすぎ。
このクリスタラーこそが任天堂とスクウェアの(その後破綻した)協力体制の象徴であり、スクウェアといえばクリスタルだと思われていた時代の申し子でもある。
貴方と作るキノコフスキー名曲の時間
ソラミレドレドレ ミドソドレラシド ラシドレソドレミである。もはや暗記しているが、最後のやつは聴き取りが難しかったので最初は総当たりした(正解だとオタマが残るのでわかる)。
マルガリ・マルガリータ
じっくり聴くと味わいのある曲。バロック音楽というかバッハを模したハープシコード2声構成で、そのままピアノでも弾けるような内容となっている。若干笑い声がうるさいけど。
ドドが来たっ!!
ドドの銅像つつきミニゲームの曲。音楽と場面を完全に一致させるという非常に丁寧なつくりとなっており、銅像をつつく音も曲に組み込まれている。曲を覚えていればどこでジャンプするかは目をつぶっていてもわかる。
武器工場
地味ながら実に味わいのある曲。前代未聞の8分の13拍子という変拍子となっているので、一度聴きながら数えてみよう。7+6で数えられるはずだ。
カジオーのイメージに合ったハンマーの音がリズミカルに響いており、今までとは一風変わった無機質な感じが、スクウェアお得意の異世界に来たということを実感させる。
対変身好きのカジオー戦
こちらも無機質な雰囲気のラストバトル曲。若干オディオ戦(前半)っぽくもある。ベースの一定のリズムと跳躍の多いメロディが特徴で、最後には武器のモチーフも姿を現す。イン・ザ・ファイナルみたいな曲と比べると派手さはないが、ラスボス曲はこうでなきゃという要素が詰め込まれている。
楽しいパレード愉快なパレード~そしてパレードは行ってしまった…
あらゆるゲームに存在するエンディング曲の中でも、およそ最高の一曲であり、エンディング自体も最高のエンディングである。
以後のマリオストーリーやマリオ&ルイージRPGにも踏襲される作中BGMメドレーのパレード曲となっており、キャラクターも勢ぞろいする実に楽しい場面となっている。見た目や曲調は明らかにディズニーのアレを意識している(あとお城の造形もかなり・・・)。
構成としてはメインメロディから始まり、キノコ王国のテーマ、モンスタウンのテーマ、武器のテーマ、キノコ王国のテーマときて夜になる演出が入り、再度キノコ王国のテーマが流れる。そしてスターロードの曲「星の窓からみる夢は」が帰ってきて締めくくりである。
パレードの方もあらゆるキャラが登場するが、ここでカジオー軍団が出てくる意味はすごく大きいと思う。後作のストーリーから地続きのエンディング(たとえばペーパーマリオMIX)と異なり、敵側もパレードに参加しているという異質さ。以前述べたように、カジオー軍団はマリオ世界にはいない「絶対悪」として登場したわけであるが、ここでパレードに参加したことで、「みんながなかよし」のマリオ世界の一員となったとも読み取れる。なんかで再登場したら嬉しいなあ。
お・し・ま・い!
そしておまけのこの曲である。ちなみに本作でこのマリオのテーマは、ファイル選択画面、マリオの家、ブッキータワーの変身イベントとこれ以外で、もう一箇所使われているところがあるのだがわかるだろうか。わかればあなたもマリオRPG通である。
今回はマリオRPGの音楽について、各場面の振り返りやいろいろなネタを挟みつつ解説してみた。
本作のBGMは各キャラや場面にテーマやモチーフを取り入れて一貫性が出されているし、各シーンとぴったり一致しているところがあるなど実に丁寧に作られており、本作の魅力を何倍にも増している。
マリオRPGをプレイする際には、その音楽にもじっくり耳を傾けてもらいたい。