【マリオRPG特集】当時の雑誌のマリオ世界観の理解がすごい

Gayaline

マリオRPGのリメイク記念に当時の情報を掲載するコーナー第三弾。前回は、ゲーム雑誌に載っていた開発中の画面写真を紹介しました。
 ここではまた別の観点から、当時の資料を見てみることにしましょう。今回紹介するのは、マリオRPGのゲーム内容の予想に関する記事です。


 マリオRPGに関する雑誌資料はまだまだある。今回は、ファミリーコンピュータMagazine(ファミマガ)に載っていた、ゲーム内容の予想記事について見てみよう。

マリオの世界観の考察

 発売前の予想で、最も面白かったのがこの記事である。マリオRPGの制作が公表されて早々にファミマガ編集部が内容について予想したものだ。

ファミリーコンピュータMagazine 1995年 No.17付録 p.7
過去のマリオシリーズから、マリオの世界とはどのようなものかを推測しているのだが、その理解力がすごい。たとえば、

正義の味方だけに町中でくらしているとも考えにくい。俗世間から離れて、静かなところで暮らしているのではなかろうか。

というのはマリオRPGでは完璧に予想通りだし、他作品でもマリオの家はキノコ王国から離れていたりする。次にピーチ姫に関する部分を見てみよう。クッパがピーチをさらうのは彼女が好きだからで、何回マリオに取り返されてもこりずに狙うとあって、さらに

何回マリオと対決してもピーチ姫への純愛を貫きとおすし、けっこう芯の通ったいい男だね!?

というのも解釈一致というやつだろう。最近の映画版でもまさにそんな感じの描かれ方をしていた。
 「マリオに友だちっているのかなあ?」という疑問は結構意外かもしれないが、これは本作の発売時期を考慮する必要がある。この時点ではマリオパーティーもマリオゴルフもスマブラもなく、彼の冒険は基本的に単独か2人旅であったし、マリオキャラクターが一堂に会したのはここにあるようにマリオカートくらいなものだった。実際、本作でも元来の仲間キャラクターはピーチとクッパだけである。
 続いてクッパの話。

ピーチ姫の問題さえ解決すれば、クッパとマリオは仲がよかったかもしれないのだ。

というのも、バッチリ予想通りであった。以後もファミマガはクッパ加入を匂わせる発言をしており、ここは完璧に読んでいたといえる。読めなかったのはピーチ参戦のほうだ。
 それに関して、特に注目してほしいのが左下の部分である。

ポイントとなるのは2つ。「マリオ世界ではみんながなかよし」ということ、「クッパも本当はそんなに悪いヤツじゃなさそう」というところだ。

ここについては、すごい理解力だと感動するばかりである。マリオの世界とは、まさにそういうものなのだろう。それをパーティー系作品が出る前に、ここまで読み取ったのは素晴らしい。
 ついでに、マリオRPG本編で密かに重要だと思っているセリフが1つあるので紹介したい。ドゥカティでクッパと話すカメザードのセリフである。

われわれ カメ一族は、いままで、マリオしか あいてにしたことがないので‥‥‥。

これはつまり、クッパ軍団はマリオ以外には暴力は振るわないということであって、上記の「なかよし」説を補強するものである。逆に、他国を侵略していた映画版のクッパは解釈違いということになる。
 この発言に関しては、確かに今までのゲーム内の描写だけを見ているとそうではあるのだが、それにしてもスクウェア側も、ファミマガに沿う形でマリオの世界を理解していたということである。

ストーリー展開の予想

 ファミマガの予想が面白いのは、マリオ世界以上にスクウェアのRPGの作り方も熟知していることで、先ほどの部分には「裏世界があるとか、魔王が仲間になるとか、そういったどんでん返し」と言っているが、どちらも的中している。魔王が仲間になるというのは直近のクロノトリガーの話だろう。また別のページにはこんな予想もある。

ファミリーコンピュータMagazine 1995年 No.17付録 p.9

つまりマリオ世界では「みんながなかよし」なので、RPG的なストーリーのためには、マリオ世界に存在しない絶対悪を登場させる必要があるという予想だが、こちらについても気味が悪いほどに予想通りである。
 マリオストーリーのようにクッパが絶対悪のケースもあるが、マリオ&ルイージRPGシリーズ(MIX除く)では同様に外部からの侵略者を登場させているので、必須ではないにせよ妥当なシナリオの組み立て方だということである。
 ここからわかるのは、マリオRPGの内容は、マリオシリーズの世界観にとって決定的な影響をもたらしたかもしれないということである。クッパと共闘するのも、外部の悪が登場するのも、「みんながなかよし」が確立するのも本作が初めてであり、以後のさまざまな展開をもたらすきっかけになったのではないだろうか。

当たらなかった予想

 もちろん、ファミマガの予想すべてが当たったわけではない。大いに外れたのがルイージの扱いだろう。先ほどのページに加え、たとえばこんな記述がある。

ファミリーコンピュータMagazine 1995年 No.17付録 p.9

ここで「今回の設定」と言っているのが何なのかよくわからないが、スクウェアへのインタビューの箇所なので同社のスタッフがそう言ったのかもしれない。
 こうした予想にもかかわらず、彼の出番はルイージ疑惑のある願い事と、エンディングのみだった。(あとクッパ城のクイズで「今回のぼうけんの敵は?」に「ルイージ」って選択肢があるのは何なんだ)
 それでも、この路線が完全に的外れではないのは、後にルイージマンションという作品が作られたことからもわかるだろう。というか、当時のファンでもルイージの動向が気になっている人は一定数いたと思われる。詳しくは次回のユーザーの声で紹介したい。


 今回は、ファミマガの記事の中から、マリオの世界観について考察したものを紹介してみた。こういう内容は結構珍しいタイプといえるが、その考察の正確さや、予想の一致度は驚くばかりである。
 次回は、マリオRPG発売後のファンの反応や、さまざまな要素の発見について見ていきたいと思う。それで特集は最後になる予定。 

コメント

「名前」をクリックし「ゲストとして投稿する」にチェックすると登録せずにコメントができます。