ゲーム思い出語り ~PCのフリーゲーム~

Gayaline

 今回も失われがちなゲーム体験を話していきたいと思います。前回に続いて選んだテーマは、PCのフリーゲームです。
 ただ、以下に触れるのは一般にイメージするようなものとは少々異なるかもしれません。それにはいろいろと理由があるのですが、そのことも含めて順に説明していきましょう。


フリーゲームの世界の発見

時は世紀の変わり目ごろ。インターネットがダイヤルアップから常時接続に切り替わったくらい。この頃からゲーム好きだった筆者は、パソコンを利用可能になり、インターネットの世界に触れた。当然のようにゲーム関連のサイトにたどり着き、読んだり書いたりしていた。そのうちルドラ関連については以前まとめている。
 徐々に学んだのは、パソコンにはソフトというものがあり、そのうちの多くがフリーで、これを入れれば何でもできるということである。そうしたソフトが集まっていたのが窓の杜であり、Vectorであったが、特にVectorは個人の投稿を受け付けていたので、ものすごい数のソフトが集まっていた。
 その中にはゲームもあり、これが次から次へと投稿され、一大コミュニティをなしていた。今でもVectorはそうしたゲームをきっちり保管してくれているが、だいたい21世紀のものであるWindows 10/8/7/Vista/XP/2000/NT用ソフトが6457本なのに対し、それ以前のWindows Me/98/95用ソフトが12399本ということなので、いかに過去の方がこの界隈が盛り上がっていたかがわかるだろう。

片っ端からダウンロード

 筆者は当時、そうそう好き勝手にはゲームを買えない学生だったので、タダでいくらでもゲームができるということを聞いて大喜び。Vectorにあるものを片っ端からダウンロードして回った。アクション、シューティング、RPGから音ゲー、BL系ノベルゲームに至るまで本当に何でもかんでもである。
 そこで徐々に学んだのは、「ゲームメーカー的ソフトで作られたものは平均的なクオリティが低い」ということである。当時はRPGツクールに加え、Klik&Play(有名な呪いの館がこれ)、その後継のClick&Create、2D格闘ツクールなどで作られたゲームが結構な数を占めていた。
 いや、RPGツクール製でもあれとかこれとか名作はあるでしょ、と思う人がいるかもしれないが、確かにツクールでも本当によくできたゲームは面白いのは間違いない。ただまんべんなく見ると、なんともいえないゲームの方が圧倒的多数である。これは、ツクール系はゲーム制作のハードルが低いため、ものすごくエネルギーを費やしている精鋭以外の人も参入できたのが理由ではないかと思われる。
 それ以外には、HSP(Hot Soup Processor)という言語で書かれているゲームも結構あった。こちらはゲームを作りやすいと言われていて、筆者もいろいろ挑戦してみたこともある。そこまで複雑なものは作れないようだが、アイデアの光るゲームはわりと見かけた。HSP自体今ではすっかり耳にしなくなってしまったが、現在でもプログラミングコンテストなどが開催されているらしい。

多数の面白いソフトたち

 そうしてダウンロードしたソフトの中から取捨選択を行い、面白いものを遊んでいた。ソフト自体はパソコンの移行時に多くが消えてしまったが、幸いにも以下にいくつかタイトルを記録してあるため、失われずに済んでいる。

PCフリーゲーム紹介

対戦ゲーム紹介 PCソフト(フリー)編

全体としてアクションとシューティングが多いのは、やはり作りやすいシステムだというのと、RPG界隈にはツクール系が氾濫していたせいで避けていたというのがあるだろう。2つ目の記事にあるようにローカル対戦が面白いゲームも結構あり、友人と遊んで盛り上がったりもしていた。
 こうして見渡すとこの時期のPCフリーゲームにはいくつか特徴があるように思われるので、整理してみよう。

オマージュ的なゲーム

 魚介類の戦艦と戦うSTGのMESSIERとか、ダメージを蓄積して敵をふっとばすとりゲームとか、サイコロを転がして消すDICEとか不可思議なダンジョンを公開していた作者とか、どこかで見たようなゲームシステムのソフトが結構多かった。サガフロ2のデュエルのコマンド組み合わせのみを遊べるゲームなんかもあった記憶がある。これはフリーだからできることかもしれない。
 なおかつそれらはただパクっただけに留まらず、独自の発展を遂げていたり、エディットができたりして結構面白いのである。良質なゲーム作りは模倣から始まるということがよくわかるといえよう。

拡張性のあるゲーム

 これはPCゲームのいいところであり、ユーザーが新しい要素を追加できるゲームがいろいろあった。別で語りたいと思っているCardwirthはその最たるもので、多くの人が追加シナリオを投稿していたし、MUGENの先祖のようなKnuckle Fighter Xとか、ファミコンウォーズ的なシステムでキャラ・マップエディットができる局地戦略とか、自由に作って遊べるゲームが盛りだくさんだった。かくいう筆者も局地戦略にメタルマックスのユニットを実装したりして遊んでいた。

左からナイトゴーント、ぼうえいシステム、ノアにミスターカミカゼ。ドットは結構頑張ってると思う。

 同じく自由に作って投稿できたといえば、音ゲー方面ではBM98(BMS)も非常に盛り上がっていた。これは要するにビートマニアの譜面を自分で作れるもので、その面では怪しかったが、多数の素晴らしいオリジナル曲に出会うことができた。

外部ファイルと連携できるゲーム

 これも拡張性の一端だが、外部ファイルを取り込んで遊べるゲームというのもあった。そもそもグラフィックや音楽の差し替えというのが簡単にできるゲームも多いし、モンスターファームから発想を得たのか(あるいはバーコードバトラーか)、任意のファイルを読み込むとキャラクターを生成し、対戦ができるゲームとかもあった。さらにArt Actionというソフトは、画像ファイルを読み込んで色で壁やトゲなどの機能を判定し、エディット自在のアクションゲームができるという独創的なシステムだった。
 またドラムマニアにあたるPerfect Beatは、Midiファイルのドラム部分を譜面にして遊ぶことができた。BMSと違ってプレイを想定していないものなのでめちゃくちゃになっていることも多々あったが、当時のMidi制作の広まりと合わさって多彩な曲で遊ぶことができた。

「フリーゲーム」以前の時代のフリーゲーム

 ここまで読んでいて、フリーゲームと聞いてきたのに、有名なもの、たとえばゆめにっきとか帽子世界とか、片道勇者とかが全然ないじゃないかと思われるかもしれない。
 そこは世代の違いというか、その辺は2000年代後半のもので、その頃にはコンシューマと有料PCゲームの方に行っていたというのと、ニコニコ動画や掲示板などを全く見ていなかったので、何が流行っているかを知らなかったというのがある。
 つまり一般にフリーゲームと認識されているゲーム群以前の時代のものを今回は紹介しているということで、逆にあまり知られていないものをピックアップできているだろうし、より失われがちな情報なので、記録しておく意義はあるはずである。

思い出作品ピックアップ

 そうしたマイナー作品の中から、いくつかピックアップしてみたい。PCを探ったらわりと丁寧に保存してあったのが出てきたので、画像もつけてみた。

少年少女アドベンチャー

 こちらで以前紹介しているが、レトロな雰囲気ながらもオリジナリティにあふれるRPG。冒頭で唐突に敵が現れ、理不尽展開だと思わせておいて、後に敵の幹部が過去にタイムスリップして弱い主人公を倒す作戦だったとわかるなど、あっと驚く仕掛けが面白かった。

個性的なキャラやセリフ回しが魅力。

WRITE CIRCLE GAME X2

 対戦が面白いゲームの典型例。それぞれのプレイヤーが点を動かし、通った先には線ができて、ぶつかったらアウトというもの。単純なルールだが、アイテムあり地形ありで、対戦時には大いに盛り上がった。

シンプルなシステムながら対戦が面白い。

Knuckle Fighter X

 拡張性のある格闘ゲームで、こちらもそこそこコミュニティがあったらしい。何よりキャラが実写取り込みなのが特徴で、なおかつ波動拳的な技を出したり、腕が伸びる人までいてものすごくシュール。初期キャラで遊んでいるだけでも十分楽しめた。

奇抜過ぎるこの絵面。

月と地球

 とよみず隆史氏によるノベルゲーム。内容はよくある恋愛ものかと思いきや、いわゆる「第四の壁」を破る要素があり、途中から何か変だな?となってきて、徐々にその仕掛けの正体が明かされていく構成となっている。その展開には大きな衝撃を受けた。

今でも強く印象に残っているのがこのシーン。

ぼぎょぼぎょぎょ 2日目

 おそらく真に誰も知らないゲーム。「ひろくんのページ」というところで公開されていたもの。シューティングツクールで制作されており、その部分の出来は頑張ってはいるものの微妙なのだが、何よりBGMが魅力的だった。クラシックをつなぎ合わせたいわゆるパロディウス系で、本家にない曲も多数使用し、アレンジも絶妙で、曲名も「トランペットウェポンの命日(原曲:トランペット吹きの休日)」「KILLKILL星変造曲(きらきら星変奏曲の短調アレンジ)」「我が祖国はボロボロ(我が祖国のモルダウとスカボローフェア)」とセンス抜群だった。
 サイトはなくなってしまったが、探したら音楽ともどもきっちり保管してあったのでご紹介。

「幻想速攻曲」とともにボス登場。

 このように、当時PCゲーム制作に情熱を傾けてくれた人々のおかげで、実に個性的なゲームに出会うことができた。そうした方々に感謝するとともに、たとえ現在ではプレイできなくなっても、そのことを忘れないように語り継いでいきたい。

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