ゲームのテンポを数値化してみた(1)

Gayaline

 今回は、ゲームのテンポは作品ごとにどれくらい違うのかということが気になって、RPGの戦闘や移動にかかる時間を計ってみました。計測の方法などはまだ試験段階ですが、3Dになるとどれくらいテンポが変わるのかや、FFとドラクエでどう違うのかなどがわかるはずです。

今回のプラン 

 普段は目に見えずなんとなく感じるものでしかないが、プレイの快適さに確実に影響している「ゲームのテンポ」について何がしかを明らかにしたいというのが、今回考えたことである。テンポや操作のレスポンスがいいと快適で、劣悪なものはストレスが溜まるという話はよく聞くが、どんなゲームのテンポがよくて、具体的にどれくらい違うのかということはこれまで誰も知らなかった。

 ではそのテンポについて知るためにはどうしたらいいか。時間に関係するものなのだから、計ればいいのだろう。そういうわけでストップウォッチを用意して、ゲームのいろんな時間を計ることにした。対象はゲームスピードが取り沙汰されやすく、動作が区切られて計測しやすいRPG、それも有名なものから取り組むことにした。つまりFFとドラクエである。

 ここまではすんなり決まったが、問題なのは何の時間を計るかである。この基準次第で結果も変わるし、作品間の比較の可能性も決まる。ここは悩みどころだが、ひとまず作品ごとに違いが大きそうな、エンカウントと戦闘終了にかかる時間を計ってみた。

エンカウント&戦闘終了時間

 計る際には、どこからどこまでを計るかということをきっちりと設定する必要がある。そしてその区間は、多くのゲーム間で共通する部分にしなければ比較ができない。そこで今回は「エンカウント演出」として、マップ上で敵と遭遇し、操作が不能になってから戦闘画面で操作が可能になるまでと設定し、「勝利演出」として、勝利のBGMやSEが流れてからマップ画面で操作可能になるまでと設定した。メッセージ速度が設定可能なものは最速にし、メッセージ送りはできるだけ速く行った。計る際にはどうしても誤差が出るが、動画があるものはそれをスロー再生し、3回の平均をとった。差し当たりFF10作品を計った結果が以下である。表の数字は秒を表しており、少数第2位以下は四捨五入している。

タイトル エンカウント演出 勝利演出
FF1 2.3 5.0
FF2 4.8 4.8
FF3 2.7 4.6
FF4 2.9 4.2
FF5 3.1 2.7
FF6 3.1 4.6
FF7 8.6 9.1
FF8 9.6 12.1
FF9 14.7 12.7
FF10 6.8 9.2

 FFに関しては、4からアクティブタイムバトルが導入されるのでエンカウント演出の「操作可能になる」の判定が難しくなるが、ATBバーがある作品はバーが動いたら、ない4はコマンドが表示されたらを計測終了タイミングとした。先制攻撃やバックアタック、戦闘後のレベルアップなどはないものを選んでいる。また、特にPS以降はハードの違いによる読み込みスピードの差なども出るが、最初に発売されたハードのものを採用した。HDリマスターになってどれほど早くなったかなどは、別の機会に調査したい。

この結果をグラフ化すると次のようになる。

何となく予想できただろうが、3Dになって戦闘突入にかかる時間はずいぶん遅くなった。それも9までは作品が進むごとにかかる時間は伸び続け、9では前作の1.5倍にまでなってしまった。同時に、戦闘終了後にマップに戻る時間も相応に伸びている。両者でそれぞれ戦闘背景とマップ、キャラの読み込みが行われるためである。ただしそれは、PS2の10になってだいぶ改善された。一方でFCとSFCでは後者のほうが高速化しており、この数値だけで言うとFF5が最速である。FC3作はどれも同じに見えるが、2は戦闘突入時が微妙にもっさりしており、終了時も左に駆け抜ける分時間がかかる。

 最も差が大きいFF5と9の間では22秒もの開きがあり、100回戦闘をするとこれだけで36分も差がつく。その上で戦闘中の演出でも差が出るのだから、かかる時間の長大化は相当なものである。

さらに、リメイク作品でどう変わったかも調査してみた。ハードや2D・3Dが違う1-4までを見てみよう。

タイトル エンカウント演出 勝利演出
FF1 2.3 5.0
FF1GBA 2.0 1.1
FF2 4.8 4.8
FF2GBA 1.2 3.6
FF3 2.7 4.6
FF3DS 5.7 7.5
FF4 2.9 4.2
FF4DS 3.8 8.5

このグラフは次のようになる。 

全体的な傾向は同じで、SFCに近いGBAになるとテンポは速くなり、3DモデルになったDS2作は遅くなっている。同じプログラムを使っていそうなGBA1と2の間で結構差があるのも意外である。

次にドラクエシリーズの結果を見てみよう。

タイトル エンカウント演出 勝利演出
DQ1 2.4 4.1
DQ2 2.9 3.5
DQ3 4.3 4.4
DQ4 3.1 3.8
DQ5 2.1 3.6
DQ6 3.5 2.6
DQ7 3.3 5.7
DQ8 3.3 4.9
DQ9 4.2 4.4

これもグラフ化してみる。

まず全体として、FFより圧倒的にかかる時間が短い。しかもそれは、3Dになっても変わらず、遅くても合計10秒を超えていない。ドラクエは7では部分的に、8から完全3Dとなり味方キャラクターも表示されるようになったが、その影響はかなり少なく抑えられており、若干の差は見られるがそれは元々が速いためである。またFFと同様にSFCがFCより速くなっており、特に5のモンスターの現れる速さは他作品の追随を許さないレベルだろう。

 この結果からわかるのは、ドラクエシリーズは相当にテンポ面について考慮されており、少なくともテンポを犠牲にしてまで演出を豪華にしようという考えはなかったということである。FFとドラクエは戦闘画面の形式で違いがあったが、3D化するにつれて最終的には同じような画面構成に落ち着いた。しかしFF3DSとDQ9を見ればわかるように、3Dの似たような画面でも結構な差が出ている。これはやはり、ドラクエの側がたとえ3Dになっても戦闘に時間がかかりすぎないようにという工夫をしていたということだろう。

歩く速度

 他に何か比較可能なものがないかと考えたところ、キャラクターの歩く速度の計測を思いついたので、フィールド以外の場面で10マス歩くのにどれくらいかかるかを調べてみた。ただし3Dの作品は距離があいまいなので計測できない。その結果をまとめるとこうなる。

タイトル 10歩にかかる時間
FF1 2.6
FF2 2.6
FF3 2.6
FF4 2.7
FF5 2.7 (1.3)
FF6 2.7 (1.4)
DQ1 2.5
DQ2 2.7
DQ3 2.6
DQ4 2.6
DQ5 2.6
DQ6 1.3
DQ1(SFC) 2.6
DQ2(SFC) 2.8
DQ3(SFC) 1.3

FF5と6のカッコ内はダッシュを使った時の時間である。グラフにするまでもなくわかるように、奇妙なまでに速度は一定している。しかもFFとドラクエを通して同じだし、SFCになっても変わらない。10マスに2.6秒というのはある時期までは黄金ルールだったのかもしれない。

 歩く速度は、FF5と6でダッシュが導入されて加速したが、その次に出たドラクエ6と3リメイクでは移動がまったく同じ速度にまで速くなった。ダッシュの登場は結構なイノベーションだったわけだが、ドラクエはきっちりそれを取り入れたという、両者がいかに相互に参照し合っていたのかがよくわかる結果である。

今後の計画

 今回計ったものは取っ掛かりとしてはそれなりの結果が得られたが、戦闘のテンポに関してももう少し色々な場面の計測が必要だろう。攻撃や魔法の演出についても調べてみたいが、どの部分を計るのかが工夫が必要である。

 また、比較対象の拡大も行いたい。コマンド式RPGであれば同条件で計測できるので、さらに対象を増やせば、FFとドラクエがどのくらいスタンダードなのか、それより速い作品はどれくらいあるのかなどがわかるだろう。

 ゲームのテンポ計測はまだ始まったばかりだが、その方法が確立されればこれまで知られていなかった部分に光を当てることができるはずである。

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