徹底比較 3D対2D

Gayaline

今回は、ゲームにおける3Dと2Dグラフィックの、それぞれの長所と短所を比較してみたいと思います。ここで何より示したいのは、3Dと2Dの両者にはそれなりの長所があり、決して2Dは3Dに比べて原始的だとか、劣っているというわけではないということです。

 筆者が重視する、ゲームを芸術作品としてとらえる視点では、何よりも取り除くべきは古いものが劣っていて、新しいものが優れているという考え方です。2D3D論争もまさにその一例として取り上げられやすいので、今回じっくりと考えてみることにします。

 


3Dゲームがいかに広まったか

 3Dと2Dを比較するにあたって、まずは3Dの登場について簡単に見ていこう。それまでにも3Dのゲームはぽつぽつあったが、第5世代ハードつまりPS、SS、N64の時代になると次々と3Dゲームが現れ、そのグラフィックは驚きをもって迎えられた。この状況を見るといかにも3Dが本質的に優れているから広まったように思えるが、実態は少し異なると考えている。この時期の革新的なゲーム、FF7やマリオ64やバーチャファイター(や個人的にはジャンピングフラッシュ)は、3Dの強みを最大限に活用したからこそ好評を博したのである。まずはFFを考えてみよう。大容量ディスクメディアになったためにムービーをたっぷり収録できたというのは別の要因なので除くと、6との最大の差は戦闘シーンであり、キャラクターがポリゴンモデルになったために滑らかに動くようになった点が大きい。それまで敵は戦闘中微動だにしないか、ユミールみたいに数パターンのアニメをする程度だったのが、過剰なまでに動き回るようになった。

 そして、3Dの強みを最大限生かせたのはやはりアクションゲームだろう。2Dと3Dの根本的な差は、後者が空間上に物を配置し、カメラで撮影するという描画方式になっている点にある。そしてこのカメラを動かすことにより、これまでほぼなかった(もちろん描画が2Dでもソルスティスのように3D空間は作れるが、カメラは動かせない)タイプのアクションゲームが生まれた。マリオ64のような箱庭型アクションが典型例であり、格闘ゲームであれば奥行きをつけることができた。このカメラの要素はRPGにも活かすことができ、各シーンでアングルを切り替えることにより映画的な映像が可能となり、見下ろし画面での単調なお芝居から脱却できたわけだ。

 しかし、あらゆるゲームが3Dの恩恵を存分に受けたわけではない。たとえばDQ7は、「マップ内でカメラを回せること」を最大の新要素としてウリにしており、確かにこれによって建物の裏などが探索できるようになったが、その要素がドラクエとしてどうしても必要かと言われればそうでもないだろう。一方で戦闘シーンは、多少視点が変わるものの味方キャラは表示されず敵は2Dという過渡期的な状態だった。戦闘が完全3Dとなるのは8からとなる。

3Dの長所:滑らかな動きと視点変更

 ここまででわかる3Dの長所をまとめてみよう。最大の長所は、3Dモデルを使った滑らかな動きが表現できることだろう。2Dドット絵でキャラを常時アニメーションさせるのは並大抵のことではないので(もちろんヘラクレス4やルドラなどそれをやったRPGもあるが)、このことは結果的に労力の削減にもつながる。

 もう一つの利点は、カメラを動かせることである。これにより空間が立体的に使えるようになるし、映像表現にも幅が生まれる。こうした長所はゲームの可能性を広げることに貢献し、その後のゲームを大いに発展させたといえるだろう。

 この2点は一言で言うならば、3Dは2Dよりも「リアル」だということである。これだけ聞くとだったらやっぱり3Dのほうがいいじゃないかと思うかもしれないが、芸術においては必ずしもリアルつまり現実に近いものが優れているとはいえない。実際に、PS時代の3Dブームにはその後ある程度歯止めがかけられるようになった。

3D化がうまくいかなかった例

 実例を挙げてみよう。たとえばカービィである。カービィ64と3DSのカービィを比較するならば、どちらも3Dだが昔の64のほうがよりカメラが動いている。これはつまり、カービィ64ではせっかく3Dを導入したということで視点を動かしてみたのだが、結局あまり意味はなかったのでその後固定カメラに戻ったということである。同じことが格ゲーにも言える。その後奥行きのある格ゲーとない格ゲーどちらが流行ったかと言われれば、答えは明らかだろう。これらの事例を見る限り、どうやら固定カメラであることの利点もそれなりに存在するようだ。それはおそらく、視点変更で見えにくくならない(対戦者双方の平等が必要な格ゲーでこれは大きいだろう)とか、移動できるところとそうでないところがわかりやすいなどだろう。

 さらに、現在に至るまでどうしても3Dと相性の悪いシリーズもある。それはスパロボである。DC版αやGC、NEOなど3Dスパロボもあるにはあるが、結局のところ定着しなかった。それは何より、スパロボが目指しているものがほとんどが2Dのアニメであり、3Dにする必然性がないというのもあるだろうが、それ以外にも、2Dでしか表現できないものがあるのだろう。これこそが3Dが「リアル」であることの弊害である。

3Dの短所:強調と省略が苦手

 3Dの短所、それは3Dが「リアル」であることそのものにある。リアルであるというのは、現実のルールに従わなければいけないということである。手を上げ下ろしするのも必ずすべての点を通らなければならず、2Dアニメのように「中抜き」で済ませられないのだ。そして同様に、漫画でおなじみの強調表現が3Dではできない。あえてパースを狂わすことで迫力を出す表現もそうだし、スピード感を出すために手足を複数描くことや、当たり前の流線ですら存在しない。もちろんこの問題点には気づかれていないわけではなく、漫画的な3D表現のゲームでは2つのモデルを重ねるなどして、そうした表現を可能としているものもある。

 どうにも対策しようがないのは、「省略したいものを省略できない」点である。RPGでは相手を殴ったら歩いて戻らないといけないし、次のポーズに一瞬で移ったら不自然になる。その結果として、全体的なテンポが遅くなり、「もっさり」するのである。この差は、元のDQ7と完全3Dとなったリメイク版を比べてみればわかるだろう。テンポ問題は「高速モード」を導入することによって対策が取られているものもあるが、単なる早回しと適切に省略された表現とでは、どうしても差は出てくる。

 「現実の法則から逃れられない」という短所は、物理エンジンの導入でさらに顕著になる。なにせこれ自体が世界を物理法則で縛るものであって、意図的に逸脱させない限りは一切の省略がなされないゆえにテンポ感は最悪となる。

3Dにする必然性があるかどうかが重要

 ここまで述べたところでわかるのは、3Dにするか2Dにするかは両者の強みをよく考えたうえで選択すべきことであって、無条件で3Dにすべきものではないということである。3Dにしかできない表現は多く、かつ3Dの欠点はある程度は対策することができる。問題なのは、特に必然性もなく3Dを選択しているゲームである。この類は、2Dゲームの3Dリメイクに一番よく見られる。2Dで最適化されたマップをそのまま使い回した場合は、たとえ視点が変えられても特に意味のあるものは見えず、まさにそれは必然性のない3Dとなる。同様にイベントシーンも、カメラやキャラの動きを特に工夫しないのであれば3Dの利点は消え、ただテンポが悪いだけの内容となる。この場合問題なのは、なんとなく3Dの方が優れているあるいは先進的と思ってそちらを選択したことと、その際に工夫を怠ったことである。3Dと2Dのどちらかが根本的に悪いわけではない。

 これは3Dにしないほうが良かった例なので、バランスを取るために3Dにしたほうがよいと思う例も挙げてみよう。真っ先に思い浮かぶのが、ポケモン不思議のダンジョンシリーズである。このシリーズはDSまでは2Dドット絵を採用しているが、これがとんでもない状況を招いていた。このシリーズに限らずローグライクは8方向に移動できるのだが、そのせいで縦横斜めの8種類のグラフィックが必要になるのだ。それぞれに攻撃モーションやダメージモーションを作ると手間は8倍で、おまけに時・闇・空の探検隊は第4世代までの500対近くのポケモンすべてがキャラとして登場するので、その作業量はすさまじいことになったはずである。この作品がその困難を根性で乗り越え、すべてにドット絵を用意したのは素晴らしいわけだが、さすがに3Dにして作業量を減らしても良かったのではと思えてくる。このように、細かいグラフィックの差分を用意できるのが3Dの強みといえる。

まとめ

 ここまでの内容をまとめると、

  • 2Dに対する3Dの強みはモデルがあれば多彩かつ滑らかな表現ができる点と、カメラを自在に動かせる点
  • 3Dの欠点は実際以上の強調表現が苦手な点と、省略ができずテンポが悪くなる点
  • ただし、2Dも3Dも工夫次第で欠点は克服できる

ということである。ここで言う工夫とは、2Dの細かなモーションを表現できない点は大量にアニメパターンを用意することで克服でき、3Dの強調・省略の欠点は単なるリアルにせず、メリハリをつけることで対策できるということである。そのような工夫の凝らされたゲームなら2Dと3Dのどちらを選ぼうと素晴らしいわけだが、その欠点を理解しないままなんとなく使うと悪い点が前面に出てしまう。この点をよく考慮して、ゲーム内容に合わせたグラフィック表現を選んでもらいたいものである。

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