ゲーム雑誌の調べ方ガイド

Gayaline

 ここんところゲーム雑誌についてひたすら調査を行ったので、その際に発見した雑誌の調べ方について、覚え書き程度に書いておこうかと思います。ゲーム雑誌について調べたくなった人用。


 ここしばらく「ゲーム雑誌のジャンル・刊行期間データ」や「ゲーム雑誌の刊行時期一覧表」を作っていたが、どうにかして雑誌の情報を集めていくうちにいろいろなことがわかったので、さらに調べたくなった時用にその内容をメモっておこうと思う。まずはゲーム雑誌とは何かについてである。

「ゲーム雑誌」の範囲

 何か調べものをする際には、調べる対象を規定することが必要である。学術研究ならいざ知らず、日常的なものを調べるのにそんな大げさな、と思われるかもしれないが、日常的なものこそ言葉があいまいに使われているので、なおのこと定義の問題は重要となる。このことは最近まさに痛感したことで、キャラゲーを調べた時にはキャラゲーとは何かを考えなければいけなかったし、コントローラーを調べた時もコントローラーの定義に苦労した。

 今回は「コンピューターゲームを少なくとも部分的に扱っており、連続して刊行されている出版物」をゲーム雑誌の定義としたが、その過程を説明しよう。ゲーム雑誌を規定する上で厄介なのは、何より厳密な「雑誌」の規定と、われわれが認識している雑誌の規定との間にずれがあるからだ。厳密な雑誌の規定はこんな感じである。

ムック本とは? 雑誌とムック本の違い【まとめ】 - ブックオフオンラインコラム

よく聞く「ムック本」とはどんな本? 雑誌や一般書籍との違いはざっくり言うと、あるテーマに関する「まとめ本」で、雑誌よりは一般書籍に近く、一般書籍よりは雑誌に近い位置づけです。その違いの詳細と、書店の店頭でムック本を一発で見分ける方法までご紹介します。

 ここでは雑誌とムックの違いが説明されているが、要するにISBNがないものが雑誌、あるものがムックや普通の本ということになる。ムックのうち単独で刊行されているのはあまり雑誌とは思わないが、連続で出て、号数がつくムックが存在するから話がややこしくなる。たとえば『ファミ通App』『シューティングゲームサイド』の場合なんかがそれだ。

 では、雑誌として扱う対象を厳密な定義のそれに限定するべきかと言われると、決してそうではないだろう。ここでの目的が、ゲーム情報を扱う定期(または不定期)刊行物を調べたいというものだからだ。なので、雑誌の部分の定義は「連続して刊行されている出版物」という程度にまで広げるのがいいだろう。図にするとこんな感じである。

 同時に、何が「ゲーム」かも一義的に決まらない。そもそもゲームというとコンピューターゲームをなんとなく指すのが大方の見方なのでこう言っているが、ボードゲームやTRPGなどのアナログゲームもれっきとしたゲームである。アナログゲームに関する雑誌も『Tactics』や『Simulator』、『Game Graphix』など昔からいろいろ存在しているが、当サイトは元来アナログゲームは扱っておらず、範囲が広すぎるために今回は外した。他方でPC雑誌や美少女雑誌は必ずしもゲームのみを扱っているとはいえないが、PCの領域はコンシューマーゲームの由来を考える上で重要なので対象に含めた。

 こうしてできたのが前述の定義だが、これでばっさり対象を規定できるとはいえない。『コロコロコミック』などでも多少なりともゲームは扱っているのであり、『Vジャンプ』との違いがどれほどかと言われると微妙である。その辺りはある程度裁量を働かせるしかないだろう。

ゲーム雑誌を調べる方法

出版統計資料

 さて、ゲーム雑誌をまとめて調べたいという場合に何を見たらいいのだろうか。こういう疑問には国会図書館の案内が役に立つ。

これを見ると、雑誌の統計資料は全国出版協会出版科学研究所の『出版指標年報』を調べろとあったので、そちらを読んでみた。この資料にはある時期からゲーム雑誌のコーナーができており、そこにその年のジャンル別の雑誌数や売り上げが載っている。その年にどんな雑誌が存在していたかはわからないが、創刊・休刊情報はあるのでそれらをチェックすれば雑誌はすべてカバーできると考えた。

 結果としてこの資料から出発したのは正解だったのだが、データなどを照らし合わせているうちに徐々に疑問が浮かび上がってきた。たとえばある時期には任天堂系雑誌は4誌とあるが、実際はもっとあるとか、創刊・休刊表に出てこなかった雑誌が存在しているとか。要するに、これ結構見落としがあるなということである。

 加えて、『出版指標年報』での雑誌は厳密な規定での雑誌なので、増刊としてスタートしたマル勝メガドライブや電撃メガドライブが載っていなかったりする。結局わかるのはこのくらいということだ。

書籍に関しては年報の前半パートに一応触れられているが、その年のトレンドがわかるくらいでもちろん網羅されているということはない。

中古ショップのリスト

 残りの部分をカバーするにはどうしたらいいか。ランダムにネット上を調べているだけでは効率が悪いので、思いついたのは中古ゲームショップの一覧である。となるとふさわしいのはやはり駿河屋だろう。

ゲーム雑誌をすべて表示して、品切れ表示もONにするとこれまで買い取ったことのある雑誌のリストであろうものがドバっと1万5千件以上表示される。あとはこれを全部見ていけばいいわけだ。

 この雑誌リストで相当数の雑誌・ムックがカバーできるだけでなく、表紙画像があるおかげで刊行順に並べるとその時期のトピックなどもだいたいわかる。資料としての価値も一級品だ。

国会図書館の蔵書情報

 雑誌の創刊・休刊年情報は、基本的に国立国会図書館の「国立国会図書館サーチ」と「国立国会図書館オンライン」で調べればいい。ただしムックなどは所蔵がないものもわりとあるので、その場合は駿河屋のほうが頼りになる。

 この他に探していて見つけたのは、東京都立図書館の「1989年から2017年に創刊された雑誌」というリストだ。まとまってはいないがゲーム雑誌が含まれているので、いくつか創刊年を調べることができた。

 これら以外には、最近刊行された『ゲーム雑誌ガイドブック』(三才ブックス)が大いに役立ったことも付け加えておこう。内容についてはここで解説しているが、詳しく紹介されている雑誌名以外にもかなりの数の雑誌が言及されている。

全体として…

 ゲーム雑誌を調べていてわかったのは、トレンドの背後には小さいものがたくさんあるということである。たとえばファミコンブームの際には有名な4大雑誌が生まれたが、その裏で『ファミコンチャンピオン』や『ファミコントップ』などあまり知られていない雑誌も創刊している。同じように1996年ごろにはカジュアル系雑誌ブームがあると言われており、『ゲームウォーカー』や『じゅげむ』はよく知られているが、調べているとそれ以外にも『Gameぴあ』とか『Game Spa!』とか同系列の雑誌がぽこぽこ出てくる。

 また、雑誌化の前にはムックがあるということも法則としてありそうだ。とりわけ、オンラインとかモバイルとか新しいジャンルに進出する場合は、とりあえず増刊としてムックを出して様子を見て、好評だったら定期化に至るというパターンがとられているようだ。これはつまり、定期刊行の雑誌の裏にはずっと多くのムックがあるということである。

 もう一つ今回新発見したのが、『Side-BN』のようなゲーム企業の広報誌・ゲーム企業が刊行している雑誌である。これは調べてみると結構あり、他にも光栄は自社ゲーム+歴史ファン雑誌を多数刊行していることがわかり興味深かったが、これなどは『ゲーム雑誌ガイドブック』でも一切触れられていなかった。広報誌は無料配布のものも多いが、こうした雑誌も対象に入れるとさらに視野が広がるのではないだろうか。

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