法の守護者~天使族~

法の守護者~天使族~





~本項解説~


天使、と聞いて思い浮かぶイメージは1つ。男か女かもわからない中性的な顔つきに、背中には鳥の翼。頭にはいつも蛍光灯みたいな輪っかをつけてますね。
そんな馴染みの深い姿の天使は、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教のいずれにも登場します。3つの唯一神は結局は同じなのだから当然かもしれません。
天使には階級があり、それは上級、中級、下級に分かれ、さらにそれぞれが第一位、第二位。第三位に分かれています。上から説明していきましょう。

 上級第一位、最も神に近い位置にいるのはセラフィム(seraphim、熾天使)と呼ばれる者達で、6枚の翼を持ち、常に神の御座の周囲にいます。
この辺のレベルの天使は、神のそばにいるのが役目で、人間界に降りることはまずありません。
 上級第二位はケルビム(cherubim、智天使)。彼らも神に直接仕える役目で、神の戦車を引いたり、御座を運んだりしているほか、一人はエデンの園の門を守っています。
四つの顔と四つの翼を持ち、岩のような姿で永遠に門を見張るのだといいます。
 上級の第三位スローンズ(thrones、座天使)もまた神の前に存在し、神を守る天使です。

 さて、中級第一位はドミニオンズ(dominions、主天使)で、天界から降りる天使を統率する役目があり、人間界においては最も権力を持っている天使です。
 中級第二位のヴァーチャーズ(virtues、力天使)は奇跡を起こして、人々に天からの恵みを授けるという、天使らしい能力を持っています。キリストの昇天の際に現れたのはヴァーチャーです。
 中級の第三位パワーズ(powers、能天使)は、最前線で悪魔と戦う役割を与えられていて、武装した状態で常に天の通路を巡回しています。
常に最前線にいるため悪魔の誘惑に負け、天界から離反して堕天使になることが最も多いのも、このパワーズです。

下級ともなると、人の運命に直接関わってくるようになり、その人の目の前に現れたり、人を守護する役目をも担っています。
 下級第一位はプリンシパリティーズ(principalities、権天使)と呼ばれていて、個人を守護するのではなく、国家全体や、文化、歴史などの運命を司っています。
 下級第二位のアークエンジェル(archangels、大天使)達は、天界における戦士であり悪魔たちとの戦いの際は先頭に立って戦います。
さらに、神の意志を人に伝える橋渡しの役目もします。
 最後となる、下級の第三位はそのままエンジェル(angels、天使)という名前で、個人個人の運命を見守り、罪のない人や正しい人の守護を担います。
その数は全ての人間よりも多いといわれています。

さて、これは階級の名前ですが、軍隊の中に将軍がいるように、天使の階級にも、名のある指揮官がいます。見てみましょう。

 まず、最上位に挙げられるのは、「謎の熾天使」メタトロン。彼は天使の王、万物の創造主、小エホヴァなどと呼ばれている天使で、他の天使につく「エル(神の使いという意味)」がつかないことからも、何か特別なものを感じます。
 次は、最も有名であろう、「四大天使」ミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエルです。詳しくは下で説明しますが、この四人に共通することは、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教のどれにもその名がある、ということです。ちなみにこれらの天使の階級は意外にもアークエンジェルですが、これは昔は大天使が最高階級だと考えられていたものの、九階級に再編成された際に低い地位にされてしまったためのようです。
 また、四大天使にメタトロン、ラグエル、ラジエルを加えて七大天使と呼ぶこともあります。
 もう一人、神に次ぐ地位を持っていたものがいます。いや、いました。それは・・・ルシファーです。これに関してはまた「悪魔」の項でやります。その方がふさわしいでしょう?

では、その個性的な天使たちを見ていくことにしましょう。まず閲覧の仕方を軽く紹介します。
上から、天使の名前、一般的なスペル、ヘブライ語の意味、天使の容貌・持つ道具、その天使の特徴となっています。
名前は赤色はキリスト、ユダヤ教における名前で青色はイスラム教の名前です。

アズラエル
Azrael
神の救い
四つの顔と四枚の翼を持っているが、目と足は無数にあるとされる。

イスラム教の天使。人類を創造するとき、アラーはジブリール、ミカイール、イスラフェルを遣わしたが大地の反対により失敗した。最後にアズラエルに頼んだところ、上手くいったので、その功績をたたえられ死を司る天使になった。


アブディエル
Abdiel
神の僕
姿は不明。

ミルトンの『失楽園』第五章に登場する天使で階級は熾天使。「神の命令に従うことにおいて誰よりも熱心であった」と呼ばれ、サタンの神への反逆の計画に断固として反対するが、周囲の堕天使には聞き入れられなかった。


アポリオン
Apollyon
滅ぼす者
イナゴの怪物を操るが姿は不明。

「ヨハネの黙示録」9章に描写される天使。ヘブライ語ではアバドンで、こちらは一般には悪魔と考えられている。第五のラッパが吹き鳴らされると、穴からイナゴが無数に現れ、作物や人に害をなす。これを操るのがアポリオンとされている。


イスラフェル
Israfel
燃え盛るもの
四枚の翼を持ち、天から地まで届くほどの巨体の持ち主。

イスラム教の天使。最後の審判の時にラッパを吹く役目の他、音楽を司る。
さらに1日に6度地獄の見回りをするよう命じられ、イスラフェルはそのたびに地獄の悲惨な光景を見て涙するという。


ウリエル
Uriel
神の火
本や巻物を持った姿で現れる。
四天使の一人、司る元素は地で方角は南。

預言と解釈の天使で、芸術家、作家にひらめきを与える。
火山とも結び付けられ、太陽などの自然現象を司る天使ともされる。


オファニム
Ophanim

四つの顔、四つの翼、直線的な足を持ち、その顔はそれぞれ牡牛、獅子、鷲、青年の顔である。

上級第三位スローンズの別名であり、機械的な姿をし「戦いに望む戦車」とも呼ばれる。


ガブリエル(ジブリール)
Gabriel
神の力
青年または少女のような中性的な顔立ちで、正義と真理を表す剣を右手に、公正さを象徴する天秤を左手に持つ。
四天使の一人、司る元素は水で方角は北。

マリアに受胎告知をし、モーセを埋葬し、マホメットにコーランを書き写させた天使であり、背徳の街、ソドムとゴモラを焼き尽くしたのもガブリエルである。


カマエル
Kamael
神を見るもの
赤い鎧と長い剣を持った、戦いの天使。

天国の門を守るために能天使14万4000を率いて、神に逆らうものに天罰を加える破壊的な性格を持った天使。


クシエル
Kusiel
神の峻厳
手に「炎の鞭」を持つ。

破壊の天使の1人で、炎の鞭でもって国家を罰するという、攻撃的な性格を持っている。


ザドキエル
Zadkiel
神の公正
犠牲を捧げるためのナイフに象徴される。

アブラハムが息子イサクを神への生け贄に捧げることを要求され、彼がそれを実行しようとした時にアブラハムを止めた天使がザドキエルとされる。


ザフキエル
Zafkiel
神の智
四枚の羽根を持った、巨大な一つ目の姿で現れる。

人間が必要な知識を的確に扱えるかを監視する目であり、正しい人間には知識を与える。
ちなみに土曜日生まれの人の守護天使だという。あまりうれしくない。


サマエル
Samael
神の毒
十二枚の翼を持った蛇の姿をしている。

世界に初めて死を持ち込んだ死の天使である。
モーセに死を告げるときも出向いていったが、その眩さに追い返されてしまったという。


サンダルフォン
Sandalphon
不明
メタトロンとは双子の兄弟であり、同様に背が高い。

900の天国を抜けて、神へ人々の祈りを伝える役目で、その祈りを素材に神の頭にかぶせる花飾りを編む。


ハニエル
Haniel
神の優美
可愛らしい少年や少女の姿で現れる。
愛の星である金星や、金曜日と深く関わっているとされる。

美の天使であり人々に愛の心を湧きあがらせ、若い男女を愛の絆で縛るという役割を持つ。
ちなみに似た容貌のキューピッドとは別で、そちらはギリシャ神話の神。


ハファザ
Hafaza
不明
4人組の天使。

人をジンなどの悪霊から守る守護天使で、誰しも4人のハファザがついており、昼夜2人ずつで交代して守護するという。ハファザは同時に、守護する人の善悪の行動を記録して、審判の日に報告する役目も持っている。


ハルトマロート
Harut&Maroth
不明
常に2人組で行動する天使。

イスラム教の天使で、地獄の番人として地獄に堕ちた者に過酷な責め苦を与える。
彼らは堕天使ではなく、アラーの命令に忠実に従っているだけである。


ミカエル(ミカイール)
Michael
神のごときもの
武装した青年の姿で、剣や槍などを持っている。
四天使の一人、司る元素は火で方角は東。

神に最も信頼されている天使で、敵である古き黒龍サタンと戦い地上に堕とした功績がある。
また、死者の魂の善し悪しを計るという役目を持つ。


メタトロン
Metatron
契約の天使
72の別名を持ち、36万5千の燃える目と36枚の翼を持つという。

謎の多い天使であるが、神に最も近いとされ、一説ではメタトロンは血に飢えた天使であり、自分に背く人間を嬉々として何百人も串刺しにすして、苦悶のうちに死なせるという。


ヨフィエル
Jophiel
神の美
名前からして、すばらしく美しいものと思われる。
虹のように輝く泉に住むため、「虹の蛇」とも呼ばれる。

ケルビム達の支配者。アダムとイヴをエデンから追い払う時にその名がでてくる。


ラグエル
Raguel
神の友
容貌や持ち物に関する特徴はなし。

仲間の天使を見張り、堕天しそうなものがいないかどうか常にチェックして、天界が内側から崩れることを防いでいる。


ラジエル
Rasiel
神は私の歓び
宇宙の知識を網羅した書物を持つ。

神の玉座を取り囲むカーテンの中に立ち、全ての出来事を見聞きする。
宇宙のあらゆる知識を書き記した「秘密の書物」をアダムに与えた。


ラファエル
Raphael
神の薬
杖をもった旅人の姿をとることが多い。
四天使の一人、司る元素は風で方角は西。

深い医療の知識を持っており、人を癒すこと、若者を保護することが役目である。
四天使の中で最も慈愛に満ち、穏やかで、明朗快活な性格である。


レミエル
Remiel
神の慈悲
激しい雷の中に現れる。

神の指示を人間に伝えることが役目であり、幻影を支配することができ、人に夢のような形で語りかけることができる。


さて、次は名前となにを象徴するのかはわかっていても、その他どんな姿かや何をするのかが全く不明な天使たちをまとめて紹介します。
これらはほとんど「名前だけ天使」ですが、各自ひとつずつ特徴がありますので、その姿を想像するのは難しいことではないでしょう。
天使名司るもの
エチオピア語エノク書由来の天使
バルディエルBardiel 雷光
ザキエルZakkiel
ザミエルZamiel 台風
ルヒエルRuhiel
ラシエルRashiel 竜巻とサイクロン
ラミエルRamiel
マルティエルMartiel
シャルギエルShalgiel
レリエルLeliel
シャムシェルShamshiel
オファニエルOfaniel
コカビエルKokabiel
ラティエルRahtiel 星座
スイエルSuiel 地震
その他の由来の天使
ソフィエル 野菜
ガギエル
アラエル
サクルフ 植物
シャクジエル 水辺の虫
ダラ
ズルファス
ザロピ 絶壁
シャルギエル
サハクィエル
ザミエル 台風
ザアフィディエル 夕立
パラシエル
リウェト 発明
オク 錬金術
シャティエル 沈黙
アフ 怒り
イロウル 恐怖
ゼタル 不死
ゼルエル
テイアイエル 未来
バラキエル 機会
ファヌエル 希望
プリアオウス 欲情
ポテー 忘却
ライラ 受胎
ムミアー 健康
メハビアー 道徳
アウリエル 不妊
アスダイエ 堕胎
ザドキエル 記憶
アカイアー 忍耐
スプグリグエル
トゥビエル
トルクアレト
アタリブ
ラファエル 太陽
ミカエル 水星
アニエル 金星
ガブリエル
サマエル 火星
ザドキエル 木星
アフジエル 土星
ミカエル 日曜日
ガブリエル 月曜日
カマエル 火曜日
ラファエル 水曜日
サキエル 木曜日
アナエル 金曜日
カシエル 土曜日
ガブリエル 1月
バルキエル 2月
マルキディエル 3月
アスモデル 4月
アムビエル 5月
ムリエル 6月
ベルキエル 7月
ハマリエル 8月
ウリエル 9月
バルビエル 10月
アドナキエル 11月
ハナエル 12月
マルシダエル 白羊宮
トゥアル 金牛宮
アンブリエル 双児宮
ムリエル 巨蟹宮
ヴェルケイル 獅子宮
ハマリエル 処女宮
ズリエル 天秤宮
バルキエル 天蠍宮
アドキナエル 人馬宮
ハマエル 天羯宮
アウシエル 宝瓶宮
バルキエル 双魚宮





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