ルドラ言霊の命中率に関する調査
『原典・言霊教典(言霊システム特許文書のこと)』が発見されたことにより、これまで未知だった言霊システムの多くの箇所に光が当たりました。
特許の内容解説については「特許文書翻訳・注解のページ」を設けたのでそちらを見てもらうとして、今回は特許による判明事項のうち、言霊の命中率についてさらに解明していきたいと思います。
特許内には命中率については少しだけ言及があり、さらに一部の言霊の命中率の値が記載されています。その内容から仮説を立て、実測データを取ってその仮説を検証していくことによって、言霊の命中率について大まかに理解することができました。
以下にその内容を記しますが、推論とデータ調査による検証がひたすら続くので、結果をいち早く知りたい方は「今回の調査でわかったこと」に飛んでください。
言霊のパラメータのデータは主に特許に記載のテーブルから取っていますが、いくつかは誤銃連邪さんの「言霊一覧表」から補っています。
目次 |
1.特許文書で判明した事柄
特許文書からわかることは以下の通りである。
- 言霊となる単語にはそれぞれ基本語としての「命中度」と、修飾語として使った際の「命中度」が存在する(特許明細書48項)。
- 修飾語を付加した時の命中度の計算は、一部の例外を除き「(基本語の成分データの命中度+修飾語の修飾データの命中度)/2」である(93項他)。
- いくつかの言霊の基本語としての命中度と、修飾語として使った際の命中度が明らかにされている(図3-5)。
2.命中度パラメータの実際の命中率への影響
差し当たり、「命中度」が実際の命中率に影響しているかどうかを調べる必要がある。ほとんどの言霊は必中なので、おそらく命中率というのは外れる可能性のある即死・消滅言霊に関係する値である。そこで、特許のテーブルと前節(2)の計算式を用いて命中度の異なる言霊を用意してみよう。まず、特許のテーブル(図3-5)から判明している値を以下に示す。
言霊名 | 効果値 | 命中度 | 修飾効果値 | 修飾命中度 |
---|---|---|---|---|
イグ | 10 | 5 | +8 | +4 |
アメ | 55 | 28 | +8 | +4 |
フブキ | 80 | 40 | +8 | +4 |
ハイ | 8 | 4 | +22 | +11 |
デジョン | 10 | 60 | ? | ? |
フラム | ? | ? | +8 | +127 |
「フブキ」の命中が40、単数のデジョン効果のあるもの(おそらく「ティッラー」や「デジョン」)が命中60、「フラム」の修飾語効果が+127である。ここで(2)の計算式を使って、「フラムフブキ」の命中を計算すると、(40+127)/2=83.5となる(端数はおそらく切り捨て)。つまり60のデジョンと、83のフラムフブキで差が出るかどうかを見ればいい。
それを検証するために両者を100回ずつ使って命中率を測ったところ、デジョン=20、フラムフブキ=35であった。使用者はかしこさ38のサーレントと24のレギン、対象はキラービーである(以下も条件同じ)。ここで格好つけてt検定をしてみると、p=0.017で0.05の有意水準をクリアし、有意差があるといえる。(偶然にこの差が出る確率は非常に低いということ)。
この他、テーブルから命中度が推定できる限りの言霊を用意して測ってみた結果が以下である。
言霊名 | 推定命中度 | 命中した数 |
---|---|---|
デジョン | 60 | 20 |
フラムハイ | 65 | 26 |
フラムイグ | 66 | 27 |
フラムアメ | 77 | 31 |
フラムフブキ | 83 | 35 |
100回で十分か自信がなかったが、気味が悪いほど命中度に命中数が比例している。これは確実に命中度が命中率を決定していると言えるだろう。また、変化が顕著なため、この命中度のみが命中率を決定していると言えるかもしれない。
3.通常単語の命中度決定ルール
次に気づくことがある。再度上のそれぞれの単語の効果値と命中度を見てほしい。何か明確なパターンがないだろうか。そう、ほぼすべてのケースで、命中度は効果値の半分なのである。「フブキ」は元の表には88と書いてあるが、実際の効果値は80である。例外はデジョンとフラムのみ。
ここから考えられるのは、ほとんどの言霊で、基本語としての命中度と修飾語としての命中度の双方とも、効果値の半分(端数切り上げ)となっているのではないか、ということである。デジョンとフラムが例外なのは、これらが低い命中度だと、修飾語として使った際にほぼ当たらなくなってしまうからだろう。もしこの仮定が正しければ、たいていの言霊の命中度が推定できることになる。
この検証のため、この仮定が正しいとしていくつか言霊を作ってみる。たとえば「ビト」は効果値110なので、命中度は55だろうと推定できる。その検証結果を以下に示そう。
言霊名 | 推定命中度 | 命中した数 |
---|---|---|
フラムイグ | 66 | 27 |
フラムナニカ | 71 | 28 |
フラムアメ | 77 | 31 |
フラムフブキ | 83 | 35 |
フラムビト | 91 | 41 |
「フラムビト」は「フラムフブキ」より命中が高いのは確かである。修飾語の検証の「フラムナニカ」の方は、最弱の「カ(イグの同義語)」に最強の「ナニ」を足せば差が出るだろうという考えで、計算は(5+推定値28)/2=16、(16+127)/2=71となるが、最後に127を足して2で割るという計算式の構造上、接頭語ではあまり違いが出せなかった。とはいえちょうど範囲内に収まっているので、予想を大きく外れてはいないことは確かである。
4.命中率計算式の推定
次にいよいよ、命中率の計算式の推定に挑戦してみよう。ここまでのデータを使って、それぞれ命中度を命中率で割ると、300、214、221、244、248、237、253といった似た値が得られる。そうなると、実際の命中率の計算は命中度を一定の係数で割ることで出されるのではないか、そしてその係数は256ではないかと想定したくなる。あくまで当て推量だが、256というのはゲームでありがちな数字だし、少なくとも言霊ダメージの魔防計算の際には同じく256で割られているという実例もある。
これを確かめるには、ひたすら試行回数を増やし、想定値に収束するか調べればいい。というわけで「デジョン」と「フラムフブキ」を300回ずつ唱えてみた。
言霊名 | デジョン | フラムフブキ |
---|---|---|
命中度 | 60 | 83 |
試行回数 | 300 | 300 |
予想命中数 | 70 | 97 |
実際の命中数 | 71 | 112 |
算出された係数 | 254 | 222 |
結果はこうである。「デジョン」のケースは実にぴったり予想通りに収まったが、「フラムフブキ」は予想よりだいぶ多く当たっている。もしかしたらその他の要素(使用者のかしこさや相手の魔防)が影響するかもしれないが、少なくともこの2回での条件は同じなので、誤差かフラムフブキの命中度の計算式の誤りくらいしか説明できる要因がない。従って命中率の計算が「命中度/256」で行われているという推定は、実態にかなり近いと考えていいだろう。
5.基本言霊の命中率推定
だいたいの命中率計算式がわかったので、判明していない箇所の命中度も推定してみよう。「フラム」は接頭語としての命中度はテーブルにあるが、単独で使った時の命中度はわかっていない。「デス」や「ラキ」については両方とも不明である。確率が問題になっている以上厳密な値は出せないが、だいたいの命中率だけでもわかれば価値があるはずだ。それぞれ100回試してみた。「算出命中度」は上記の計算式を逆にして、命中率に256をかけた数値である。
言霊名 | 命中した数 | 算出命中度 | 算出修飾語命中度 |
---|---|---|---|
フラム | 14 | 36 | ― |
デス | 15 | 38 | ― |
ラキ | 9 | 23 | ― |
デスイグ | 32 | 82 | +159 |
デスマ | 27 | 70 | +135 |
ラキイグ | 3 | 7 | +9 |
デジョンイグ | 30 | 77 | +149 |
イグとマを基本語にしてデスやラキ、デジョンを修飾語にした場合の命中度の計算式はどれも、(?+5)/2である。この式を解けば、上のように修飾語命中度を出すことができる。
この結果から、それぞれの基本語命中度・修飾語命中度は、デジョンは60・127、フラムは36・127、デスは38・127、ラキは23・9だと推定できる。159や149と出たデスとデジョンの修飾語命中度がこうなるのは、95項に修飾語の効果値は最大が127だと書いてあるからである。つまりこれ以上はありえないということだ。(それにしては算出値が高すぎる、すなわち当たりすぎている気がするので、何か別の要因も関わっているとも思えるが)。
デスもフラムと同様、修飾語にした時に当てやすいよう加算値はマックスのようだ。他方でラキはそうでもない。ラキの修飾語としての効果度は+26なので、半減ルールによって命中度は+13が正解かもしれない。「デスマ(命中度はデスイグと同じで複数対象)」を調べたのは、攻撃言霊のように対象が複数だと効果が減る可能性を調べるためである。デスイグと比べて違いはあるが劇的ではなく誤差の範囲に見えるので、複数の場合の命中率減少は存在しない可能性が高い。
むろん、計算式はそこまで確証はないのでこの時点で命中度を出すのは危険ではある。とはいえ命中数は他と比較可能なので、相対的な位置はわかるだろう。
6.効果固定言霊の検証
特許から明らかになることの1つとして、「デジョン」などのパターン(5)の言霊は「第1の方法」の修飾語の処理が行われないということがある(137項)。第1の方法とは威力やMPの加減算である。これや「デス」などの単語は、頭に何をつけても範囲や効果が変化しないことが知られていた。しかし修飾語を一切無視するかというとそうでもなく、「第2の方法」では修飾が可能で、第2の方法に関わる「修飾許可」のBE、つまり効果値と命中度、MPは変化することになっている。この値に関わる第2の方法での修飾が行われるのは、「修飾実効」がBとなっている単語であり、それは威力固定言霊と呼ばれていた一群の単語だという推測がついている。
わかりやすく言い換えるならば、「デジョン」などは基本的に修飾語による変化は起きないが、「オイ」などの威力固定の修飾語は、その例外かもしれないということである。修飾許可のBには効果値と命中度の双方が含まれているので、118項の内容から、威力が固定されるなら命中度は固定されると推定できる。さらに、「2.通常単語の命中度決定ルール」から命中度の基本値は効果値の半分という推定もできる。「オイ」の場合は効果値20がなので命中度は10となる。また、威力が固定される場合とは異なり、パターン(5)は第2の方法のみでの書き換えなので、通常の命中度のように加算して2で割るという計算は行われない。つまり「オイデジョン」の場合も命中度は10である。「3.命中率計算式の推定」の結果を踏まえると、予測命中率は10/256=3.91%となる。同様に威力固定修飾語を用いて「オイフラム」「アマフラム」も作り、100回試行して命中数を測ってみた。
言霊名 | 命中度 | 推定命中率 | 命中した数 |
---|---|---|---|
デジョン | 60 | 23.4% | 20 |
オイデジョン | 10 | 3.91% | 2 |
フラム | 36(推定) | 14.1% | 14 |
オイフラム | 10 | 3.91% | 3 |
アマフラム | 5 | 1.95% | 0 |
レフランデキ | 60 | 23.4% | 43 |
結果は1つ(レフランデキ)を除いておおむね予想通りである。デジョン・フラムにオイやアマをつけてもMPも範囲も変わらないが、見事に命中率が下がっており、なおかつその値は予想と近い。アマフラムに至っては1回も当たらなかったが。つまり、「デジョン」などは基本的に修飾語を無効化するが、「オイ」などの修飾語による命中率固定は作用するということである。
この調査は、命中率計算式の裏付けの意味ももっている。この場合の命中度は、上記の命中度決定ルールがすべてに適用されていれば、正確に割り出されていることになる。あとは推定命中率と実際の命中数が一致していれば256で割るという計算式は正しいことになるが、結果はほぼ予想通りとなり、命中度と命中率の対応により確証が得られたことになる。
妙な結果になったのが「レフランデキ」だ。これは威力固定言霊でできるだけ高い性能を得ようとしたもので、計算上は(レフランデの基本語効果値120/2=60が命中度のはずなのだが、それを256で割った23.4%という予想からは、誤差とは思えないほど外れた結果が得られた。それどころか、これまでで最大の命中数である。すると考えられるのは、(1)基本語命中度が効果値/2ではない、(2)命中率計算式が間違っているのどちらかだが、その他のデータの裏付けがあるため(2)はありそうにない。そうなると、(1)つまり120/2の計算が違うということになる。ちょうど推定命中率を2倍すると実測値に近づくので、もしかしたらレフランデは命中度が120そのままかもしれない。
これを検証するために同様の威力固定回復言霊である「レフムル(威力80)ラキ」「レフナ(威力40)フラム」も調べてみた。結果はそれぞれ22回、17回命中で、これは威力をそのまま256で割った31.2%および15.6%という数字に近い。するとやはり、回復言霊は命中度半減ルールの例外で、効果値=命中度の可能性が高いといえる。そしてレフランデキの120(46.9%)という命中度は、現状で最大値と言えそうである。
7.今回の調査でわかったこと
特許文書と今回の調査でわかったことをまとめてみよう。
- 言霊となる単語にはそれぞれ基本語としての「命中度」と、修飾語として使った際の「命中度」が存在する。
- 「命中度」は即死・消滅言霊の命中率に影響する。その他の要素の命中率への影響はおそらくない。
- 「命中度」は、基本語の場合も修飾語の場合も、多くが効果値の半分(端数切り上げ)で算出される。「デジョン」や「フラム」および回復言霊など例外もある。
- 修飾語を付加した時の命中度の計算は、一部の例外(以下の6)を除いて「(基本語の成分データの命中度+修飾語の修飾データの命中度)/2」である。
- 実際の命中率の計算式は、おそらく「言霊の命中度/256」である。
- あらゆる修飾語の影響を受けない即死・消滅言霊だが、威力固定の修飾語効果をもつ単語を修飾語にした際のみ、威力固定と同じ現象により命中度が固定される。固定後の命中度は、その修飾語の基本語としての命中度そのままである。
という感じである。次に、今回明らかになった命中度の推定値をまとめよう。赤字はすでに判明していた箇所である。
言霊名 | 命中度 | 命中率 | 修飾語命中度 |
---|---|---|---|
デジョン | 60 | 23.4% | +127 |
フラム | 36 | 14.1% | +127 |
デス | 38 | 14.8% | +127 |
ラキ | 23 | 9.0% | +9 |
攻撃言霊全般 | 効果値の半分 | なし | 効果値の半分 |
8.調査で得られたデータ一覧
さらに、何か別の結論が導けるかもしれないので、検討用に今回調べた全データを以下に記載する。数が表記されていない限り、100回中何回当たったかの数値である。
言霊名 | 命中数 | 言霊名 | 命中数 |
---|---|---|---|
デジョン | 20 | デジョン (300) | 71 |
フラム | 14 | フラムフブキ | 35 |
フラムハイ | 26 | フラムフブキ (300) | 112 |
フラムイグ | 27 | フラムアメ | 31 |
フラムビト | 41 | フラムナニカ | 28 |
デス | 15 | ラキ | 9 |
デスイグ | 32 | ラキイグ | 3 |
デジョンイグ | 30 | デスマ | 27 |
オイデジョン | 2 | オイフラム | 3 |
アマフラム | 0 | レフランデキ | 43 |
レフナフラム | 17 | レフムルラキ | 22 |