続・ゲーム業界の現状はどうなっているか

Gayaline

前回はゲーム業界の市場規模に関する統計資料を分析してみましたが、まだまだ気になる点はあったので引き続き調べてみることにしました。

今回は海外の状況と、2018年最新の情報を取り扱います。


 前回の記事では、ゲーム白書を参照して「ゲーム業界の基礎統計データ」として調べたものから、どのような傾向などがわかるかについて考えてみた。

あれだけでもゲーム業界の変化について多くのことがわかったと思われるが、白書のデータはまだまだあり、調べたいこともさらに存在するので、追加調査を行ったのが以下の結果である。

北米・欧州の家庭用ゲーム市場規模の変化

 まず気になったのが、日本のゲーム業界は海外と比べてどうかということである。近年は洋ゲーはおろか中国をはじめとするアジア圏のゲームも入ってくるようになり、ますますゲーム業界は多様になっているように感じるが、果たして海の向こうの状況はどのようになっているだろうか。ひとまず長年にわたってデータの存在する北米と欧州を見てみよう。

 データが存在すると言っても、国内のものに比べると海外の情報は断片的で、長期的にまとめられているものがなく、なおかつある数字がどこまでの範囲を対象にしているのか(PCは入るのか、オンラインは含むのかなど)が非常にわかりづらい。それでも、『ファミ通ゲーム白書』をひたすら調べることによって、どうにか完成したのが「欧米の家庭用ゲーム市場規模」の項である。ここに記したデータをグラフ化して見てみよう。

欧米の家庭用ゲーム市場規模

家庭用ゲームソフトに絞ったのは、ハードの売り上げ情報が必ずしも記載されていないからである。またオンラインのものもほぼ記載されていないので、これはパッケージソフトの売り上げに限ったものに思われる。

 また書いてあるのが米国だったり北米(米国とカナダ)だったり、欧州全体情報がある年だけ欠けていたりしたので、面倒だがすべての国のデータを控えて足し合わせる作業を挟んだ。あー大変だった。

 さて、肝心のデータだが、北米も欧州もソフトの売り上げは日本を常に上回っている。人口の多い欧州合計は当然かもしれないが、北米もそうである。しかし人口やGDPを考えると北米が日本の2倍程度というのは妥当な範囲なので、特に1人あたりの支出が多いわけではない。

 傾向としては、両地域ともに2007年以降に大幅上昇したのが特徴である。どちらもピークの2008年には数年前の1.5倍近くに達しており、これは日本の上昇幅をはるかに上回っている。この時期はWii、PS3、XBOX360が次々と出たタイミングであり、なおかつこれらのハードは以前のものと比べて海外で売れた割合が大きいので(歴代ゲーム機の発売年と売り上げの一覧参照)、この3ハードが大きく伸びたことで日本市場に差をつけたと見ていいだろう。

 そうした急上昇も、2008年を頂点に下降へと移り、以降は日本と同様に家庭用ゲーム市場は基本的に縮小の一途である。しかしよく見てほしい。確かに北米は2013年には10年前の水準に逆戻りしたが、これでも日本の減少に比べたらマシなのである。前回も述べたが日本の現状はというとスーファミ時代並みである。つまり、家庭用ゲーム市場の縮小幅は日本のほうが欧米より大きいといえる。この原因はおそらくスマートフォンゲームの日本での大流行にあるのだろうが、欧米と比べても日本の家庭用ゲームはピンチなのである。

 残念なお知らせはもう一つある。日本の家庭用ゲームの世界規模の影響力が減退しているということだ。それを理解しやすくするために、もう一つのグラフを見てみよう。

家庭用ソフト市場規模+日本の占める割合

ここに折れ線グラフで示したのは北米・欧州・日本の合計のうち日本の占める割合である。この数値は2007年から急降下し、2012年頃には持ち直すもののその後また低下している。過去のハードの日本・全世界の売り上げ比(およそSFCで1:3、PSで1:5に対し、PS3等は1:8)を見る限り、2003年以前にはさらにこの値は高かったことが予想されるので、それも考えると急激な低下であろう。これはポジティブに見ればゲームが世界に広がったと言えるが、その後の成長に関しては日本は今ひとつということではないだろうか。

 いずれにせよ、海外と比べるとなおのこと、日本の家庭用ゲームは危機的状況なのではないかと思える。

最新の市場規模データ

 もう一つ多くの人が気になっているであろうことが最新の状況である。2019年のファミ通ゲーム白書をまだ見れていないため2018年のデータがなかったが、その点は『2019ゲーム産業白書』で補うことができた。ひとまず3年分の市場規模を記してみよう。

単位:億円 2016年 2017年 2018年
新品ソフト 1,937 1,999 1,893
新品ハード 1,217 1,964 1,773
中古ソフト 725 674 575
中古ハード 263 250 234

これをグラフにするとこのようになる。

2016-2018年の国内家庭用ゲーム市場規模

 2017年に比べてすべてが減少しているが、Switch発売前の前年と比べても2018年はハードしか上回っていない。2019年前半を見る限り、発売タイトル数はSwitch、PS4ともに2018年とさほど変わらなそうなので、2019年に盛り返せるかどうかは不透明である。少なくとも、Switchのあれほどのブームがあっても趨勢は劇的には変わらなかったということだろう。

では一方でスマートフォンゲームはどうだろうか。最新のファミ通ゲーム白書のプレスリリースから2018年の数字を読み取ることができるので、以前と合わせて記載してみよう。

単位:億円 2016年 2017年 2018年
家庭用ゲーム 3,440 4,413 4,343
スマートフォン 9,690 10,580 11,660
PC 696 693 701

こちらもグラフ化してみよう。

2016-2018年の国内ゲーム市場規模

見ての通り、前年に1兆円の大台に乗ったスマートフォンゲーム市場は2018年にもさらに伸びている。なおかつ、その上昇幅は2015年以降では最大である。ということは依然としてスマートフォンゲームには成長の兆しが見えているといえるだろう。ゲーム市場全体も、スマートフォンゲームだけで押し上げている状況である。


 というわけで、わざわざまとめる必要すらないが、どのように見ても国内家庭用ゲームは危機的状況、他方でスマートフォンゲームは順調という分析である。何よりこの事実を受け止める必要があるだろう。

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