コブラジョジョの「仕掛け人」へのインタビュー

Gayaline

 前回前々回とキャラゲーについていろいろ調べていて、ふと手元の資料を見たら実にちょうどいいインタビューがありました。  それは、問題作として名高いコブラチーム制作の「ジョジョの奇妙な冒険(SFC)」の開発者インタビューです。おまけにここでインタビューされている人は、それ以前の数々のキャラゲーに関わっていたということもわかりました。  あのとんでもないゲームは何を意図して作ったのか?全国十万人のコブラジョジョファン[要出典]待望の新事実が今、明らかになります。


 今回紹介するのは、Vジャンプ1992年12月30日号(特別編集増刊)である。158-163ページにかけて、SFCの「ジョジョの奇妙な冒険」の開発責任者、中里尚義氏のインタビューが載っている。4節に分かれている内容を、要約と引用によって解説してみよう。

ジョジョだけの未体験3大システム!!(p.160)

要約:本作のウリは、シネスコサイズ画面、バイオリズムを使ったパラメーター設定、状況に合わせて変化するキャラの表情の3つ。そしてその背景には一つのテーマがあるという。

そのテーマは、題材にしているキャラをいかに本物のイメージ通りゲーム中で個性づけをするかということ。

これがどう先ほどの3つに関係するかというと、ジョジョのキャラクターは表情豊かなので、表情がわかるようキャラを大きくするためにシネスコサイズ画面にした、ジョジョでは心理的に相手を追い詰める戦い方をするので、「プレイヤーに心理的な圧迫を感じながらスリルある戦いをしてもらおうと」バイオリズムという設定を作ったらしい。

コメント:実際のゲーム内容を考えると、まさか原作を再現するつもりがあったんだ・・・というところでびっくりするかもしれない。しかしよく考えてみれば、ここで話しているのはグラフィックについてであって、ストーリーのことはない。シネスコ画面というのはつまりドラクエのような見下ろし視点のRPGにしないということであり、この工夫は効果的に発揮され迫力のあるグラフィックとなっている。しかし、心理戦の多い原作を生かすためにバイオリズムを入れたというのはよくわからない。これは攻撃力などのパラメーターが変動するもので、アイテムで調整できたりトイレで上昇したりするが、戦闘中にどうこうできるものではない。むしろ心理戦という要素は戦闘中の「話す」「調べる」で表現されているように思えるが、システムとして生かされているとは言いがたいし、悪口を言って戦意喪失させるというのはちっとも原作通りではないだろう。

アニメーションの世界へプレイヤーも入り込めるゲーム!!(p.161)

要約:シネスコサイズ画面を採用して、映画的な表現ができるようになった。カメラの視点を変えてさらにダイナミックな表現を入れたかったが実現しなかった。一方でバトルシーンのウリは、

このゲームのメインは、承太郎たちなので、彼らがどうやって敵と戦っているのか見ることができる点ですね。敵キャラからの攻撃だけでなく、敵キャラをやっつける承太郎たちの映像もしっかりフォローしているんですよ。長い間キャラクターゲームを作り続けたこだわりですね

コメント:本作のグラフィック面に関しては、意図した通りに表現できているように思われる。中里氏の言う通り、味方側のグラフィックが映るというのはこの視点(ドラクエタイプ)のRPGの場合画期的なことで、ドラクエでも実現したのは相当後の話である。だが戦闘中の問題はここではなく、触れられていない部分つまりボイスにあるのだが。

物語を知っていても、知らなくても楽しめるソフト!!(p.162)

 原作ストーリーの反映させ方について、重要な箇所なのでそのまま表記。

(原作との兼ね合いは)いつもキャラクターものをやるときジレンマとして残ります。ようするにゲームとして遊べるものを重視するのか、ジョジョというキャラが大好きなファンを裏切らないものにするのか、2通りありますよね。ゲームを追ってしまうと、ジョジョのキャラを使う意味があるのかと問いかけたくなるような作品になってしまう。以前ありましたよね、どんなキャラを使っても結果的にピョンピョン跳ねるだけのマリオ崩れみたいなやつ。逆に、ファン好みに作ったとします。すると少しでも本編と違う設定にしてしまうと、ファンの皆さんは、その時点で混乱してしまうんです。困ったものですねぇ。

ではこのどちらを選んだのかと問われて、

確かに本編の物語を知っている人のほうが、様々なイベントをこなしていくうえでいくぶんスムーズに進めることができるかもしれないけど、そこはまったく物語を知らない人でも無理なくテンポよくイベントをこなしていけるよう工夫しています。もちろん、本編に沿って物語の構成はしているものの、たまに敵キャラの出現場所が異なるなど、物語を知っている人にも新鮮な作りにしてあります。

コメント:ここにすべての答えがある。彼の述べていることに偽りはない。下線部に注目してほしい。「テンポよくイベントをこなしていけるように」飛行機内でデス13とハイプリエステスが襲ってくるのであり、ポルナレフが本屋にいるのも「たまに敵キャラの出現場所が異なる」と言っている通りである。要するに、あのストーリーは原作を適度に圧縮した結果ということである。それを適度と思うかどうかはともかく。

キャラクターゲームの鬼才が描く今後の展望っ!!(p.163)

 ここの内容が何より衝撃的だった。中里氏がこれまでの経歴を語っているのだが、その過程で数々のキャラゲーに関わっているのである。要約しよう。

要約:中里氏はD&Dというゲーム会社にグラフィックデザイナーとして入社した。そこは人手不足で、氏はグラフィックに限らず企画やプロデュース、営業まで行い、年間30本のゲームを一人で作っていた。その後ファミコンソフト制作に携わったが、最初の作品が「オバケのQ太郎ワンワンパニック」。その後バンダイで15~16本のキャラゲーに関わった。その際も一人でほとんどすべての職種をこなしていた。 関わったタイトルは、ドラゴンボールシリーズのすべて、タルるート、聖闘士星矢、ファミコンジャンプなど。その後バンダイから離れてコブラチームを作り、最初に制作したのがこのジョジョである。

コメント:まず注目すべきは、ここで「キャラクターゲーム」という言葉が使われている点である。キャラゲーという概念がどのくらい広まっているかは不明だったが、1992年の時点で業界人がすでにこの言葉を使っているところを見ると、結構昔からキャラゲーの概念は存在していたようだ。

その内容からは、中里氏はバンダイの数多くのキャラゲーに関わっていたことがわかる。ある意味、そのバンダイキャラゲーの集大成がこのコブラジョジョだということになるだろう。ただ、それらのゲームで氏がどの部分に関わっていたかは定かではない。確かなのは、このコブラジョジョには相当程度関与しているということである。本作のスタッフロールにはゲームデザイナーの肩書で名前が載っている。 中里氏の以前の仕事というのも気になるのでざっとチェックしてみたが、話に上った中で「ドラゴンボール大魔王復活」と「まじかる☆タルるートくん FANTASTIC WORLD!!」、ファミコンジャンプ1・2にはスタッフロールはあるが名前なし、「まじかる☆タルるートくん2まほうだいぼうけん」はスタッフロールがほぼ偽名なので判別できず、その他はスタッフロール自体がなかった。発見できたのが「ドラゴンボールZ 強襲!サイヤ人」と「ドラゴンボールZII 激神フリーザ」および「ドラゴンボールZ 超サイヤ伝説」で、「DESIGN OFFICE」に「D&D CORP.」と記されていた。本人が言っている以上嘘ということはないだろうが、名前を発見できないのは気がかりである。

全体の感想

 このインタビューから、中里氏がいろんな意図をこめてコブラジョジョを作っていたことがわかった。そしてその意図は、グラフィック面では効果的に実現していたが、システム面では今一つであり、ストーリー面はご覧の有様という感じである。この様子を見ると、グラフィックデザインの専門家が他も担当するのが間違いだったのではないかという気もしてくる。何にせよ、これでコブラジョジョの謎が一つ明かされたことは間違いないだろう。  キャラゲーのプロという中里氏の経歴は興味深いので、もう少し追加調査を考えている。いくつか資料も発見できているので、近い内にお見せしよう。

コメント

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