面白いキャラゲーの条件とは

Gayaline

 新年最初の記事は、一般に出来の悪い作品が多いとみなされている「キャラゲー」が面白くなるための条件とは何か、そしてキャラゲー特有の魅力とは何かについて考えていきたいと思います。この文章に先立って、「ファミコンのキャラゲー最強決定戦」で数々の面白いキャラゲーを対決させた結果、これらの疑問に対する答えもなんとなくわかってきたので、それを踏まえての内容です。

キャラゲーの定義の難しさ

 まずはキャラゲーとは何かを決めなければならない。上記のトーナメントでは、キャラゲーは「原作となる作品が存在するゲーム」と定義した。しかし定義というのはどんな場合も明確には切り分けられないもので、これだと小説を原作とする初代女神転生も入ってしまう。同じく原作小説のある西村京太郎ブルートレイン殺人事件なども一般のキャラゲーのイメージからは外れるだろう。また逆に所さんのまもるもせめるもやさんまの名探偵など芸能人・有名人が登場するゲームはキャラゲーっぽいが原作はない。だがこれを入れると戦国武将の出てくる信長の野望はどうなんだという話になる。

 この問題は「漫画・アニメ・映画を原作にしたゲーム」としてしまえば解決するように思われるが、そううまくはいかない。メディアの中で小説だけ排除するのはおかしいし、スクウェアのトムソーヤなどは小説が元なのかアニメなのか微妙である。さらにDSでよくあったテレビ番組を再現するものはキャラゲーではないのかとも思える。結局のところキャラゲーという言葉があいまいなのがいけないのだが、わかりやすさのためには使わないわけにはいかないので、やはりキャラゲーは「原作となる作品が存在するゲーム」、ただしイメージにそぐわないものあり、という形でやるしかないだろう。

面白いキャラゲーの基準は?

 最強決定戦では、上位に選ばれるべきキャラゲーの基準として、「原作を十分に踏まえていること」「ゲームとして面白いこと」を設定した。これに異論はないだろう。原作があるのだからできるだけ正確に参照していたほうがいいし、ゲームとして面白いというのは必須のことである。しかし、この両者のバランスどうするのが理想かはというと一概にはいえない。たとえばソルブレインはゲームとしてはとても面白い。しかしその実態は原作とは関係ないゲーム「シャッターハンド」のキャラを差し替えたものであり、主要キャラがほとんど登場しない上に、出てくる敵も原作を踏まえてはいない。その逆もまた同様である。AKIRAは映画のシーンの再現度はかなりのものだが、映画に沿った行動以外とることが許されないという極端なもので、ゲームとしてはちっとも面白くない。

 このように、面白いキャラゲーといっても千差万別なので、次に対戦の結果わかったことを踏まえて、もう少し細かくキャラゲーの魅力をタイプ別に分類してみよう。

キャラゲーの魅力3要素

 キャラゲーの魅力として挙げられるものには、どうやら以下の3つがあるのではないかと思う。

  1. 原作再現 これは先ほど述べた通り、原作の世界観やストーリーを踏まえた上で、ゲームになっているという要素である。たとえばアクションのドラえもんであれば、舞台が大長編3作で、アイテムがひみつ道具になっている、などだ。普通のゲームの枠部分に原作を取り入れたとも言える。
  2. if 原作再現にストーリーの自由度を加えたもので、「ここでこうしていたらどうなったんだろう」というプレイヤーの願いをかなえてくれるというゲームならではの要素だ。わかりやすい例は、原作で死亡するキャラがスパロボでは生存できた、などである。
  3. クロスオーバー クロスオーバーは複数の原作を混ぜ合わせて、単なる原作再現ではない独特の世界観を作り上げるというものである。スパロボは言うまでもなく、その前身といえるコンパチヒーローシリーズからすでにこの要素が登場し、オリジナル敵と戦ったりしている。

見ての通り、後の2要素にはどちらもスパロボがからんでいる。ゲームとしてはそこそこにもかかわらず第2次スパロボを敗退させ難かったのもこのためで、他のキャラゲーが原作再現、あるいは「ガワを原作通りにした普通のゲーム」に留まっている一方で、この2要素を発展させたスパロボの功績はあまりにも大きいと考えたためだ。

原作との関係性の3種類

 続いて、原作再現の度合いに従ってキャラゲーを分類してみよう。原作に忠実になものとそうでないもの以外に、別のパターンも存在している。

  1. 原作ストーリーに忠実型 AKIRAをはじめとしてとにかくストーリーを再現することを考えたものである。しかしその結果ゲーム内容が犠牲になりやすいが、キャプテン翼のようにシステムがしっかりしていれば跳ね返せるものもある。
  2. 原作世界観+オリジナルストーリー型 この代表はギガゾンビの逆襲である。単に原作ストーリーをなぞるだけではつまらないので、元の世界観を活かしつつ新しい冒険を作るものだ。というより大長編ドラえもん自体がまさにこの構造であり、ドラえもんの十八番といえる。
  3. ガワだけ借りた型 言い方はひどいが、面白いキャラゲーにはこの種類が多い。特にカプコンが得意で、原作とは特に関係なく天下統一までいく天地を喰らうがよい例である。これなんかはむしろ、「グラフィックが本宮ひろ志の三国志RPG」と言ったほうが正しいくらいだ。アーケードの天地を喰らうも同じで、純粋に面白いゲーム+αという形になるので当然クオリティは満足いくものになる。

最強のキャラゲーメーカーは?

 カプコンの話が出たが、メーカー単位で考えてみるとどこが面白いキャラゲーが多いのだろうか。今回エントリーの16作品と、次点の18作品(ギャリバン除く)も加えてカウントしてみよう。

メーカー名 ベスト16 全体
カプコン 4 5
バンプレスト 1 5
バンダイ 2 4
コナミ 2 3
サン電子 1 2
タイトー 1 2
アスミック 0 2
ハドソン 1 1
パック・イン・ビデオ 1 1
エンジェル 1 1
エポック社 1 1
テクモ 1 1
HAL研究所 0 1
ビクター音楽産業 0 1
ビック東海 0 1
ポニーキャニオン 0 1
ナムコ 0 1
スクウェア 0 1

見ての通り、本戦エントリー作品の4分の1を占めるカプコンがトップ。左右の差が大きいバンダイ(エンジェルも系列なので+1)とバンプレストはキャラゲーの数自体が多いので、数撃ちゃ当たる感がある。次いでこの時期出すソフトにハズレ無しのコナミ。サンソフトが頑張っているのにも注目。ナムコが少ないのは意外だが、キャラゲーはこれとルパン三世、デビルマンくらいである。(さんまの名探偵とチャイルズクエストはともかく)

 大会の結果を見てもわかるように、少なくともこの時期の最強のキャラゲーメーカーはカプコンだと言って間違いないだろう。とにかくこの会社、適度に原作要素を出しつついいゲームを作るのがうまい。また原作となるタイトルの選び方もポイントで、決してヒット作ばかりではないことがわかるだろう。もしかしたら逆に、作りたいゲームにふさわしい原作を選んでいるのかもしれない。

これ以外にも、アーケードの天地を喰らうやエイリアンvsプレデター、パニッシャーにキャディラックスとカプコンのキャラゲー名作は山ほどある。しかしなまじ原作があるせいで、著作権の関係で移植されなかったりとデメリットもあるんだけど。

面白いキャラゲーの条件は?

 以上の分析を踏まえて、結論としてキャラゲーが面白くなるための五箇条を挙げてみよう。

  1. ストーリーの再現にこだわりすぎないこと。原作をただなぞるだけではゲームにする意味がない。if要素を入れるか、原作を踏まえたオリジナルストーリーにするべき。
  2. 複数の原作を混ぜ合わせて、まったく新しい世界を作ること。単なる原作再現ではない味わいが生まれるだろう。
  3. メジャーな原作に飛びつかないこと。むしろゲームに合った原作をチョイスするくらいがいい。
  4. 原作にふさわしいゲームシステムを考案すること。キャプテン翼がいい例で、戦略性を入れつつ、原作のビジュアルを堪能できるようになっている。
  5. (あるいは)単純に面白いゲームに原作のガワをかぶせること。相乗効果で人気も出るが、オリジナルと比べて不利な点も。

1-4はキャラゲー独特の良さが生まれるが、5に関しては普通のゲームにプラスされるものなのでちょっと特殊かもしれない。いずれにせよこうした要素がキャラゲーをより良くすることは間違いないだろう。キャラゲーの評判を落とさないためにも、こうした点を考慮してゲームを制作してほしいものである。

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