未発売ゲーム紹介:猛虎伝説'95 阪神タイガース

Gayaline

サテラビュー通信に載っていた未発売ゲーム「猛虎伝説’95 阪神タイガース」について。

猛虎伝説’95 阪神タイガースとは

サテラビュー、正確に言うとサテラビューという機器で受信できる放送「スーパーファミコンアワー」では、「秘伝ソフト」という名称で発売前のソフトを遊ぶことができた。それをまとめようと以前体験版ゲームの一覧を作った際に、結局未発売となったゲームが2本含まれていることがわかった。その1つが、以下に紹介する「猛虎伝説’95 阪神タイガース(エンジェル)」である。ちなみにもう一方のクーリースカンクは後にPSで同タイトルのものが発売されている。

サテラビュー通信にはその体験版の紹介が載っている。

サテラビュー通信 1995年8月号 通巻2号 p.7

これを見ると、通常の野球ゲームでありながら、阪神のチームだけを年代別に10チームも追加した仕様だったようだ。次号にはさらに詳しい記事が見られる。

サテラビュー通信 1995年9月号 通巻3号 p.8

ここには詳しいゲームシステムの解説もあるので見てみよう。見た目は完全にファミスタ型で、真新しい点と言えば上述の歴代阪神10チーム収録というのと、選手紹介に実写取り込みが使用されているところくらいだろうか。

何より傑作なのは、ファミスタでおなじみの試合終了後のスポーツ誌画面に阪神ファン御用達の「デイリースポーツ」が使用されている点だ。見た目はそこまで特徴的ではないが(勝ってるのに「ー」が虎の尻尾になってないし)、果たして他チームでプレイして阪神を倒した場合はどうなったのだろうか。疑問は尽きない。

その他わかることとして、選手名の右に色のついた球体があるのはおそらく調子を表しており、選手のパラメータはパワー、ミート、チャンス、守備、走力、スタミナの6種。あとは一応他球団も収録されていて、「金村」が中日ドラゴンズにいるので95年次のデータのようだ。

なぜ発売中止に?

資料からはこれ以上の情報は得られないので、なぜ発売中止になったのかの真実を知ることはできない。しかし、いくつか思い当たることはある。

一見して言えるのは、このゲームはファミスタに似すぎてはいないかということである。投球画面ではほぼすべての情報配置がファミスタと同じ。打った時のスモール画面も同じ。試合終了後のスポーツ新聞のアイデアも同じ。加えて、選手の調子マークや「ミート」など前年にシリーズが開始したばかりのパワプロに似ているところもある。

断っておくが、この時期の野球ゲームは何でもかんでもこの画面形式だったわけではない。燃えプロにパワーリーグ、スーパーリアルベースボールに古田敦也のシミュレーションプロ野球など、大御所たるファミスタと差異化を計ろうとした野球ゲームは数多くあった。それらと比べても、本作はファミスタそのまんまである。従って、ナムコの側から何らかの苦情が来たというのが考えられる中止の理由の1つといえる(その他、デイリーから許可を取り損なったという可能性も無きにしもあらず)。

メーカーについてもチェックしてみよう。発売元のエンジェルはバンダイと関係があるらしく、これまでにガンダムを始めとするキャラゲーを多数出している。同時期にも「ノーマーク爆牌党」「美少女戦士セーラームーン~Another Story~」の体験版配信を行っており、その後もソフト発売があるなど、会社自体がどうにかなった様子はない。

ネット上の情報を見てみると、5月発売予定と書いてあり、この記事の7月末段階では発売日未定となっているので、何らかのトラブルが起きていたことは予想できる。

体験版は配信されたのか?

発売日の変遷を追っていく過程で、新たな疑惑が生まれた。このソフトの体験版の配信は本当になされたのかという疑問である。

7月の段階ではファミマガでもサテラビュー通信でも、配信がされるというアナウンスは確認できる。そして後者の2号によると7月24~30日配信だが、この週の番組表に阪神タイガースの名前はない。

3号の情報では配信は8月中となっているが、より情報が正確なファミ通の番組表にも名前が見当たらない。「新作(予定)」と書いてあるところにこれが入らなければ、であるが。

となると結局、このゲームは体験版も配信されなかった可能性が高く、当初想定していた「体験版のみ存在するゲーム」ではなかったのかもしれない。

内容が怪しいとはいえ、デイリーの件から言っても出ていればある種盛り上がったことだろうから、本作が闇に葬られたのはもったいないことである。

6/29追記

ブログシステム移行の余波で消えてしまったが、サテラーの方のコメントにより、「猛虎伝説’95 阪神タイガース」の体験版は配信されなかったことがわかった。その証拠に、サテラビュー通信11号 p.15の配信済みソフトの一覧にその名前がない(ついでにセーラームーンもない)。これはつまり配信中止のケースもあるということであり、本当に配信が行われたのかどうか、番組表を見ながら細かくチェックしなければいけないようだ。保存のためのコメント全文は以下の通り。

はじめまして。 見やすい、よくまとまったホームページに感動しました。

私は当時のサテラーの一人ですが、このゲームをやった記憶が無いです。 美少女戦士セーラームーンについては、配信が中止されました。 阪神はもしかしたら、ひっそりと配信されたのかもしれませんが、サテ通11号の8ページを参照すると、オンエアリストとスポーツが少なかった旨が書かれていますので、 体験版は配信されなかった可能性が高いです。

7/1さらに追記

徳間書店刊の書籍『幻の未発売ゲームを追え!』に、本作に関する情報が掲載されている。

ただし上で紹介した以上の情報はほぼなく、発売中止の経緯もわからない。新しいことといえば、ここに載っているファミマガ1995年2月24日号No.4の記事から、「VS COM」「VS 2P」「ペナントレース」「阪神オールスター」「トレーニング」「観戦」のゲームモードの存在くらい。

2019/8/3さらにさらに追記

元デバッガーの方の書き込みにより、開発がアークシステムワークスであることがわかった。以下がそのコメント全文。

懐かしいですね。
このゲーム完成はしていました。
実際の開発はアークシステムワークスです。
セーラームーンもアークです。

アークシステムワークスは上記の「美少女戦士セーラームーン~Another Story~」と同時に、阪神タイガースの制作も担当していたようだ。この作品の制作が同社だということはおそらくこれまで知られていなかったので、非常に貴重な情報である。書き込んでくださった方に感謝したい。

コメント

「名前」をクリックし「ゲストとして投稿する」にチェックすると登録せずにコメントができます。