ゲーム統計資料ガイド
〜ゲーム白書からどんなことがわかるか〜


ゲームやハードの売り上げ、ゲーム業界全般に関する話というのは、とかく論争になりやすいものです。
実際、ネットを見ればあれは勝ってそれは負けただの、衰退しただのしてないだの不毛な言い争いが見受けられます。
そうした論争が起こる原因は、そもそも誰も正確な市場のデータを把握していないことにあります。
誰もが部分的な売り上げや、自分の感覚のみに基づいて話しているために、大いに偏見が入った意見ばかりになってしまうというわけです。

そんな混乱を避け、ゲーム業界の状況を正しく理解するためには確実な情報源に頼る必要があります。そこで今回紹介したいのが、ゲームの統計情報を掲載している「ゲーム白書」です。
この系列の資料は本来ゲーム制作会社向けで、値段もとんでもなく高いのですが、いくつか入手して内容を把握することができたので、
その情報をもとに、ゲーム白書にはどんなことが載っていて、何の役に立つのかということをお伝えします。
ゲーム業界についてのちゃんとしたデータを知りたいと思っている人、ゲーム研究のために統計資料を使いたい人は必見です。

ゲーム統計資料については、国会図書館の調べ方案内や、
『デジタルゲーム学研究』第3号の『デジタルコンテンツ白書』の書評でも案内がなされています。
その多くの内容は本ページに含んでいますが、同時に参照するといいでしょう。
コンテンツ目次
ゲーム白書の種類と内容について
用途別資料案内

ゲーム白書の種類と内容について


まずは、「ゲーム白書」と言われるものには実際にどんなものがあるのか、その種類と中身について簡単に解説しよう。
ゲーム業界の統計情報が載った資料は2種類ある。ゲームを専門的に扱ったものと、そうでないものだ。
このうち、ゲーム専門の資料の方は当然内容が詳しいわけだが、現状ではコンピュータエンターテインメント協会刊の『CESAゲーム白書』と、メディアクリエイト刊の『ゲーム産業白書』、エンターブレイン(カドカワ)刊の『ファミ通ゲーム白書』の3つが存在しており、毎年刊行されている。それぞれの有するデータの内容は微妙に異なるが、これらはどれも、ゲーム業界の情報を余すところなく掲載している。
一方でゲーム専門でない白書には、デジタルコンテンツ協会刊『デジタルコンテンツ白書』、日本生産性本部刊『レジャー白書』などがある。これらの白書は、大きなカテゴリーの中の1つとして、映画やアニメなどの業界と一緒にゲーム業界の情報を取り扱っている。そのため隣接する業界との比較を行いたいならこの系列の白書が向いているが、ゲーム業界のみを知りたい場合はゲーム専門の白書がいいだろう。今回の目的はゲームの情報のみなので、以下ではゲーム専門の白書のみを扱う。

さて、気になる3種の白書の入手方法だが、これらは明らかに「業務用」つまりゲーム業界の人間や制作会社のマーケティング向けなので、お値段がとんでもなく高い。ファミ通とメディアクリエイトの白書はどちらも定価3万円超えである。借りて読むにしても、国会図書館クラスか一部の大学図書館くらいにしかない。
この入手しづらさは致し方ないのだが、ここではその内容をできるだけ詳しく解説して、ピンポイントでの調査に役立てられるようにしたい。また、『ゲーム産業白書』に関しては『テレビゲーム流通白書』『テレビゲーム産業白書』から名前が移り変わっているので、その点にも注意しよう。

以上の白書に関する概要をまとめると次のようになる。
ゲーム専門型白書総合型白書
タイトルCESAゲーム白書ゲーム産業白書
(テレビゲーム産業白書
テレビゲーム流通白書)
ファミ通ゲーム白書デジタルコンテンツ白書レジャー白書
刊行元コンピュータエンターテインメント協会メディアクリエイトエンターブレイン(カドカワ)デジタルコンテンツ協会日本生産性本部
刊行開始年1997〜1998〜2005〜2001〜1977〜

用途別資料案内


それぞれの白書が何を載せているのかという形で解説に入ることもできるが、今回は「白書で何がわかるのか」を主眼に据えた案内なので、調べたいことのトピックごとにどの白書が適切で、そこには何が載っているのかということをお伝えしよう。
これで知りたいトピックにふさわしい資料を選ぶことが可能になるはずである。
以下の情報はなるべく複数年の白書を参照して調べたものだが、すべてを網羅したわけではないので、該当するトピックがない年もありえることを断っておく。

個々の新品ゲームソフトの売り上げを調べたい

この目的で白書を頼ることは妥当である。なぜなら、後から入手しづらいゲーム雑誌を除けば、ソフトの売り上げを載せているほぼ唯一の書籍がゲーム白書だからだ。
ソフトの売り上げに関しては、『ゲーム産業白書』か『ファミ通ゲーム白書』のソフト売り上げランキングが役に立つ。両者は、それぞれ独自の調査方法で売り上げを算出しており、上位から数百件が掲載されている。
ここで注意すべきことがいくつかある。まず、白書に載っているのは前年1年分のデータだということだ。つまり、2005年発売のソフトの売り上げを調べたかったら、2006年の白書を見る必要がある。同時に、売り上げのカウントは1年単位で1月から12月までなので、ソフトの発売時期によって計測期間に差が出てしまうことに注意。この差を減らすためには、さらに翌年のデータを見て、2年分の累計販売数から売り上げを推定するべきだろう。
また、データの性質上、ランク外のソフトの売り上げはわからないので、これは別の手段を探す必要がある。近年徐々にランキングの総数が増えているので、ランク外作品は減りつつあるのだが。
以下に、それぞれの白書に何年の売り上げが何位まで載っているのかをまとめてみよう。
ゲーム産業
白書
ファミ通ゲーム
白書
1996〜
1998
なし100位まで
1999200位まで300位まで
2000〜
2003
500位まで300位まで
2004〜
2008
500位まで500位まで
2009〜
2015
1000位まで500位まで
備考初週販売本数・
初週消化率
(2005年から)
ファミ通最高順位・登場回数・
クロスレビュー点数・開発会社・
ファミ通掲載号数
(2001年から)
見ての通り、両者で年ごとに扱う本数が異なっているほか、途中から項目数が増加している。産業白書の初週販売本数と消化率は、売れ行きの推移を知るために役立つだろうし、
ファミ通白書の開発会社情報や、ファミ通にその作品の記事が掲載された号の情報も有用である。
なお、『ファミ通ゲーム白書』は2005年からの刊行なのにそれ以前のデータもあるのは、『ファミ通ゲーム白書2005』に1996年から2004年までのデータがまとめて記載されているためである。つまりこの号を調べれば9年分の売り上げデータが一挙に得られるということなので、これだけどうにかして入手すれば、後々まで役に立つだろう。

ゲームハードの売り上げを調べたい

各ハードの年ごとの売り上げに関しては、『CESAゲーム白書』『ゲーム産業白書』『ファミ通ゲーム白書』すべてに載っている。
具体的には、ハード販売台数、そのハードのソフト販売数、発売タイトル数などが掲載されている。
ハードの売れ行きというのは1年だけで終わるものではないので、なるべく数年分をまとめたデータが欲しいが、通年でのデータの数は『ファミ通ゲーム白書』が勝っている。

ゲーム業界の構造や用語について知りたい

ゲーム業界全体の概観については、業界を統括しているCESAの『CESAゲーム白書』に詳しい解説がある。
ここでは「ゲーム初心者講座」として、ゲームの分類と定義、ゲームソフトが作られる仕組みと収支構造、
ゲームの流通構造などがわかりやすく説明されているので、ゲーム業界を調べる際にまず参照しておくと役立つだろう。
さらに、国内外のゲーム関連団体やイベント、クリエイター育成機関の一覧が載っているのもCESA白書の長所である。

ゲーム業界の市場規模を知りたい

このトピックは多くの人が気にするものだけに、3つすべての白書が扱っている。
それら市場規模のデータは売上金額ベース、本数ベースのソフト・ハードの販売やメーカー別の売り上げ、中古ソフトの売り上げなどから構成されており、
それぞれが数年単位での比較がなされているので、ゲーム業界が拡大しているか縮小しているか、どのハードやメーカーが伸びているかなどはすぐにわかるだろう。
また、大まかなデータであれば入手しやすい『デジタルコンテンツ白書』にも記載されている。

中古ゲームソフトの売り上げを調べたい

中古ソフトに関しては、『ゲーム産業白書』『ファミ通ゲーム白書』に共に項目があるが、
前者の方がより詳しいといえる。産業白書では、中古ソフトに対しても機種別・ジャンル別の分析があり、
売り上げランキングもファミ通のものより詳しい。
また、ゲーム屋での買取価格・販売価格の平均値もソフトごとにわかるようになっている。

ゲームユーザーを調査したデータが知りたい

ユーザーがどのようにゲームを購入し、プレイしているかという調査は、『CESAゲーム白書』が最も詳しく行っている。
本書では毎年行われている「CESA一般生活者調査」のデータを掲載しており、
あらゆる人を対象に、家庭用ゲームをプレイしているか、どんなハードを持っているかなどの質問を行い、
回答者を性別や年齢でグループ分けしてどの層にゲームが普及しているかやゲーム参加人口を算出している。
このデータに関しては、元となっている『CESA一般生活者調査報告書』を参照するのがより適切であろう。
また毎年刊行されているわけではないが、メディアクリエイト刊の『ゲームユーザー白書』でもさらに詳しいユーザー分析が行われている。

ゲームソフトの広告展開について知りたい

ゲームのプロモーションの状況については、『ファミ通ゲーム白書』が有用である。
ここでは、CMを多く投入したソフトごとのCM展開数、投入回数、延べ視聴率、好感度などのデータが記載されている。
加えて、ゲーム雑誌への広告の数や、公式サイトへのアクセスの分析も行われている。

海外のゲーム市場の動向を知りたい

日本国外のことに関しては、専門の調査部門を持っている『ファミ通ゲーム白書』が情報源として最適である。
同書では、北米と欧州のハード・ソフトの販売数と市場規模が調査されている。
中でも米国・英国・ドイツ・フランス・北欧・スペイン・イタリア・ベネルクス諸国・カナダは個別にデータがあり、
一部の国では売り上げランキングも収録されている。
アジアや南米などその他の国々についても、調査したレポートが複数掲載されている。 さらに、『CESAゲーム白書』においても、特定の国に特化したデータはいくつか見られる。
また国内から海外へのソフト・ハードの出荷数データはこの白書にしかない。

家庭用ゲーム以外の市場動向を知りたい

非コンシューマゲームの情報は、『CESAゲーム白書』『ファミ通ゲーム白書』が扱っている。
該当するのは、アーケードゲーム、PCゲーム(ファミ通のみ)、オンラインゲーム、携帯ゲーム。
家庭用のデータに比べてそこまで詳しくはないものの、大まかに市場規模やメーカーのシェアがわかるようになっている。
ただし、これらの分野については、さらに別の資料の方が適切である場合が多い。
アーケードゲームに関しては、日本アミューズメントマシン協会が「アミューズメント産業界の実態調査」という報告書を刊行している。
またオンラインゲームに関しては、メディアクリエイトが『オンラインゲーム白書』を個別に刊行している。
より詳しい情報を得たい場合は、これらの資料を用いるべきだろう。

ゲーム雑誌・攻略本の市場動向を知りたい

ゲームについての刊行された資料として重要な雑誌・攻略本に関するデータは、『CESAゲーム白書』にしかない。
これは『出版指標年報』から転載されたデータだが、ゲーム専門雑誌の発行部数と発行金額が、「ゲーム総合」「任天堂系」などの雑誌のジャンルごとに掲載されている。
攻略本については売り上げベスト10しか載っていない。

特定の年に注目されたソフトを知りたい

もちろん売り上げランキングを見ればその年にどんなソフトが人気だったかはわかるが、それ以上に個々のソフトのどの点が注目されたかということを知りたい場合は、『ゲーム産業白書』が最も適している。
ここでは注目タイトルの要因分析として、ランキング上位のタイトルのいくつかの詳しい情報を載せている。
それらは主に小売店から得られたデータで、購入者の年齢層と男女比、満足した要素、新品と中古の週ごとの売れ行き推移などの情報がある。
数は10本程度で、売り上げ上位のソフトが必ずしも扱われているわけではないが、販売の現場からの声というのは貴重な情報だろう。

ゲームソフトのジャンル別の流行の変化を知りたい

この疑問に対しては、『ゲーム産業白書』と『ファミ通ゲーム白書』の双方がどちらも詳しい。
前者ではジャンル別売り上げ情報が充実しているほか、アクションやシミュレーションというくくりだけではなく、
「ミリタリー」「リメイク」「原作付ゲーム」といった独自のジャンル分けの下に、それらの作品が増加しているかどうかということを報告している。
こちらの区分は毎回同じではないため、長期に渡って変化を追うには不向きだが、少なくとも「ここ数年でこのジャンルが拡大・縮小した」ということを知るには役立つであろう。
『ファミ通ゲーム白書』においてもいくつかのジャンルごとに、発売されたハードのシェアやそのジャンルのトップ作品などが記載されている。

ゲーム業界の歴史的・長期的データを知りたい

基本的に、白書というのは刊行された前年の情報をまとめているものなので、長期にわたるデータというのは、比較対象として数年分が挙げられているのみである。
しかし例外的に、『CESAゲーム白書』巻末の「CESAゲームアーカイブス」は、80年代から現在に至るまでの変遷をまとめて掲載している。
「ハードウェア動向年表」は何年にどのハードが発売されたのかを一覧できるし、ハードごとの累計出荷台数や、歴代のミリオン達成タイトル一覧(国内と全世界)、ネットワークゲーム関連サービス動向年表などゲームの歴史をひと目で把握できる資料が満載である。
これらは最新のものを1つ参照すれば過去のことがすべて含まれているので、調べる際にもやりやすいのが長所である。

ゲーム業界の変化についての論評が読みたい

白書というのはただデータを載せるだけではなく、専門家による業界の動向についての読み物も掲載しているものだ。
その点に関しては3つの白書すべてが扱っているが、最もページを割いているのは『ゲーム産業白書』だといえる。
本書は市場動向に加え業界各論として、ゲーム会社のトップやマーケティングの専門家の分析が非常に充実している。
その中には、データを示しながら特定のジャンルの拡大を追うものなどがあり、ゲーム研究の一つとしても参照すべき内容となっている。

まとめ

以上の内容から、それぞれの白書の特徴を簡潔に述べると、
『ゲーム産業白書』は小売店との結びつきが強く、個々のソフトの売り上げや受容のされ方の情報に強い。
『ファミ通ゲーム白書』はファミ通のデータ蓄積を生かした情報が充実しており、その他海外の市場規模や広告などここにしかないデータが多い。
『CESAゲーム白書』は個々のソフトについての情報は少ないが、業界全体の動向の把握に強い。ただし偏りを避けるためか、「今年はDS市場が成長した」といった他の2冊にはある情報の分析は見られず、純粋なデータを提示するのみである。
最後に、それぞれの白書にどのデータが載っているかを一つの表にまとめてみよう。
以下の表は、各白書の項目ごとの情報量をX(まったくない)△(不十分)○(十分)◎(非常に詳しい)の4段階で評価している。
ゲーム白書3種の掲載データ一覧
CESA
ゲーム
白書
ゲーム
産業
白書
ファミ通
ゲーム
白書
市場規模(国内)
市場規模(海外)
ハード売上
ソフト売上(新品)
ソフト売上(中古)
ジャンル別分析
ユーザー調査
広告情報
ゲーム関連書籍
アーケード
PCゲーム
オンライン
携帯ゲーム
歴史的データ
業界動向の分析


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