An die Musik 音楽に寄せて



Du holde Kunst, in wieviel grauen Stunden,
Wo mich des Lebens wilder Kreis umstrick,
Hast du mein Herz zu warmer Lieb entzunden,
Hast mich in eine beßre Welt entrückt,
In eine beßre Welt entrückt,
やさしい芸術よ、なんと数多くの灰色の時、
人生の荒々しさが私を囲み捕らえた時、
あなたは私の心に火をつけて温かい愛情を感じさせ、
よりよい別世界に運んでくれたことでしょう!
よりよい別世界に!
Oft mal hat Seufzer, deiner Harf' entflossen,
Ein süßer heiliger Akkord von dir
Den Himmel berßrer Zeiten mir erschlossen,
Du holde Kunst, ich danke dir dafür!
Du holde Kunst, ich danke dir.
あなたの竪琴から流れ出る溜息が、
あなたの甘く清らかな諧音が、
しばしば私によりよい時間の天国を開いてくれました。
やさしい芸術よ、私はそれをあなたに感謝いたします!
やさしい芸術よ、私はあなたに感謝いたします!

我流解説

詩はフランツ・フォン・ショーバー。シューベルトの親友の一人である。
シューベルトは、たとえ親友の詩でも悪い内容なら曲をつけることはしなかった。たくさん作曲しているのはマイヤーホーファーぐらいである。
しかし、シューベルトのファンであるザイドルの詩に関しては、価値がないといいつつ結構作曲していたりする。
それはもちろんひいきなどではなく、詩としては見劣りしても内容が非常に彼の気をひいたんだと自分は思う。
さて、この曲は唯一知られているショーバーの詩による作品で、芸術に対する感動を素直な気持ちで述べている美しい詩である。
二節の有節歌曲で、右手は基本的に和音の繰り返し、左手はベースでメロディーを先取りしたり、補助したりしている。
詩の最後のニ行、Hast mich〜のところからクレッシェンドし、beßre Welt(より素晴らしい世界)で頂点に達する。
一番盛り上がるのは、二節目の同じ部分、danke dir(あなたに感謝します!)である。
その後の間奏ではメロディは右手の最上音に移り、ゆっくりと治まって次の節もしくは終わりへ繋がる。

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