幻獣たちの王~ドラゴン族~

幻獣たちの王~ドラゴン族~





~本項解説~


幻獣と聞いて、まず思い浮かぶのがドラゴン。
その他に類のない雄大な姿は、見る人を惹きつけてやまない。

まず、ドラゴンの定義というものから説明していきましょう。
「ドラゴン」と聞くと皆さんはトカゲに翼の生えたようなものを思い浮かべるでしょう。
でも、「龍」というとちょっと違いますね。長くて、ひげや角が生えていて、雲海の中から登場する、って感じですね。
実は、そこが西洋のドラゴンと東洋のドラゴンの違いなのです。

西洋のドラゴンは、「火、もしくは毒の息を吐く」「洞窟に財宝を貯め込んで守る」「基本的に悪者、キリスト教の敵」という特徴があります。
それに対して東洋では、「水に縁があり、湖の底に棲む」「神通力を使って空を飛び、雨雲を呼ぶ」「賢い、人の願いを聞いてくれる」といった感じです。
こんなにも西洋と東洋では違いがあるので、一まとめにドラゴンと呼ぶわけにはいきません。

では、早速展示された幻獣たちを見ていくことにしましょう。
その前に、閲覧の仕方を軽く紹介します。
上から、幻獣の名前、一般的なスペル、出典もしくは生息地、幻獣の外観、その幻獣の特徴となっています。
名前が赤色は1匹しかいない固有名詞、青色は図鑑などに載っている種族の名前です。

アジ・ダハーカ
Adi Dahhak
ゾロアスター教
3つの首を持つドラゴンで、魔法を使い、炎の息をも吐く。

悪神アンラ・マンユの作り出したドラゴンで、王子ザッハークに化け、千年の間民を苦しめたが英雄ファーリドゥ-ンによって退治された。


イツァム・ナー
Itzam Na
マヤ神話
双頭のイグアナの姿をした火の神。
太陽、昼夜、雨季乾季、穀物、学芸、文化を司る。

人々にとうもろこしとココアを紹介し、ゴムの利用法を教え、文字を発明した完全なる善意の存在。


ヴリトラ
Vrtra
リグ・ヴェーダ
手足のない、巨大な蛇。鋭い牙、漆黒の体を持つ。

神々に戦いを挑み、世界を破壊して最高神インドラをも屈服させた。
しかし神々の策略により、インドラの武器ヴァジュラによる騙し討ちで殺される。


ケツアルカトル
Quetzalcoatl
アステカ神話
羽根を持った白い蛇で、風と生者の世界である西方を司る。

世界を創造したあと兄テスカトリポカによって地上を追われるが、いつかまた帰ってくると信じられていた。
アステカの人々は馬に乗った征服者コルテスをケツアルカトルの再来と勘違いしてしまい、アステカを滅亡へと招いた。


サラマンダー
Salamander
火山、火の中
サンショウウオに等しい姿。

火の中に住み、火を食べるトカゲ。
その皮は火の中でも燃えることはないという。
パラケルススの四大精霊(サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノーム)のうち、火を司る。


スマウグ
Smoug
ホビットの冒険(J.R.R.トールキン)
赤茶色の大きな体をしたドラゴンで、厚い鱗は剣をはじき返し、背中の翼で空を飛ぶこともできる。
貪欲で、村を襲って財宝を奪っては洞窟に溜め込んでいた。
その後のRPGのドラゴン像を形作った存在である。

弱点の胸には鎧を着けていたが、一箇所だけあった隙間を狙って弓の名人バルドが黒い弓で退治した。


青龍
Seiryu
中国神話
青い龍で東方を守護し海の神格化とされている。

中国では最も神聖な存在であり、
歴代皇帝はだれもが好んで自分を龍と関係があると書かせている。


ティアマット
Tiamat
バビロニア神話
上半身は女性、下半身は蛇の姿をしている。
アプスーを夫とし、数々の神を生んだ。

自らの生みだした神々と戦争になり、多数の魔物を引き連れて戦うが英雄マルドゥークに敗れ、マルドゥークはその体から天と地、山と川が創造した。


ナーガ
Naga
インド神話
人頭蛇身の神で、ナーガ達の王はナーガラジャと呼ばれる。

敵を一撃で倒すことのできる猛毒と、どんな傷をも癒すことのできる不死身の力を持っている。
ナーガ族に恨みを持っているガルーダは天敵である。


ニーズヘグ
Nidhhoggr
北欧神話
黒い飛竜で世界樹ユグドラシルの根元に巣食って世界の滋養を奪っている。

同じ場所に住んでいる巨鳥フレスベルグとは敵対していて、いつも死者の奪い合いをしている。
神々の終末(ラグナロク)になるとユグドラシル全体を倒してしまうといわれている。


バハムート
Bahamut
聖書、イスラム神話
残念ながら龍ではありません。
聖書に登場するベヒーモスのアラビア読み。
聖書では巨大な河馬、イスラム教では巨大魚。

リヴァイアサンと同時に創造された生き物で、メシア到来の際の食べ物である。
詳しい説明は別のコーナーで行います。


ヒドラ
Hydra
ギリシャ神話
九本の首を持ち、そのうち一本は不死身で、
残る首を切り落とすと新たな首が二つ生えてくる。
炎が苦手で、沼地に住み、毒を吐く。

英雄ヘラクレスは首を切り落としたら再生する前に松明で焼いていくことによって再生を防ぎ、
不死身の首は地中に埋めて岩でふさいで退治した。


ファーブニル
Fefnir
北欧神話
典型的な西洋ドラゴンで、大きな体に翼を持ち、毒の息を吐く。

小人が欲に取り付かれ変身した姿で、洞窟で財宝を守っていた。
それを手に入れんと考えた弟のレギンの誘いにより、英雄ジークフリードに殺された。


ペクヨン
Pek Young
朝鮮伝承
白い龍で、太陽の光を神格化したもの。

白は朝鮮、龍は東の方角、つまり朝日を表し
「美しい朝日」の意味を持つ朝鮮の守護神となっている。


蛟(みずち)
Mizuchi
日本伝承
水を司る蛇神で、首の周りに白い模様があり、背中には青い斑点がある。
体の横側は錦のような五色の光沢に彩られている。

湖や池や河に住む泳ぐ生き物たちの支配者である。


ミドガルズオルム(ヨルムンガルド)
Midgardsormr(Jourmngald)
北欧神話
巨大な蛇で、自分の尾をくわえて大地をぐるりと囲んでいる。
悪意の神ロキの子で、猛毒を持っている。

雷神トールはミドガルズオルムと2度も対決しているライバルであり、神々の終末(ラグナロク)の時に、決戦をする。
結果、ミョルニルの一撃が加わりミドガルズオルムは叩き潰され、トールもその毒で9歩歩いたのちに倒れてしまい相打ちとなる。


メリュジーヌ
Melsine
フランス伝承
金色に輝く長い髪をした若く美しい女性で、腰から下は銀と青の蛇になっている。
美しい心の持ち主で、人の心を読むことができる。

土曜日だけは姿を消す約束で貴族ライモンダンと結婚する。
二人の間にはたくさんの優れた子供が生まれるが、
ある日ライモンダンは約束を破って土曜日に本当の姿を現しているメリュジーヌを見てしまう。
自分が人間でないことを知られたメリュジーヌは夫に別れを告げると消えてしまった。


八岐大蛇(やまたのおろち)
Yamata no Orochi
日本神話
頭と尾が八つずつあり、身体には苔や桧、杉などが生い茂っている。
体長は、8つの谷と8つの峰にわたるほど大きい。

毎年生け贄を要求していたが、スサノオが八つの酒樽を作って酒に酔わせ、退治した。
その体の中からは三種の神器の一つである草薙の剣、別名天叢雲(あまのむらくも)が見つかった。


ユルング
Yurlungur
オーストラリア伝承
雨雲と関係の深い豊饒の神であり、雷のような声で話す。
虹のように輝く泉に住むため、「虹の蛇」とも呼ばれる。

虹蛇の種族は、ブーメランを使って陸地を創造した。
機嫌を損ねると洪水や疫病を起こす。


ラハブ
Rahab
旧約聖書
海の凶暴な力を象徴したもので、詳しい姿はわからない。

天地創造の時、神に逆らって体を刺し貫かれて死んだ。
唯一神エホヴァはその体を二つに分け天と地を作った。


リンドブルム
Geflugelter lindwurm
ドイツ伝承
ワニのように並んだ歯、長い首、大きな翼、先端が三角形になった尾を持った翼竜。
足は2本で、空を自由に飛び回ることができる。

稲妻や流星から考え出されたドラゴンで、
空に輝く光はリンドブルムが飛んでいるものだと思われていた。


ワイバーン
Wyvern
大空
前足のない翼竜のような姿をしたドラゴン。
後ろ足もないものはワイアームと呼ぶ。

紋章に良く使われる。
牙と爪が武器だが、ドラゴンのようにブレスを吐くことはできない。





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