本作のストーリーの裏事情を知るためには欠かせない、クリア後の「シークレットレポート」ですが、
いざ読みたくなった時にどこにも見つからなかったので、自分で書き写してみました。
22のレポートすべてを網羅し、文字の強調などもできるだけ正確に再現しました。もちろん内容はとんでもないネタバレなので、本編をクリアした後にご覧ください。
ストーリーについて考える上での資料としてもらえれば幸いです。
ついでに、一見するとバッドエンドなあのエンディングの見方が変わるスタッフの解説も引用しました。さらに詳しく知りたい方は、『すばらしきこのせかい 公式コンプリートガイド』をご覧ください。
■シークレットレポート1(シキ1日目)
1/6
周知の通り、ここUGにて行われるゲームは、
常に我々の監視下におかれている。
しかし、今回のゲームは特殊要因が重なり、
奇跡的なバランスで成立している
近来まれに見る特異なケースとなっており、
高次元からも注目を集めている。
私は、この注目すべきゲームを、
もっとも近い場所から観察し、
ここにレポートする。
今回の特殊性を定義づける要因は
下記4つの条件が存在する。
2/6
第1に『渋谷の崩壊をめぐる分岐』
第2に『UGにおけるコンポーザーの不在』
第3に『コンポーザーの能力制限』
第4に『代理人によるゲーム執行』
である。
私は、コンポーザーから2点の連絡を受けた。
『UG崩壊の決断』と、『最終判断は
指揮者とのゲーム結果をもって決定す』
というものである。
ゲームのルールとして、
コンポーザーはUGを去る必要がある。
3/6
コンポーザー不在は、前代未聞の事態であり、
その影響については私も予測できない。
さらに、コンポーザーは自らの波動を、
UGからRGにまで落として同調する必要がある。
これは、コンポーザーの能力を制限する、
ということに他ならない。
このため、私が指揮者側の情報収集、戦略把握が
極めて困難となる。
なぜなら、私の身分はコンポーザーにしか
明かされていないからだ。
4/6
これは、UGに身を置きレポートを
することにとって致命的なリスクとなる。
さらに、ゲームを不確定とする最大の要因が、
実際に指揮者と競うのは、コンポーザーではなく、
コンポーザーの代理人、
『選ばれし者』が務めることである。
現状その代理人についても情報は無く、
一切不明である。
このように不利な状況であるが、
潮流を読むカギとは必ず存在するものである。
5/6
なぜならば、時間とは必ず過去を前提に発生する、
という連続性を持つためである。
もちろん今回も私はすでにカギを発見した。
指揮者からのバッジの発注である。
通常、サイキック発動の媒体となるバッジは、
発動効果をイマジネーションとして充填する。
これはつまり、バッジを解析することで、
使用者のイマジネーション、つまり、
意図を解読できることを意味する。
だが、今回の発注はコンポーザーを介してなされ、
指揮者本人とは接触していない。
そのため重要となるイマジネーションを
判断できなかった。
6/6
私もまた、自身の波動をUGへ
低位同調させているため、
能力を制限されているのである。
しかし現段階では、バッジがカギということが
明らかになっていれば充分である。
なぜなら、崩壊確定の猶予はまだあるのだから。
■シークレットレポート2(シキ2日目)
1/4
ゲーム終了間際、強烈なソウルの炸裂を感知。
炸裂の発生源にて、『選ばれし者』
桜庭音操を発見。
特筆すべきは、危機回避直後に彼が見せた、
ソウル放出後の急激な縮小である。
UGにおけるソウルの定義は、
後日考察を設けるとし、現状では
彼の内に存在するエネルギーのようなもの、
という認識で充分である。
2/4
彼の不安定なソウルは、肉体と感情の統合に
乱れがあるために起きている。
この乱れの原因は様々な事象に起因する。
第1に彼はあらゆる種類のソウルを
高密度で内包している。
第2に混乱した感情が肉体との統合を妨げる。
第3にエントリー料で記憶が取られているため、
混乱に拍車をかけている。
これほど多様なソウルの持ち主ならば
相当なイマジネーションの使い手となるはずだ。
コンポーザーが彼を選んだ理由も納得できる。
3/4
彼のソウル統合のレベルが、
渋谷崩壊にも大きく影響するだろう。
よって、彼の統合レベルを測定するために
ハーモナイザーバッジを与えた。
このバッジは契約者との協力によってのみ
発動するバッジである。
シンクロ率は、個人のソウル統合が
前提であり、個人の統合が進めば、シンクロ率も
共鳴して上がるものなのだ。
ハーモナイザーバッジを使えるということは、
契約者とのシンクロが高まったことのしるしだ。
4/4
これはすなわち、彼のソウルの統合が
進んでいるということを意味する。
このため、サイキックの共鳴が強まるほど、
統合が進んでいる証明となるのだ。
今後、彼のソウルを
厳重に監視する必要がある。
■シークレットレポート3(シキ3日目)
1/5
コンポーザーの定義づけをあらためて行う。
この先、ゲームの観察を進めるにあたり、
コンポーザー不在の影響は甚大であると
容易に想像がつく。
具体的な影響を把握するためにも、
このタイミングで定義を確認することは
有意義であると考える。
コンポーザーはUGにおける絶対的な権利を有す。
権利とはすなわちルールの決定権である。
コンポーザーとはUGを構成することができる
唯一の存在であり、この渋谷の創作者、
表現者に他ならない。
2/5
渋谷UGはコンポーザーが制定した
絶対的なルールで構成されており、
参加者や死神はこのルールの中において
生存競争を行うのである。
コンポーザーの交代はコンポーザーが
倒された時のみ発生し、
倒したものがコンポーザーの座に就く。
コンポーザーが交代するたびに、
UG渋谷のルールは書き換えられる。
3/5
しかし、コンポーザーの不在となると
事情は異なる。
UGのルールが無効ということである。
つまり、コンポーザーの不在はすなわち、
UGの崩壊と同義だ。
だが現在、コンポーザー不在の事実は
明かされていない。
この事実を知る者は、たったの3人。
コンポーザー本人、対戦者である指揮者、
そしてプロデューサーの私である。
4/5
プロデューサーとは、
ゲームを監視する役割を担い、
上位次元からUGへ訪れている存在である。
プロデューサーは本来UGの上位次元に
存在する意識体であるが、監視のために意識体の
波動をUGへ低位同調して顕現しているのである。
ラジオを思い浮かべれば分かりやすいだろう。
普段聞いているA局からUG局を開くために
チューニングするようなものである。
プロデューサーは本来、
UGの全存在とコンタクト可能である。
5/5
しかし、UGにおいて正体を明かすことは
厳しく制限される。
その存在そのものがUG、RGの秩序とルールの
崩壊をひき起こしかねないためである。
したがって、RGの人々はもちろん、
死神や参加者たちはプロデューサーという
存在を知らない。
プロデューサーとして唯一コンタクトできる存在、
それがコンポーザーなのである。
■シークレットレポート4(シキ4日目)
1/5
UGは、コンポーザーが人間の価値を
ジャッジするために存在する次元である。
このUGには死神とゲームの参加者が存在する。
しかし、たったひとりのコンポーザーが
全人間をジャッジするのは不可能だ。
そこで必要となるのが、
死神を運用した人間のジャッジシステム、
『死神のゲーム』である。
死神とはいわば参加者を吟味するフィルターだ。
死神になると、身体が変容し、
強力な身体能力と寿命が手に入る。
2/5
死神と参加者はゲームを通じて
イマジネーションを駆使して競うことで
互いのソウルを高めあう。
ソウルとは我々の『生と死』の研究によって
見出された概念物質であり、
大気、人間、意思、思考など
すべての事象を構成する要素である。
こうして、死神はゲームの運営にあたりながら
さらなる進化をとげる。
幹部、そしてコンポーザーといったように。
3/5
しかし、理想の進化を遂げる死神はまれであり、
その多くは参加者に破れ消滅する。
死神も参加者も、ゲームに破れた場合、
肉体に内包していた魂・思念が
ソウルに変容し拡散する。
このため消滅したように見える。
しかし、実際はソウルはUGに滞留している。
このため、このソウルを集めて、
『新たなる規律』でつなぎとめることができる。
『新たなる規律』の本質は、
イマジネーションである。
このイマジネーションが充填されていれば、
バッジや死神そのものなど、形態は問わない。
4/5
この『新たなる規律』の違いによって
ソウルの結合結果が変化する。
つまり、人間も死神もノイズも、
ソウルの結合体であり、
違いは結合の『規律』だけなのである。
では、ノイズとはいったいなんなのか?
ノイズは意思がなく、増殖する本能だけを持つ。
つまり、ソウルをひたすら求めるのである。
これが、参加者をおそったり、
RGの人間にとりつく原因である。
5/5
ノイズにとりつかれた場合、そのソウルは、
たとえノイズを倒した場合でも消滅する。
このため、RGの人間からノイズをはらうと
多くの場合、気分の高揚などの好転反応が
発生するのである。
参加者や死神がノイズに取りこまれた場合も、
同様の事象が発生すると予想されるが、
現段階ではまだ解明されていない。
■シークレットレポート5(シキ5日目)
1/6
RG、UGとは次元のレベルを指す概念である。
次元はRG、UGのほかに、
ノイズのみが存在する次元や、
我々が通常存在する次元など数多く存在し、
連続する平行階層構造をなしている。
各次元には、その世界にふさわしい波動を
持つ者が存在する。
上位次元から低位次元を見ることは容易である。
その一方、次元を超えた交流は不可能ではないが、
多大な困難を伴う。
隣接する階層の場合、波動の差が軽微であり、
交流が比較的容易である。
2/6
階層が離れれば離れるほど、波動がかけ離れ、
共通性を失うため、交流が困難になっていく。
UGはRGに隣接する上位の次元である。
このため、RGからUGを見ることはできないが、
UGからRGを見ることはできるという
状況が発生する。
また、ノイズの次元は特殊であり、
RGとUGにまたがるように存在する。
このため、ノイズはRG、UGに、
干渉することが可能となる。
参加者がノイズに接触すると、
ノイズの次元へ引きずり込まれる。
3/6
つまり、参加者がノイズの次元に、
強制同調させられているのである。
一方、RG、UGよりも、
さらに高波動の次元が存在する。
そここそが私が通常存在する次元であり、
そこに住む存在は『天使』と呼ばれる。
天使も、RGやUGのように様々な
社会組織が存在し、活動している。
プロデューサーもまた、
天使の役割の一部分である。
4/6
天使の波動は極めて高く、コンポーザーですら、
すべてを把握していない。
プロデューサーという関係でしか、
把握していないのが実情である。
このように、次元を超えた交流は常に困難が
つきまとうが、交流方法はいくつか存在する。
そのひとつが波動変調シールである。
このシールの影響範囲内においては、
UGに存在する参加者がRGにおいて実体化し、
RGの存在とコミュニケーション可能になる。
5/6
コンポーザーや死神が行う、波動の低位同調は、
本人の意識でスイッチするものであるが、
シールの影響範囲下では、強制的な低位同調が
発生しているのである。
RGへの実態を伴わない交流方法としては、
インプリントが存在する。
これを使うとRG側には、
インスピレーションのような形で認識される。
このため、情報伝達の信頼性は、
RG側に存在する受け手の状態に大きく依存する。
6/6
例えば、別のことに集中する者には、
意図した伝達が難しい。
また受け手の解釈が介入するため、
やはり意図する伝達は難しい。
『死神さん』はRGとUGの交流手段として
考案された、民間手法的な交流術である。
『死神さん』の用紙に書いた、波動変調の
擬似シンボルマークの影響範囲下では、
UGからRGの物体に対して限定的ではあるが、
干渉することができる。
RG側は参加者を認識していないため、
コインが勝手に動いているような錯覚をおこす。
■シークレットレポート6(シキ6日目)
1/5
コンポーザーからは定期的に連絡が入っている。
私とコンポーザーがコンタクトを取っていても、
ゲームの公正を維持するため、
私からの情報提供は行わないルールである。
私はコンポーザーからアイテムの発注を受けて
初めて行動できるのであり、その関与の方法も
アイテムを制作し、それを引き渡すにとどまる。
コンポーザーから、次のゲームを見据えた、
携帯への機能追加の発注を受けた。
2/5
コンポーザーは、代理人のパートナーである
美咲四季が、本日のゲームにおいて、
強度の『羨望の価値観』から脱却したことにより、
代理人の7日目の勝利を確信したようだ。
なぜなら、パートナーの成長には、
代理人の介入が不可欠であった。
この介入を実現するためには代理人もまた、
執着する『自己実現のループ』を
破棄しなければならない。
この代理人の成長の可能性について、
当初コンポーザーは、
予測しきれていなかったようだ。
3/5
本来、コンポーザーは、ある程度の未来透視は
可能である。しかし現在、
コンポーザーはRGへ低位同調しており、
能力が制限されている。
このため、未来透視の精度が落ちているのである。
RGにいながら、UGを見ることができているが、
これ以外には様々な制限を受ける。
まず、外見。
UGで最高の波動状態よりも若年化する。
しかし、この外見のため、死神たちに
コンポーザーと認識されることはまずないだろう。
4/5
もともと、コンポーザーは、
指揮者を通してしか死神と接触をしないため、
死神は通常、コンポーザーの姿を知らない。
また、コンポーザーはUG内において、
もっとも高い波動の存在のため、
死神のレベルによっては見えないという
ケースも存在する。
低位同調の影響が発生するのは、
コンポーザーの波動とRGの波動が
かけはなれているためである。
5/5
死神の場合、RGへ低位同調しても、
変動幅がコンポーザーほどではないため、
影響が少なくて済む。
ただし、それには個体差が存在する。
いずれにせよ、影響が軽微であるため、
死神のRG低位同調は比較的多く
発生しているようである。
死神の仕事をまっとうしていれば、
RGの秩序の範囲で活動することは問題ない。
■シークレットレポート7(シキ7日目)
1/6
コンポーザーの想定どおり、
代理人の勝利に終わった。
ところで、7日間生き残った者はどうなるのか?
イマジネーションが希薄な逸材と呼べぬ者は
ソウルに分解され、
優秀なイマジネーションを持つ逸材は死神となり、
中でもよりよい逸材は、
我々天使と同じ、次の世界へ移行する。
死神も、職務を全うしコンポーザーを経れば
我々天使と同じ次の世界へ移行することができる。
2/6
もしくは……
おかしな話だが、生き返ることも選択できる。
生き返るという表現は適切ではない。
厳密に言うとUGの人間も人間として
死んではいない。
ソウルの結合規律と同調する次元の
チューニングが異なるだけだからである。
また優秀な参加者が生き返ることは、
我々天使にとってマイナスではない。
なぜなら、優秀なイマジネーションは、
人間をひきつけるためである。
3/6
逸材たる参加者の社交的創作活動は、
それに触れた者のイマジネーションをも
磨く可能性が高い。
つまり、音楽や絵といった
芸術作品が放つイマジネーションは、
社会文化を通じて他の人々に伝承、継承され、
更なるイマジネーションを呼び起こす。
もちろん時間は必要だ。
だが天使は急いではいない。
しかし、今回の特殊条件下のゲームでは、
生き返る選択肢が実は存在しない。
コンポーザー不在のためである。
4/6
『生き返る』を実現するイマジネーションは、
コンポーザーレベルの能力であり、
指揮者では不可能なのである。
現在、指揮者はコンポーザーが
存在するように振舞っているが、
この歪みはいつか破綻するときがくるだろう。
その時、果たして指揮者は
どのような対応をするつもりなのだろうか?
今後の動向に注視したい。
レポートを書いている隙をついて、
保護していたビイトが失踪した。
5/6
ビイトはノイズの作り方に興味を示していた。
死神にでも聞き出すつもりだったのだろう。
しかし、死神から情報を引き出さずとも、
自ずとノイズは作れるはずである。
すでに、ノイズを作るための特殊な
イマジネーションを充填したバッジを
彼には渡してある。
そして、ノイズ作成方法もインプリント
しているのだ。
これは、ゲームへの介入ではない。
6/6
なぜなら、与えた情報はゲームの結果に
まったく関係ない内容であるからだ。
大切なものへの情熱を恐れずにクリエイトした、
彼への私からの単なる賞賛である。
そして、実際に行動するかしないかは、
彼の自由意志にかかっているのである。
■シークレットレポート8(ヨシュア1日目)
1/4
コンポーザーの想定どおり、
代理人が2度目のゲームに参加することとなった。
コンポーザーは先のゲームにて代理人の能力に
確信を持ち、今回のゲームにはコンポーザーも
参加し、代理人本人と行動を共にするようだ。
コンポーザーが代理人と行動を共にすることの
目的は大きく3つ。
第1に指揮者の戦略分析のための調査、
第2に代理人の教育、
第3に代理人の保護である。
2/4
コンポーザーがUGへ戻ることで、
能力の制限は緩和される。
しかし、能力を使うと、
正体が明るみになる可能性がある。
このため、しばらくは能力を制限しての行動と
ならざるをえない。
これはややリスクを伴う行動である。
しかし、最高のリスクはコンポーザーが代理人と
行動を共にすること自体にある。
3/4
コンポーザーと行動を共にするということは、
代理人自身とはかけ離れた、
強烈な波動と行動を共にする、ということである。
これは代理人にとって、
肉体的・精神的に相当な負荷をかける。
しかも、先のゲームに勝利したことで、
代理人に記憶が戻った。
このため、代理人を締め付ける、
『自己実現のループ』もより強固になっている。
先のゲームでシキより取り払った
『羨望の価値観』以上に相当根深いはずである。
4/4
代理人の先のゲームにて前進した、
ソウル統合が後退する可能性もある。
また、代理人のパーソナリティにも
少々問題が見受けられる。
果たして、代理人がコンポーザーと行動することに
いつまで耐えられるのだろうか?
■シークレットレポート9(ヨシュア2日目)
1/3
本日、上から堕天使発生の緊急警告を受けた。
堕天使とは、天使の掟を破る犯罪者である。
今回のゲームマスター南師に、
禁断ノイズ精製方法を教えた容疑で
指名手配された。
南師は、本来、指揮者ですら知らない
RGでのコンポーザーの姿を認識しており、
コンポーザーを狙い、RGまで追ってきた。
この情報も堕天使の仕業の疑いがある。
と、いうことだ。
2/3
南師は、コンポーザーの座への執着が強く、
次期コンポーザー候補として、
指揮者に次ぐ可能性のある存在である。
今回のコンポーザーと指揮者のゲームにおいては、
完全な部外者でありながら、
コンポーザーの行動を阻害する要因となっている。
指揮者との勝負が決する前に、指揮者が南師へ
交代する可能性も少なからず存在する。
高次元が期待し注視する、
渋谷の未来がかかったこの重要なゲームが、
部外者の行動によって無効となった場合、
天使の失望は計り知れない。
3/3
さて…
果たして堕天使の目的はいったいなんなのか?
UGの支配か?それとも天使への反逆?
いずれにせよ今後、南師の動向および、
『堕天使』には警戒が必要なのは間違いない。
■シークレットレポート10(ヨシュア3日目)
1/4
以前から発注を受けていた携帯の探知機能を
ようやくコンポーザーに引き渡す。
品物自体は3日前から完成しており、
コンポーザーを呼び出してはいたが、
受け取りに来るまでの余裕がなかったようだ。
代理人が相当慎重にゲームを進めていることが
うかがえる。
この探知機の能力は、指揮者のイマジネーションに
反応するしくみになっている。
この機能を使い、渋谷中を調査することで、
指揮者の戦略を探るつもりだという。
2/4
私も現状、指揮者の手の内を把握できていない。
コンポーザーの調査結果に、
たよらざるをえない状況だ。
調査結果を待つ間、私は、コンポーザーから
発注を受けた携帯の機能修正第2段を開始する。
コンポーザーと契約してから初めて
代理人と接触した。
どうやら、代理人のコンポーザーへ対する警戒心は
かなり強いように見受けられる。
3/4
予想通り、精神的な負荷も相当なようだ。
通常の代理人ならば、行動を共にするのは
不可能な状況だろう。
今、代理人をつなぎとめているのは
エントリー料だけだ。
この危機的な精神状態が代理人のソウルを
いっそう高めている。
記憶が戻ったことによる後退も、
ソウルに関して言えば見られない。
むしろよりよい影響をあたえている。
4/4
代理人の今後の成長が、楽しみである。
■シークレットレポート11(ヨシュア4日目)
1/6
コンポーザーの調査が難航しているとの
連絡を受ける。
やはり、能力を制限しているためか?
一方、南師がミッションを出してこない。
おそらく、死神上層部も、事態を重く
見ているだろう。
これも、堕天使の入れ知恵…か。
以前にも述べたが、南師は堕天使との
関係が疑われている。
2/6
なぜ堕天使は南師を選んだのか?
その要因は3点ほど考えられる。
第1に南師のコンポーザーの座に対する執着は、
UGの中で最も高い。
その執着ぶりはUGを去ったコンポーザーを、
RGまで追い詰めるにいたるほどである。
だが、ただの死神とちがいコンポーザーの力は、
RGでカンタンに使えなくなるほど甘くはない。
あわてる南師の顔が目に浮かぶ…。
とにかく、南師による抹殺は失敗に終わった。
3/6
コンポーザーはRGに低位同調しているため、
能力が制限されている。
しかし、この条件は南師もまったく同じである。
コンポーザーと南師の能力差が、
結果に直に反映された形となった。
しかし、目的を実行できなかったとはいえ、
これこそ、南師の執念深さを裏付ける証拠である。
第2に、死神組織への忠誠度が極めて低く、
個人行動を好む傾向にある。
4/6
否、むしろ協調性は皆無であり、
団体行動が不可能なタイプである。
これは、堕天使の存在を隠すには
好都合である。
第3に、自分の美学を貫くタイプであり、
周囲には奇行としか思えない行動を、
ひんぱんに繰り返していた。
このため、堕天使の入れ知恵による、
変わった行動を取ったとしても、
周囲にはあまり問題視されない。
5/6
これらの要因が、堕天使にとって
我々天使の目を欺きながら、
事を進めるのに都合がよかった
…と、考えるのは自然だ。
それでは、南師はゲームを放棄して、
いったい何をしているのだろうか?
おそらく、南師の今の目標は、
コンポーザーの抹殺だけだろう。
だとすると、参加者に手を出せる
7日目の準備をしていると考えるのが妥当である。
6/6
いったい、堕天使は南師に
どんな言葉をささやいたのか…。
今となっては誰も知る由もない。
■シークレットレポート12(ヨシュア5日目)
1/4
代理人は、CAT、つまり、
私のアート作品に心酔していた。
これは『選ばれし者』ならば、
偶然ではなく必然である。
なぜならば、CATのアート作品には、
ある命令コードをこめているのだ。
つまり、アート作品を通して、
対多のインプリントを行っているのである。
2/4
参加者たちが用いるインプリントは対個であるが、
アート作品によるインプリントは、
作品に触れた者すべてになしえる。
これが、対多のインプリントが
可能となる理由である。
私がこめている命令コードは2つ。
第1【もっと楽しめ】は、作品に触れた者の
イマジネーションを強める効果がある。
代理人は、このコードを強く受け取っていたが、
自分のトラウマのせいで、
うまく行動できていなかった。
3/4
第2【集結せよ】は、イマジネーションが
強い者をひきつける効果がある。
コンポーザーが私のグラフィティの前で、
強力なイマジネーションを有する代理人を
発見したのは、必然なのだ。
このような仕掛けを組み込む必要が
ある理由はたったのひとつ。
未来を描くためにイマジネーションが
必要であるからだ。
4/4
渋谷で私のアート作品が広く受け入れられている。
これは、未来を描くイマジネーションの強い者が
増えている証明であり、
渋谷の未来は明るいと予想できる。
■シークレットレポート13(ヨシュア6日目)
1/4
携帯の探知機能に、第2の修正を施す。
この修正によって、携帯は渋谷川に
反応するようになる。
コンポーザーは、この機能を使って、
代理人に渋谷川の場所を知らせる計画だ。
この修正を施す前提は、
指揮者の戦略把握があった。
コンポーザーは昨日までにそれを
達成したと判断した。
2/4
探知機が反応した場所には必ず
レッドスカルバッジが存在したという。
1日目に私が発注を受け、
指揮者に納品したバッジである。
やはり、当初の予想通り、
レッドスカルバッジを利用した戦略のようだ。
指揮者がそこにこめたイマジネーションは
まさに、参加者バッジと同じであった。
インプリントである。
しかし、1点だけ差異がある。
3/4
それは、指揮者の意思をインプリント
するためのバッジなのだ。
レッドスカルバッジを身につけるものは、
すべて指揮者の意思の支配を受ける。
レッドスカルバッジが、ひろまればひろまるほど
指揮者が渋谷を支配していくことになる。
しかし、レッドスカルバッジのRGにおける
占有率はいまだ50%に満たない状態である。
2週間をかけて50%に満たない現在の
浸透スピードでは、
指揮者の戦略は失敗するだろう。
4/4
果たして、残りの時間でどのように
レッドスカルバッジを浸透させるつもりか?
今後の動向に注目である。
■シークレットレポート14(ヨシュア7日目)
1/3
最終日のミッションは、
指揮者が南師の抹殺を出題してきた。
これは、予想外の展開であり、緊張が走ったが、
コンポーザーの柔軟な対応で乗り越えた。
最終的には、すべてが想定どおりの状態で、
次のゲームへ橋渡しすることができた。
この計画とは、第1に、南師を倒し、
代理人がゲームに勝利すること。
第2にコンポーザーは南師から代理人を守り、
南師にやられて、消滅したとみせかけること。
2/3
第3に、南師の攻撃を受けたタイミングで、
コンポーザーは並行世界へ一時的に身を隠すこと。
代理人ひとりが勝ち残るが、
今回も代理人が生き返ることは不可能だ。
なぜなら、コンポーザーは不正参加として
処理されるであろうと予測されるところから、
代理人が連帯責任を負うのは必然だからである。
コンポーザーと指揮者のゲームの
リミットは、あと1週間。
3/3
指揮者の戦略が
未達成で終わる可能性がある現状で、
私自身も、今後の指揮者側の動きを
注視する必要がある。
後は、コンポーザーから、どの並行世界に
逃げ込んだかの連絡を待つだけだ。
■シークレットレポート15(ビイト1日目)
1/5
指揮者の戦略を調査するために渋谷を巡回。
宇田川町にて南師が描いた禁断精製陣を発見する。
禁断精製陣には、様々な種類が存在し、
高次元では、体系化してまとめられている。
しかし、そのすべてがUGにおいて
精製できるわけではない。
なぜなら、UGの波動は高次元よりも
低いものだからである。
UGの波動では翻訳しきれない精製陣が
存在するのである。
2/5
南師が描いた精製陣は、このUGでは
翻訳できないタイプの精製陣であった、
南師に入れ知恵したと思われる
堕天使のミス…かもしれない。
それとも、南師の描き間違いなのだろうか?
いずれにせよ、このままでは、
南師は復活できないだろう。
だが、南師は執念深く、イマジネーションが強い。
このイマジネーションで、UGでは実現不可能な
復活をとげてしまう可能性もある。
この場合、どんなことが起こるか分からない。
3/5
コンポーザーと指揮者のゲーム進行を
妨げるリスクは、可能な限り回避する必要がある。
精製陣を無効化する処理を施す。
天使は、死神のゲームに対して介入はできないが、
この件は死神のゲームではなく、
高次元の注目を集める、
渋谷の未来をかけたゲームなのだから。
一方、指揮者は先制攻撃として、
参加者をひとりとする作戦を打ってきた。
4/5
指揮者は、桜庭音操を代理人として
見抜けているかまでは読みきれないが、
エントリー人数を最小限におさえることで、
参加者を確実に消滅させ、
代理人の可能性のある人物は参加させない
という暴挙に出たのである。
コンポーザーが、並行世界へ退避中の今、
代理人の立場は、不利な状態になっている。
私も代理人を助けるわけにはいかない。
それがプロデューサーのルールだからだ。
5/5
私にできることは、代理人を渋谷川へ
誘導するのみ。
偶然か、必然か、たったひとりの参加者となった
代理人は、死神となっていたビイトと契約した。
ビイトは渋谷川へ行くことしか考えていないので、
誘導については、それほど心配はないだろう。
しかし、ラスト1週間の指揮者の戦略が、
未だに見えない状況のため、安心はできない。
■シークレットレポート16(ビイト2日目)
1/3
指揮者はビイトの裏切りを理由に、
エマージェンシーコールを発令した。
UGにおける、コンポーザーのルールは
事実上無効となる。
コンポーザー不在を隠し続けた、
指揮者の独壇場である。
同時に死神には、
レッドスカルバッジ装着を義務付けた。
これによって、死神全員に
レッドスカルバッジがいきわたる。
2/3
これで渋谷のほぼ全域にレッドスカルバッジが
いきわたったことになる。
これをもって、指揮者の反撃のための環境は整った
ということである。
その矢先、UGが壁で仕切られた。
UGから離脱して、波動を引き上げれば、
壁をすり抜けることも苦ではない。
しかし、それでは意味がない。
UGにとどまる限り、
私も身動きはまったくとれない。
3/3
コンポーザーとも連絡がとれず、
未だにどの並行世界へ身を隠しているのかが
分からない。
どうやら、今後私にできることは、
透視能力によって、ゲームの行方を
モニターするしかないようだ。
■シークレットレポート17(ビイト3日目)
1/5
代理人は、渋谷川に向かわず渋谷中を
徘徊し始めた。
ゲームマスターを追跡しているようだ。
今回のゲームマスターである虚西の
最大のモチベーションは保身である。
表向きは指揮者に従順であるが、
有力なコンポーザー候補が現れれば、
簡単に乗り換えるだろう。
だが、今は初日の失態をリカバーし、
指揮者の信頼回復に必死のようだ。
2/5
ビイトの最大の弱点を利用して、
6日間ぶちぬきのミッションを出題してきた。
代理人たちを揺さぶり、自滅へ導く作戦である。
しかも、追い詰められていく様を、特等席、
つまりビイトの影の中から眺めるつもりのようだ。
指揮者の信頼を回復すると同時に、
おのれのプライドを傷つけられた
復讐をするつもりらしい。
ビイトの最大の弱点、それはライムである。
3/5
ビイトの最大の目標はライムを
よみがえらせること。
しかし、ライムがよみがえったとしても、
ライムのエントリー料はもう戻らないだろう。
ライムはゲームに負けているためだ。
ライムが何をエントリー料としていたのかは
知らないが、もっとも大切なものを欠いたままの
人生における喪失感と困難は計り知れない。
だが、失った大切なもの、この心の穴は、
この先も一生からっぽなのだろうか?
4/5
否。時間はかかるかもしれないが、
きっと何か別のものでその穴を埋められる日が
来るのだ。
今を楽しんでさえいれば…
つまり、大切なものというのは、失って
悲しむべきものではないのだ。
それに気づけば、みなもっと楽になるだろう。
コンポーザーがエントリー料のルールを
採用したのは、参加者を苦しめるためでは
断じてないのである。
5/5
大切なもの、つまり生きていた頃の『こだわり』を
失った状態で世界を経験することで、
いかに自身にとってその『こだわり』が生きる糧と
なっていたのかを再認識させるためである。
ゲームが終わる頃には、深く自分を見つめなおし、
新たな意識で未来に取り組めるはずだ。
エントリー料とは、この真実を知らせるための
ルールだったのだ。
これはつまり、コンポーザーから参加者への
自己啓発のための試練なのである。
■シークレットレポート18(ビイト4日目)
1/5
ついに、指揮者がレッドスカルバッジを
利用した意識の統一を開始した。
渋谷再生の実現を目指す指揮者の意識に
統一することで、渋谷再生を目指すというものだ。
指揮者の使命感は、
死神の中でもっとも高かった。
コンポーザーが高次元の中でも注目を
浴びるほどのカオティックな渋谷を
管理できたのも、指揮者の存在が大きい。
2/5
だからこそ、コンポーザーが渋谷の崩壊をかけた
指揮者とのゲームを受けたのだろう。
コンポーザーはそれほど指揮者を信頼していた。
事実、意識の統一は上では当然の状態であり、
UGも長い時間をかければ、
そのような状態となりうる。
しかし、現状のUGでは成立しないのである。
現在、本来ひとつである意識に、
人々の壁ができている。
3/5
ちょうど細胞が集まって、人間を作るように。
参加者バッジは、この壁をすり拔ける
イマジネーションがこめられている。
一方、参加者バッジを持つことで、
バッジ使用者の壁は強化される。でなければ、
他者の意識が使用者に流れこむことによって、
意識の混乱が生じるためだ。
このため、参加者バッジを持つ者に対しては、
スキャンができない。
4/5
なぜ、今の地球に個性があるのか。
指揮者は、この事実を見落とした。
不必要なものであれば、存在自体していない。
渋谷を守る使命感がエゴとなり、
指揮者の目を曇らせたのだろう。
そんな曇った指揮者の意識に統一してしまったら、
渋谷の破綻は目に見えている。
人に個性がある限り、
絶対的に孤独でありつづける。
共有できるリアリティなどない。
5/5
「つながっている」と思っている人とでさえも、
決してつながってなどいない。
だからこそ、ぶつかって確かめるしかない。
違いを否定するのではなく、
受け入れて楽しめばいい。
ただそれだけのことである。
渋谷が崩壊を免れるためには、
これに気づくことが必要だ。
■シークレットレポート19(ビイト5日目)
1/5
強力なエネルギーを感知。
どうやら南師が復活したようだ。
初日に精製陣を確認した状態では、
南師に復活は難しいだろうと私は判断していた。
しかし、南師のイマジネーションは、
私の予想を大幅に上回るものだったようだ。
…堕天使が精製陣を完成させた…か。
この復活がコンポーザーと指揮者の
ゲームにどのような影響を与えるだろうか?
復活した南師の行動はただひとつ。
コンポーザーを捜しだし消滅させること。
2/5
南師はコンポーザーの動向を監視していた。
おそらく、コンポーザーがこの店に何度か
足を運んでいたことも気づいているだろう。
であれば、この店を目指してやってくる
可能性が高い。
コンポーザーからの連絡は未だない。
まさか、コンポーザーの能力が制限されすぎて、
私に連絡すらできないのであろうか?
こちらから並行世界にいるすべての私に
コンタクトして捜索する必要があるかもしれない。
3/5
ここで、並行世界の概念を確認しておこう。
人は瞬間の選択の連続を経験している。
そして、選択されなかった現実も、
同時に分離して発生しており、
そのままさらなる選択の連続として、
別の現実が存在する。
これが、並行世界である。
このような並行世界がRGにもUGにも
無数に存在している。
この同次元並行世界は、
移動することも可能であり、
その手段がイマジネーションである。
4/5
理論上は誰でも並行世界間移動は可能である。
しかし、並行世界間をしきる膜をすりぬける
ためには、上位同調が必要である。
これは、同次元移動を困難にしている要因である。
また、並行世界の膜を通り抜けるときの
ストレスが、移動者の平均波動を引きさげる
可能性がある。
仮に波動が下がってしまった場合、
膜をすり抜けるための上位同調が困難となり、
最悪の場合、自力で元の世界に戻ることが
不可能となる。
5/5
一方、天使はもともと、
全並行世界を行き交う存在である。
このため、並行世界間移動には、
大きな問題は存在しない。
本来、天使はUGよりも高波動の存在なので
いったん、UGを離脱し、チューニングする
並行世界にターゲットを定めて、
その世界に同調することが可能だからである。
■シークレットレポート20(ビイト6日目)
1/2
コンポーザーを発見した。
マブスラが世界の価値観を
握るようになっている世界だ。
コンポーザーを迎えるために出発しよう。
一方、復活した南師の殺気が、
恐ろしい勢いでこの店に迫ってきている。
ここを急いで、離脱する必要がある。
渋谷川へのキーバッジを、
代理人のために置いておこう。
代理人ならば、この意味が分かるはずだ。
2/2
代理人に、渋谷の未来が託された。
UGで私がなすべき仕事はこれで終わりだ。
後は、コンポーザーを並行世界から
再びこの世界へ連れ戻すことだけだ。
■シークレットレポート21(アナザーデイ)
1/5
並行世界へ入り、コンポーザーと接触。
こちらの思惑とは違い、
この世界をおもいっきり満喫しているようだ。
マブスラを楽しんでいたため、
連絡が遅れたとのことだ。
コンポーザーとは渋谷川で合流する約束を
取り付ける。
この次元にもすでに別の私が存在するため、
接触を避けるため身を隠す必要があるのだ。
本来、天使の場合、同じ世界に
複数の存在がいても特に問題はない。
しかし、今回は特別である。
2/5
なぜならば、私が南師に、
禁断ノイズの精製方法を伝えた堕天使であるから。
禁断精製陣を描き損ねていた南師が
復活できたのも、6日前に陣を確認したときに
私が陣の修正をしたからだ。
私がポークシティに身を隠さなければならない
理由は、この世界の私と遭遇したら、
通報される恐れがあるためだ。
3/5
南師は渋谷存続のもうひとつの可能性だ。
コンポーザーの意思が変わらなければ、
この稀有な街、渋谷は崩壊してしまう。
それはなんとしても避けたい。
そのためには、天使の境界を越えてまでも
実行しなければならないことがある。
喜んで堕天使の汚名をも受けよう。
4/5
さて、そろそろ彼を迎えに行く時間だ…
さきほどのケータイで聞いた
コンポーザーの明るい声は、
私の落とした影をいっそう黒く感じさせる。
しかし、元来、闇は光の一部である。
私が犯した罪が、いつか正当に評価される日が
くることを願ってやまない。
いまも…
そして、これからも…
5/5
最後に。
『選ばれし者』とは
たいそうな呼ばれようだが、
桜庭音操…
君が選ぶべき未来は、君と共にある。
君と会えてよかった。
■シークレットレポート22(ビイト7日目)
1/5
コンポーザーは指揮者とのゲームに勝利した。
コンポーザーは代理人とのゲームに勝利した。
しかし、コンポーザーは渋谷の崩壊を取りやめ、
存続を決定した。
コンポーザーも、ゲームを通して、
心境に変化が起きたようだ。
渋谷は一見存続しているが、
実は1ヶ月前の渋谷と同じ渋谷ではすでにない。
2/5
まったく新しい渋谷が誕生したのである。
なぜなら、コンポーザーが変化したことによって、
渋谷自体も変容したためである。
1ヶ月前、この渋谷は確かに
大きな問題を抱えていた。
コンポーザーが崩壊を決意するほどに。
しかし、今やこの渋谷は我々天使が想定する、
もっともあるべき並行世界にシフトしたのである。
3/5
このパズルを完成させるためには、
すべてのピースが正しい場所にある必要があった。
たったひとつのピースが欠けても、
間違った場所へはめても、全体が台無しになる。
存在をかけて優しさを表現したライム、
出世欲を克服できなかった東沢、
愛を持てなかった虚西、
指揮者の愛情あふれる暴走、
すべては必然であった。
渋谷が新しく生まれ変わるために、
無駄な存在などひとつとしてない!
4/5
流動する社会をあるがままに受け入れ、
意識も流動的にする。
そうすることで個人と個人をリンクして、
再び社会全体の変化に反響する。
これが、世界の変容の波にうまくのるための
ただひとつの方法である。
コンポーザーが最終的にこのシンプルな方法を
採用したのももちろん必然。
5/5
すべての存在に愛をこめて感謝しよう。
この先の渋谷に期待している。
ありがとう。
■おまけ
エンディングについてのスタッフインタビュー
(公式コンプリートガイド 213頁)
――最後のネクと北虹(キタニジ)との戦いからエンディングまでのストーリーを、詳しく解説していただけませんか?
神藤 結局、ヨシュアと北虹がずっとゲームをしていたていうお話なんですね。で、最後にタイムリミットがわずかになったところで、北虹はネクに負けてしまった。でも自分は渋谷を存続させたくて、最後にコンポーザーであるヨシュアを取り込んで勝とうとしたんです。
荒川 あれは、ヨシュアにしてみれば誤算だったんですよ。ヨシュアは取り込まれそうになったときに一瞬驚くんですけど、自分を取り込んでネクを倒すつもりなんだと、すぐに気づいたんです。それで一瞬、ヨシュアはニヤっとしたんですね。すでに1回ネクに負けて、瀕死になって、「もうコイツこれしかないんだな」と(笑)。
神藤 それでネクたちと戦うんですが、この戦いのキーになっているのが羽狛からもらった白いバッジです。ネクとパートナーたちのシンクロ率が極限まで高まって、究極の必殺技を発動するんですね。
――そのあとネクとヨシュアがゲームをしますよね。
荒川 はい、あのゲームではヨシュアが勝ちました。あのときヨシュアは「僕が勝ったら僕の好きな世界にする」と言っていますよね。
神藤 ヨシュアが勝ったんだけど、ヨシュアは渋谷を存続させることにしたんですよ。それでネクは生き返って、元の渋谷に戻ったという。ネクは、自分が負けたから渋谷はなくなると思ってた。でも元の世界に戻れて、ああ、ヨシュアに騙されたと。そこで出た言葉が、「なんなんだよこれー!」なんです。
荒川 あれ、オープニングと一見同じに見えますけど、じつは違うんですよ。オープニングでは、通行人がネクを無視して歩いているんですけど、エンディングでは周囲がネクを取り囲んでいるんですね。要は、みんながネクに気づいている、状態。それでネクも、ヨシュアに一杯食わされたんだと気づいたんです。