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SNK対ホリ電機の裁判~サードパーティ製コントローラの販売の是非~

 ゲーム機コントローラ一覧を作成している過程で、かつて起こったある裁判の記録に行き着きました。この裁判、現在ではほとんど知られていませんが、ホリ電機をはじめとするサードパーティのコントローラ販売に大きな影響を及ぼしうるものだったようなので、以下にその内容を解説してみたいと思います。

 問題となるのはネオジオを発売していたSNKがホリ電機を訴えた「平成5年(ワ)12306号」の裁判で、「著作権判例データベース」から判例を見ることができる。また「SOFTIC YWG資料」のページも参照した。
 加賀氏のエムブレムサーガに対する裁判を調べた際と同じく、筆者は法律の専門家でないので解釈が正しいかは保証できないが、それでもわかる限りのことを書いてみる。

SNK側の主張

 SNKが問題視したのは、ホリ電機が発売していたネオジオ対応コントローラの「ファイティングスティックNEO」と「ファイティングスティックNEO II」。これに対して、主位的請求として以下の3つの点で違反があるという訴えが起こされた。

  1. 映画の著作物の著作権に基づく請求

ゲーム機上の映像は映画の著作物として扱われるもので、両コントローラは「購入ユーザを手足ないし道具として利用して映画の著作物を上映せしめている」つまりホリ電機が映画の上映を行っていることになり、上映権を侵害している。そのため販売差し止め、金型・部品の破棄、損害賠償を請求。

  1. 著作者人格権(同一性保持権)に基づく請求

原告は純正コントローラが使用されることを前提として、ゲームを設計している。これに対し両コントローラには連射機能がついており、それにより「本件ソフトウェアのプログラムに込められた原告の思想又は感情を原告の意に反して改変してしまうもの」となる、つまり連射機能付きのコントローラがゲーム内容を改変しているために、同一性保持権の侵害である。そのため販売差し止め、金型・部品の破棄、損害賠償を請求。

  1. 不正競争防止法に基づく請求

ネオジオのハードによる映像はネオジオの純正コントローラがSNKの商品であることを示す「自他商品識別機能及び出所表示機能を有する商品表示」に該当し、周知性を得ているため、ホリ電機の両コントローラの販売は純正コントローラとの混同を生じさせるものである。そのため販売差し止め、金型・部品の破棄、損害賠償を請求。

 これに加え3と同じ不正競争防止法に基づく請求として、以下の予備的請求が出されている。

  1. 不正競争防止法に基づく請求(予備的請求)

「ネオジオ」「NEO・GEO」という表示はハードとしてのネオジオやSNK純正品を表すものとしてユーザーに周知されており、「ファイティングスティックNEO」という表記はSNK純正コントローラとの混同を起こさせる。それゆえ両製品の販売によって、ホリ電機は不当な利益を得ていた。そのため販売差し止め、金型・部品の破棄、損害賠償を請求。

 

SNKの訴えの意味するもの

 この裁判で問題になった法律は偶然にもエムブレムサーガの時と同じなので若干理解しやすかったが、読んでみるとSNKは結構ヤバいことを主張している。特に最初の2つである。1つ目は、コントローラの使用は作品の上映にあたるため、他社製のコントローラの使用はその会社による上映を意味し、上映権の侵害となるので他社がコントローラを出してはいけないという主張となっている。また2つ目は、連射機能付きコントローラはゲーム内容を製作者の意図に反して改変するため同一性保持権の侵害、つまり画像を加工するような行為だと主張している。この2つは、どちらも認められてしまったらサードパーティのコントローラ販売は困難となるものである。1つ目であればコントローラは全滅し、2つ目であれば連射機は違法ということになり、ゲーセンなども違法行為をしていることになる。

 しかし、素人目ではこれらは無理のある主張に見える。コントローラの操作が上映にあたるなら、何よりまずプレイヤーが上映していることになるのであり、そちらも罰されるのか(そうなったらゲームなど遊べやしない)、その上でプレイヤーではなくコントローラメーカーが上映を行っていると果たして言えるのかとか、コントローラからの入力が同一性保持権を侵害するなら、人力による連射や普通のゲームに釣りコンなどを繋ぐ行為も同じとなり、やはりプレイヤーが罰されるのかなど、疑問はいくつも挙がる。実際、ホリ電機側はこれに近い反論を行っている。1については上映主体がユーザーであると述べているし、2についてはどんな入力を行ってもプログラムの改変には繋がらないと言っている。

 この2つの点は、SNKが本気でこの訴えを起こしていたのか疑わしいほどである。どうも今回の訴えにある主位的請求・予備的請求とは、同時には成立しない2つの訴えを行う時に使うもので、たいていは主位的請求は認められる見込みは低いがリターンが大きいもの、予備的請求は前者がダメだった場合にこれだけなら通るだろうという限定された訴えとなるもののようなので、1と2が大胆すぎる主張であることはある程度わかった上での訴えのようだ。他方で3つ目はよくあるタイプのニセモノ商品の訴えであり、それなりに説得力があるように思われる。

 ついでに、裁判の流れ上、これらのコントローラの販売数が明かされている。個数について争いがあるが、ホリ電機側の言い分を信じるなら、「ファイティングスティックNEO」が1万9900個、追加販売9900個、「ファイティングスティックNEO II」が2万4300個のようだ。そして1個あたりの利益は2030円である。

 

裁判所の判断

 裁判所の判決は、主位的請求はすべて棄却、予備的請求は一部認めるというものだった。各争点についての判断は、

  1. ゲーム機による映像は映画の著作物に該当し、なおかつソフトの著作者はそのメーカーだと認められる。しかし、コントローラの製造販売はゲームの上映行為とはいえない。行為の主体はユーザーだからである。
  2. 連射機能の使用は、ゲームのプログラム自体を改変するものではなく、連射機能付きコントローラの販売は同一性保持権の侵害にはあたらない。
  3. ネオジオ内の映像は、純正コントローラがSNKの商品であることを示す商品表示とはなりえない。映像の商品表示機能はソフトについてはともかく、コントローラには及ばない。
  4. 純正コントローラには「NEO・GEO」等が表示されており、ファイティングスティックNEOの「NEO」はネオジオを指すことが明白であり、消費者に混同を起こさせていたといえる。

こうした判断の結果、ホリ電機コントローラの「NEO」表示の使用禁止と、1億2180万円(+金利)の賠償金の支払いがホリ電機に言い渡された。その他、ホリ電機側の反訴などもあったが、こちらも棄却されている。

 

判決の解説

 やはりというか、だいたい予想通りの判決が下されたと言える。つまり認められたのは、ホリ電機コントローラの「NEO」の表示が純正品との混同を招いたという不正競争防止法違反のみであった。その他の主位的請求に関しては、ホリ電機側の言い分が通ったといえる。

 またコメントとして、用途表示であれば問題なかったと言われており、「for NEO・GEO」や「NEO・GEO対応」であれば違反にはあたらないと指摘されている。

 

この裁判の影響

 最終的には、裁判所の真っ当な判断によってサードパーティ製コントローラの全滅や連射機能の違法化は免れた。他方で不正競争防止法違反によってホリ電機は手痛い出費を被ったのであり、今後訴訟が起こされないためにも、純正品と混同されないようなコントローラ製作の必要性が認識されたと推測される。つまり「for」や「対応」をつけるといった対策を取るようになったということである。実際にそうした表記は以後の製品で見られる。こちらの一覧を参照

 この裁判はまた、サードパーティによるコントローラ販売はあまり歓迎されていないということがうかがえるものだった。もちろんハードメーカーによって認識は違うかもしれないが、SNKのようにそうしたコントローラは「パクリ商品」だと思っているメーカーもいたということだ。ホリ電機はこれ以後も個性的コントローラを多数販売し、ゲーム業界にとって欠かせない存在になっていると思われるが、そうなるためには、第三者によるパクリという批判的な見方を乗り越えなければならなかったのだろう。いずれにせよハードメーカーとコントローラメーカーの関係性という点は、ゲームの歴史を考えるにあたってぜひとも注目すべきポイントであることは確かである。

 

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ゲーム研究  2018/10/21  へほくん
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