ゼウス「さて、今回皆さんに集まってもらったのは他でもない、この『日本』とかいう島国にもプロメテウスの作った土くれ（人間）どもがいくらか、いやそれどころかいい加減洪水で整理してやりたくなるくらいうじゃうじゃおって、その中にはわしらのことを考える感心な輩もおるらしい。
ヘルメス「そこで皆さんにはこの国で扱われる度合い、言うなれば『ビジネス』の首尾を報告してもらいたいわけです。例えばぼくの場合は、ちょっと読み方は違いますがある高価なものの名前として通用してまして、世の奥様方から羨望の眼差しです。まあ・・・悪くないですね。
ゼウス「ではまずわしらに次ぐ大プロダクションといえる北欧の方々に尋ねたいのだが・・・おや、肝心の主が欠席かね。
フギン「ソウダ！
ムニン「ワレラノゴシュジン、オオイソガシ！
フギン「キョウモドコカデ、『グングニル』ナゲル！
ムニン「コンナカイギ、ワザワザデナイ！
ヘラクレス「えーい、生意気なカラス公どもめ。焼き鳥にしてやろうか。
バルドル「ごめんなさい、ごめんなさい、ぼくが父さんに代わっておわびします。確かにオーディン父さんばかりひっぱりだこだけれど、そうでもしないとぼくらも食べていけないんです。ぼくや弟のヘズ、ヴィーザルなんかは・・・とくにヴィーザルなんてもういい年の父さんよりずっと強いのに・・・全然名前が売れてないもんですから。
ヴィシュヌ「まあまあヘラクレスさん、どこも大変なんですよ。仕事があるのを喜んであげましょうや。・・・それにしてもおたくらは人気の事務所ですねー。名前がカッコいいんですかねぇ。
テュール「そうそう、どうやら日本の方々はそう思うみたいで、スレイプニルとか、フェンリルとか、ミドガルズオルムとかの動物タレントもよくお呼びがかかってますね・・・貸し出す方はびくびくものですが。私なんかこの狼に片手食われたんですから・・・おい！こら、おすわり！
フェンリル「ガルルル・・・（ウソツイタオマエラガワルイ・・・）
ケルベロス「バウ！ワウ！（アマイモノクイタイ！イライラシテキタ！）
ハデス「うちの犬も・・・こら・・・やめなさい・・・世界が・・・こわれる・・・
ロキ「まあほっときゃいーんですよ。ハデスさんは心配性だなあ。
ヘラ「まあ、フェンリル狼はあなたの息子なのに、無責任ですこと。
テュール「他に言いたいことのある方は？おやあなたは、日本と似たような島国からお越しの・・・
アーサー「一つ言わせてもらいたい！あのジャパニーズども、わしの剣はやたら使いたがるくせに、わし本人にちっとも声をかけない。どうなってるんじゃ！
サー・ガウェイン「そうそう。日本人の中には、エクスカリバーは知ってても、キング・アーサーの名前を知らない人が大勢いるっちゅう話だな。
アーサー「嘆かわしい！普通その人の得物だけ借りるなんてことをするかね？松井のバットだけアメリカに行くかね？
ヘルメス「はは、近藤勇をさしおいて虎徹だけ有名になるようなもんですね。
ギルガメシュ「でもデュランダルとか陸奥守（むつのかみ）とか、結構一人歩きしてるよなあ。
エンキドゥ「陸奥守は持ち主が坂本竜馬と有名なのに、わりと繋がってないですよね。
ゼウス「ええい、そんなブシどもの話はどうでもいいのだ。実在したものなど。
アテナ「お言葉ですがゼウス様、彼らだって現在の人は誰も見たことがないのですから、私達と変わらないのですよ。ただ想像力の中にのみ存在するという点においては。
ゼウス「むむむ・・・そうであった。神話と歴史の明白な境目など、もともとはないのであったな。では次に、もう一つの大勢力たる、『さるお方』・・・この名前は口にしてはならないらしいな・・・に仕えている者たちの意見も聞きたい。この場には御使いのアークエンジェル達に出席してもらっている。
ミカエル「そうですね、どうもあの国ではやりづらいというか・・・ヨーロッパでは我らが支配したも同然、おっと口がすべった、なのですがね、この国では我らのビジュアル面だけもてはやして都合のいいように使うだけなんです。
ヘラクレス「（このハーピィもどきはいつも高慢だな・・・アルテミスに射落としてもらうか。）
ガブリエル「そうよ。アタシたちをいろんな所で呼んでおいて、肝心の主を信じないなんて、タダ働きだわよ。
ロキ「でもガブの兄ちゃんはオカマのくせに四人の中で一番人気じゃねえか。
ガブリエル「キーッ！誰がオカマですって！許さないわ！天罰よ！天罰！
ラファエル「まあまあ、これもあなたの信仰のたまものでしょう？
ガブリエル「そ、そうよね、一番って言われると悪い気はしないわ。
ウリエル「（どうしてこんななのに一番人気なんだろう・・・オレなんか・・・）
ゼウス「ではここでまだ発言のない、比較的新しく加わったグループの方々にスポットライトを当てよう。まずは、遠く『テオティワカン』より来ているニ柱の神だ。
ケツァルコアトル「ケーッ！ケーッ！
テスカトリポカ「シャーッ！シャーッ！
ギルガメシュ「言葉が通じてないぞ。
エンキドゥ「ケンカしてますね・・・
ゼウス「彼らのことは、わしもよく知らん。なにせ加わってそう経っていないでな・・・だがそれなりに仕事があるらしい。
ラファエル「白ヘビにケツァールの羽とは、カラフルで綺麗ですね。エキゾチック趣味ってやつでしょうか。
ゼウス「次には宇宙から来ている・・・
サー・ガウェイン「ウチューってどこだい？
サー・ケイ「空の上らしいよ。
アルテミス「あたしたちのいるところとは違うね。
テュール「アースガルズとも違うらしい。
ロキ「まあ、いいじゃないか。世界はいくつもあるんだから。それにしても見ろよ彼ら、あれがユニバーサル・デザインってやつかね。
ヘラ「まあ、まるでイカね！もう一人は、真っ黒でてかてかしてて頭がなくて・・・気持ち悪い！
ゼウス「クトゥルー氏にニャルラトホテプ氏だ。
ヘルメス「最近の方はすごいですね・・・おや、次の一団はうってかわってきれいだ。見たことがあるぞ・・・王様、あなたの親類ですね？
アーサー「元はそうなのじゃが、ここわずか１００年くらいで急に有名になりおって、今や独立してやっとるようなものだ。なんでも指輪がなんとかいう話で取り上げられて以来な。
バルドル「わあ、耳がとがってますね。お姉さんだれ？
ガラドリエル「私は正統なエルフ達の女王、ガラドリエルと言うものです。私たちの種族は確かに今や大人気です。そのきっかけとなった勇敢なレゴラスの働きには敬意を表しています。しかし、そのせいで・・・見た目が美しいというのもあるのですが・・・有名になりすぎてしまいました。今や毎日のように日本人が押しかけてきて、弓を射ろというのですよ。私たちが戦いなんて、元来有り得ない話なんです。死んでしまいますもの。私たちはただ、静かに暮らしていたいのです。
エルロンド「別の問題もある。
ヴィシュヌ「目つきの怖いおっさんだな。
エルロンド「この『エルフ人気』にかこつけて、ちょっとでも外見の似た妖精の類、フェイとかヴィヴィアンとかまでエルフと名乗って仕事をもらっておる。これは我らの誇りに関わる由々しき事態である。
サー・ガウェイン「あんたらだけの問題じゃないぞ。もともとうちの地域に所属している妖精なんだから、そっちに流れ込まれても困る。
ガラドリエル「これはなんとか解決をつけなければいけません。気の毒といえば、オークの方々はもっとひどい役目で、大量に駆り出されていくそうですね。苦手な日の光の中を・・・かわいそうに。
ロビン・グッドフェロー「そうだそうだ。わしらゴブリンだって立派な妖精だ、雑魚扱いするな。
テュール「それに比べるとホビットのちびっこたちは扱いはまともだけど、地味ですねえ。
ガラドリエル「私もそう思います。彼らが主人公なのに・・・やっぱり人は見た目が９割なのですね。
ヘラクレス「あんたに言われると、なんかむかつくぞ・・・
ゼウス「さあ、大体みんな、新しいのもお馴染みも、発言したようだな。わしの印象ではこの国の住民は、少し想像力を刺激するものがあると、なんでもかんでも使いたがる。背景も調べないでな。
ミカエル「まったくです。
ゼウス「ただ外国のだからかっこいいとすら思うようだしな。
オオクニヌシ「そうなんである。だからわしらは気にも留められないのである。
アマテラス「ほんとにここは私たちのいた時代と同じ『日本』なのかしら？信じられないわ。
ギルガメシュ「あら、いたの君達。
エンキドゥ「王さま、ひどいですよ、いくらなんでも。
ゼウス「まあ、所詮一時の流行、百年後にはどうなってるかわからん。その時にまた見に来ればいいだろう。なにせわしらは永遠なのだからな・・・
アーサー「そうじゃ、円卓の騎士は永遠に不滅じゃ！はっはっは・・・
バルドル「皆さんすいません！こんどはミドガルズオルムが逃げました！そとで地震起こしてます！
テュール「退治役のトールもミョルニルを貸し出してて・・・どうにもならん。
アーサー「だから得物は貸し出すなって言うたはずじゃ！
サー・ガウェイン「あんたもやってるだろ・・・
ハデス「こっちでも・・・犬と狼・・・暴れてるよ・・・
アルテミス「ハデスのおじ様、そういう大事なことはもっと早くおっしゃってください。
ヘルメス「アステカの鳥さんたちも依然ケンカ中だし・・・新入り、あんたもか！
クトゥルー「ワレラ、キュウ、シハイシャ・・・
ニャルラトホテプ「コンラン、ダイスキ・・・
バルドル「わーっ、逃げろーっ！ラグナロクだーっ！
ヘラクレス「もめごとなら任せな！
ミカエル「黙示録の実現です。悔い改めなさい。
アテナ「これにて会議は終了とします！解散！
ヴィシュヌ「あー、面白い暇つぶしだった。
オオクニヌシ「わしらの立場はどうなっているのであるか？
アーサー「アーサー王は永遠に不滅です！
サー・ガウェイン「いいから逃げろって、おっさん。
